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●目には目を歯には歯を●

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4月に無事に大学1年生となった呉田蓮司は、アルバイト先の書店で本の陳列をしていた。

「蓮司君、バイト終わったら一緒にご飯行かない?」

蓮司は王子様系の容姿で、大学でもバイト先でも女子に人気だった。

「あー、良いですね。みんなで行きますか」

気を持たせないようにやんわりとデートの誘いを断ると、蓮司は再び自分の仕事に集中する。

「あれ?お前」

棚の前に屈んでいた蓮司は声を掛けられ、その声の方に顔を向けた。

「……あんたッ」

蓮司はその声の主、楜沢健の顔に驚く。

「久しぶりだな。1年ぶり位か?」

ニヤニヤしながら健は尋ねる。

「そうだね。ってよく俺のこと覚えてたな」

睨むように蓮司は健を見て笑う。

「記憶力良いしね」

にっこり笑う健に、蓮司はフンと顔を背ける。

「ここでバイト?それとも就職した?」

「バイトだよ!」

ムキになって蓮司は答える。

「じゃあ大学生か?」

蓮司はコクンと頷く。

「それより、あんた、この店テリトリーだったの?」

普段着姿の健に蓮司は尋ねる。

「ああ。直ぐ近所だ」

この店舗は都心の一等地で、タワーマンションが多くセレブな客が多い。
近所に住む健もセレブかと思うと蓮司は面白くない。
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