インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●アンビバレント●

3-2

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「少年犯罪が多くなっているとは言え、結構厳しい判決が下りたな」

ファイルを閉じて健は頬杖をつく。

「判決理由は、両親には殺害される非は全くなく、少年の一方的な殺意、犯行の残虐性が大きく取り上げられた事だな」

先に殺害されたであろうとされた母親は、背中に数カ所の刺し傷。首にも切り傷が見られ、賢一郎は首を切断しようとしたのではと思われた。
寝室で寝ていた父親に対しては、腹部に数カ所刺し傷があり、死因は両親共に失血死だった。
賢一郎が虐待を受けていた事実は全く見受けられておらず、犯行の動機は賢一郎曰く、両親を殺したかった。幼い頃から憎しみしかなかった。と言う身勝手な理由だった。
聞き込みを行った警察の調書では、近所でも家族との評判も悪くなく、挨拶もきちんと礼儀正しく出来ていた。
高校生活においても、派手な振る舞いや素行に問題はなく、大人しく社交性に多少欠けていたものの、交友関係に問題もなし。
進学校に通い学力は常に上位にいたが、競争心が激しいわけでもなく、ガリ勉タイプでもなかった。
問題が全くなかったことが、逆に問題だったとしても、それはもう賢一郎の心の中の闇を探るしか方法は無い。

「それにしても、よくこの殺害現場の不動産を買い取る事になったな」

いくら仕事とはいえ、殺人事件のあった事故物件では、新たな買い手はなかなか見つからないのではと大知は思った。

「こちらも商売だ。先の見えない物件を、興味本位だけで買い取らないさ。いずれ人の記憶は曖昧になる。それに意外と買い手は居るもんさ。立地が良くて安ければ。それまで駐車場として使っても良い」

幸い、住宅街だが駅も近く、近隣には商業施設もある事からコインパーキングに転用すれば、殺害現場の家を残しておくよりは、近隣住民も心理的に安心する。

「そんなもんなのかね」

健の言葉に大知は半信半疑だった。
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