すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第五話

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唇が蕩けてなくなってしまうのではないかと言うほど、ふたりは唇を重ね合いキスを味わう。
やっと唇が離れると、一哉の目がもう獣のように臨を見つめる。

「…………一哉、目が、怖い」

恥ずかしがって真っ赤な顔の臨は、まるで危険を察知した仔ウサギのような目で一哉を見る。

「…………だって、臨が挑発するから」

はぁはぁと肩で息をしているように一哉は興奮していた。

「ぼ、僕の、せい?ちょっと待って!挑発なんてッ!」

臨は慌てて後ろに下がる。

「してる。めっちゃしてる」

まるでライオンのような動きで、怯える仔ウサギの臨に一哉は迫っていく。

「待って!無理ッ!今、すぐは無理ッ!ほら、僕たち、汗臭いよ?お風呂入ってないしッ!それに、やり方だってわかってないでしょ!」

身の危険を感じ、スラスラと言葉が湧いてくる臨。

「……………うん」

急に一哉が大人しくなった。
やり方と言われて、流石に冷静になったようだった。

「ごめん。キスがめっちゃ気持ち良かったから。臨とのキスがすげー気持ち良くて、頭が真っ白になった」

恥ずかしがりながら一哉が告白すると、臨はホッとして微笑む。

「僕もだよ。こんなに気持ちの良いキス初めてで……………」

それ以上は、また一哉を刺激しそうで言葉を止めた。

「もっかいして良い?」

ライオンが仔ウサギにおねだりする。

「……………うん。でも、キスで我慢ね」

ちゃんと仔ウサギは釘を刺す。
そうしないと目の前のライオンは、きっと骨までむしゃぶりつきそうだったからだ。

「……………頑張る」

一哉はそう言って臨に再びキスをする。
たださっきと違うのは、手際よく臨のシャツのボタンを外していた。
それに気がついて臨は暴れる。

「ちょッ!…………一哉ッ!」

「触るだけ。上だけ。下は絶対脱がさないから」

そう言って一哉は臨の上半身を裸にしてしまった。

「もう!本当に上を触るだけだからね!」

観念して臨もそれを許してしまった。
ただ触るだけは、指で触るのではなく、一哉の唇と舌で触られる羽目になり、臨の甘い声が一哉の部屋に充満してしまい、一哉と臨はある意味お互い拷問を受けているようだった。
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