インシデント~楜沢健の非日常〜

五嶋樒榴

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●愛したのが始まり●

3-5

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糸坂家を出て、真冬の街中を歩いていると健のスマホが鳴り、健はスマホを耳に当てた。

「もしもし」

『準備はどうだ?』

電話の相手は父親の楜沢葵だった。

「ええ、下準備はできてますよ。あとは、なるようにしかなりませんね」

健は、スーツの内ポケットからタバコを出すと口に咥えた。
タバコに火をつけると深く吸う。

『あはは。ま、そりゃそうだ。今夜会うんだろ?』

「はい。今夜きっちり決着を付けますから。楽しみにしててください」

フフフと健は楽しそうに笑う。

『こっちもそのつもりで動いてる。お前ならなんの心配もないがね。ただマドカがうるさくてかなわねーよ』

マドカは葵の妹、楜沢百合くるみざわゆりの娘で、葵の姪にあたる。
百合はハイブランドのデザイナーでパリに拠点を置き、マドカは日本に残って全寮制の女子校を卒業後、大学生になった現在は葵と健と一緒に住んでいた。

「心配するなと言っておいてください」

『それで納得するなら楽なもんだ!大体俺は、姪っ子に泣かれるのが1番弱いんだぞー!』

葵にとって可愛い姪は、我が子のように目に入れても痛くない存在だった。

「はいはい。じゃあそろそろ時間なんでいってきまーす」

能天気な息子の声に葵は笑う。
健は電話を切ると、吸い殻を携帯灰皿に入れ顔を引き締めた。
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