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残暑を吹き消すように、9月に入ってからも関東甲信越は雨の日が時折続いた。
麗花から東京への引っ越し先の相談の電話があり、健は麗花達の希望地から近い賃貸専門の営業店を紹介した。
『いくつか見せていただいたんですが、どれも彼も気にいるとても素敵な場所だったので、そのうちの1つと早速契約させていただきました』
麗花からお礼の電話をもらい、健も力になれて良かったと思った。
「慣れない東京での生活ですから、この先も何でもご相談くださいね」
『ありがとうございます』
麗花の嬉しそうな弾む声を聞いて、健はあの夜の麗花の事を思い出した。
慣れない土地のストレスで、また情緒不安定にならなければと、それだけが気になった。
「いつ頃お引っ越しの予定ですか?」
『12月から清太さんが新しい会社に勤務する事になるので、11月中には新居に引っ越したいと、担当の方にもお話しさせていただきました』
「そうですか。しばらく忙しくなりそうですね。お体に気をつけてくださいね」
『ありがとうございます』
電話を切って健はスマホを見つめ、指を滑らせてある人物の電話番号を出した。
その相手は、蓮司の親友の飯豊賢一郎の事件の時に知り合った、精神科医の高槻広務だった。
時刻は夜の9時過ぎだったが、ダメ元で電話をかけてみる。
『はい、高槻です。楜沢さん、お久しぶりですね』
健の電話番号を登録していたので、高槻は健のことを忘れていなかった。
「お久しぶりです。お出になってくれて良かったです」
『あはは。あなたの事はいろんな意味で忘れられませんよ』
「それは良い意味で受け止めておきます」
健も笑って返した。
だが突然の電話に、高槻は何か厄介事かと考え込む。
『また、何か事件でも?』
事件が無ければ、電話を掛けてこないと思われたかと健は髪を掻いた。
「あ、いえ。そういう訳では。実は、私の知人で夢遊病の方がいらっしゃって。近々東京へ越してくるのですが、新しい地が余計にストレスになるのではないかとそれがちょっと私も引っかかりまして」
健の話に高槻は考え込む。
『もしお時間があれば会って詳しくお話を伺いましょう。楜沢さんが連絡をくれると言うのは、よほどの事でしょうから』
「ありがとうございます。では、明後日の夜はいかがですか?」
高槻は大判のシステム手帳を開いた。
『明後日ですね。大丈夫ですよ』
「では、7時ぐらいに」
待ち合わせ場所を決めると健と高槻は、互いに電話を切った。
麗花から東京への引っ越し先の相談の電話があり、健は麗花達の希望地から近い賃貸専門の営業店を紹介した。
『いくつか見せていただいたんですが、どれも彼も気にいるとても素敵な場所だったので、そのうちの1つと早速契約させていただきました』
麗花からお礼の電話をもらい、健も力になれて良かったと思った。
「慣れない東京での生活ですから、この先も何でもご相談くださいね」
『ありがとうございます』
麗花の嬉しそうな弾む声を聞いて、健はあの夜の麗花の事を思い出した。
慣れない土地のストレスで、また情緒不安定にならなければと、それだけが気になった。
「いつ頃お引っ越しの予定ですか?」
『12月から清太さんが新しい会社に勤務する事になるので、11月中には新居に引っ越したいと、担当の方にもお話しさせていただきました』
「そうですか。しばらく忙しくなりそうですね。お体に気をつけてくださいね」
『ありがとうございます』
電話を切って健はスマホを見つめ、指を滑らせてある人物の電話番号を出した。
その相手は、蓮司の親友の飯豊賢一郎の事件の時に知り合った、精神科医の高槻広務だった。
時刻は夜の9時過ぎだったが、ダメ元で電話をかけてみる。
『はい、高槻です。楜沢さん、お久しぶりですね』
健の電話番号を登録していたので、高槻は健のことを忘れていなかった。
「お久しぶりです。お出になってくれて良かったです」
『あはは。あなたの事はいろんな意味で忘れられませんよ』
「それは良い意味で受け止めておきます」
健も笑って返した。
だが突然の電話に、高槻は何か厄介事かと考え込む。
『また、何か事件でも?』
事件が無ければ、電話を掛けてこないと思われたかと健は髪を掻いた。
「あ、いえ。そういう訳では。実は、私の知人で夢遊病の方がいらっしゃって。近々東京へ越してくるのですが、新しい地が余計にストレスになるのではないかとそれがちょっと私も引っかかりまして」
健の話に高槻は考え込む。
『もしお時間があれば会って詳しくお話を伺いましょう。楜沢さんが連絡をくれると言うのは、よほどの事でしょうから』
「ありがとうございます。では、明後日の夜はいかがですか?」
高槻は大判のシステム手帳を開いた。
『明後日ですね。大丈夫ですよ』
「では、7時ぐらいに」
待ち合わせ場所を決めると健と高槻は、互いに電話を切った。
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