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●アンビバレント●
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年老いた老夫婦が、健のいる本社の応接室で静かに健を待っていた。
何件も不動産屋に相談したが、どこでもやはり難色を示され、やっと健が引き受けてくれそうで、藁にもすがる思いで老夫婦は健を待っていた。
「失礼します。お待たせしました」
健が応接室に入ってくると、老夫婦は健に顔を向けた。
その顔は悲壮感が漂い、見ていて痛々しかった。
「私、ノーチェ不動産の楜沢と申します」
健はそれぞれに名刺を渡す。
「それで、売却したい土地と建物の件なんですが」
早速健は本題に入った。
「……お恥ずかしい話なのですが。息子夫婦が住んでいた家なんですが」
躊躇いながら、賢一郎の祖父、飯豊一久は話し始めた。
「孫が両親を、その……殺して、しまって。その、裁判で、孫の有罪が決定しまして」
やはりそうかと、健は近親者から聞けて納得する。
「飯豊さんに、最初に来ていただいた支店から、売却されたい物件が事件現場になった事は伺ってます。飯豊さんご夫妻が、法定相続人という事でよろしいですか?」
飯豊夫妻はコクンと頷いた。
賢一郎の両親が死亡した時刻が、同時死亡の推定、つまりどちらが先に無くなったのかきちんと判断できない場合、妻の桜は相続人ではなくなり、法定相続人は賢一郎だけだったが、賢一郎の有罪が確定した事で、賢一郎は相続欠格となり相続権が無くなり、賢一郎の父、飯豊肇の直系尊属の両親が、法定相続人になったのだった。
「大変失礼なのですが、相続でよろしいんですよね?」
健は資料に目を通し、賢一郎の刑が確定してまだ3ヶ月が経っていない事で、相続する事で飯豊夫妻が不利益になるかもしれない事を気にした。
相続放棄をするには、原則被相続人が亡くなった日を知ってから3ヶ月以内か、自分が相続人だと知ってから3ヶ月以内にしなくてはならない。
何件も不動産屋に相談したが、どこでもやはり難色を示され、やっと健が引き受けてくれそうで、藁にもすがる思いで老夫婦は健を待っていた。
「失礼します。お待たせしました」
健が応接室に入ってくると、老夫婦は健に顔を向けた。
その顔は悲壮感が漂い、見ていて痛々しかった。
「私、ノーチェ不動産の楜沢と申します」
健はそれぞれに名刺を渡す。
「それで、売却したい土地と建物の件なんですが」
早速健は本題に入った。
「……お恥ずかしい話なのですが。息子夫婦が住んでいた家なんですが」
躊躇いながら、賢一郎の祖父、飯豊一久は話し始めた。
「孫が両親を、その……殺して、しまって。その、裁判で、孫の有罪が決定しまして」
やはりそうかと、健は近親者から聞けて納得する。
「飯豊さんに、最初に来ていただいた支店から、売却されたい物件が事件現場になった事は伺ってます。飯豊さんご夫妻が、法定相続人という事でよろしいですか?」
飯豊夫妻はコクンと頷いた。
賢一郎の両親が死亡した時刻が、同時死亡の推定、つまりどちらが先に無くなったのかきちんと判断できない場合、妻の桜は相続人ではなくなり、法定相続人は賢一郎だけだったが、賢一郎の有罪が確定した事で、賢一郎は相続欠格となり相続権が無くなり、賢一郎の父、飯豊肇の直系尊属の両親が、法定相続人になったのだった。
「大変失礼なのですが、相続でよろしいんですよね?」
健は資料に目を通し、賢一郎の刑が確定してまだ3ヶ月が経っていない事で、相続する事で飯豊夫妻が不利益になるかもしれない事を気にした。
相続放棄をするには、原則被相続人が亡くなった日を知ってから3ヶ月以内か、自分が相続人だと知ってから3ヶ月以内にしなくてはならない。
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