上 下
59 / 206
●アンビバレント●

4-2

しおりを挟む
健は自分の車に行くとトランクを開けた。
そして段ボール箱に入った、土で汚れたビニール袋の中を蓮司に見せる。
プラスチックの容器の中に、お菓子が入っていたと思われる四角い錆びた缶が二つ。

「これ、俺のだ。俺と賢一郎のだ」

蓮司は目を丸くして驚く。
それぞれの缶の蓋の上に、名前が書いてあるシールが貼っていた。滲んではいたが、辛うじて読むことができた。

「やっぱりお前が呉田蓮司だったのか。家を解体して庭の木や石を退けていたらこれが出てきたそうだ」

まさに今、探していた物だった。
まさか掘り起こされていたとは思わなかった。

「勝手に処分する訳にも行かなくて、お前の物か確認してからと思ってね」

健はプラスチックの容器を開け、蓮司の名前が書いてある錆びた缶の箱を手渡した。

「そっちは賢一郎のだ。賢一郎のおじいさんの家に行ってきた。それは俺が渡すよ」

「賢一郎君の現在は分かったのか?」

蓮司が賢一郎の家に行ったと知り、蓮司が何か話が聞けたのかと健は探ろうとする。

「分かったけど、それ以外には何も。賢一郎は両親と仲が良かった。特に母親とは、まるで恋人同士のようにね」

「恋人同士?何だそれは」

「賢一郎のスマホを見たんだよ。母親の写真が沢山残っていた。ツーショットまであって。賢一郎がマザコンだったとは意外だったよ」

蓮司の言葉に、健はそういう事かと唇を歪めた。

「……それがこれの答えだったのか」

先に賢一郎のタイムカプセルの中を見ていた健は、納得したように缶の蓋を開けた。
その中には、賢一郎の祖父が見つけられなかった写真が、地中で水浸しにならないように入れられた保存袋の中に、ぎっしりと詰まっていた。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

WEAK SELF.

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

魔法少女レルク

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

時ノ糸~絆~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:3

今日も君の心はハカれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

処理中です...