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●愛したのが始まり●

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大知は健と別れ自宅へと戻ると、仕事に使っているパソコンデスクの上のファイルの山を見つめる。
そこには、水島弥之と水島雛絵の、それぞれの出生から死亡まで繋がった戸籍謄本類と戸籍の附票、大知が独自に集めた、それぞれの幼稚園から大学までの卒業アルバムもあった。
大学卒業後に健から依頼を受け、雛絵の事を少しずつ調べてはいたが、弥之の殺害の調査の間はしばらく触れていなかった。

「……父親候補は誰なんだ。雛絵さん。あなたが産んだ息子は、一体誰が父親なんですか?」

21年前の雛絵の写真を見つめながら、大知は深いため息をついた。
ファイルの山の中から1冊のファイルを取り出す。
水島惟晴みずしまこれはると書いているインデックスのページを開くと、ルーズリーフには[水島弥之の従兄弟。父の弟の長男。惟晴が中学3年生の時に、大学4年生の水島(旧姓、河口)雛絵が家庭教師をしていた。]と書き記されている。
開いた中には、大人の色気を感じる美男子の写真が入っていて、その顔は余りにも健に似ていた。
血縁関係があるなら似ても当然のことだが、弥之と健に血の繋がりがないとなると、健が惟晴に似るのは不自然だった。もし似る要素があるならば、その理由は1つしかない。
惟晴のページには赤文字で、父親候補。とも書いてある。
だが、この事はまだ健には報告していない。
調査段階で、悪戯に健を悩ませたり苦しませたりしたくないからだ。
この時に、雛絵が弥之と交際していた事実はもう調べ上げて判明している。おそらくそれが縁で、惟晴の家庭教師をしていたのだろうと大知は睨んでいる。
惟晴の血液型はまだ不明。しかし、惟晴がO型若しくはBo型、Ao型であれば、十分に健が産まれる。

「先ずは、ここから徹底的に調べるか」

大知はファイルを閉じると、シャワーを浴びるためにシャツを脱ぎ捨てた。
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