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wine
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「お前の母さんに、好きって言ったら、お前は俺を嫌いになるか?」
寝顔も美少年だなと思いながら、眠っている望亜に囁いた。
寝室のドアを閉め、颯人は畳の横の、リビング部分のソファに腰掛けると、小さな音でテレビを見始めた。しばらくすると、唯香が濡れた髪にバスタオルをかけ、やはり浴衣姿で颯人の前に現れた。
その姿に颯人はときめいた。色っぽさについ生唾を飲んでしまった。
唯香は目鼻立ちがはっきりしている美女なので、すっぴんでもほとんど変わらず綺麗だった。
再びビールを2人は飲み始めたが、何を話して良いのか分からず沈黙してしまった。
「………あのさ、初めて会ったあのスーパー。あれからあの時しか会えなかったね」
急に思い出したように、溜めて溜めて颯人は話しかけた。静かな声だった。
「あの日は父の誕生日が近かったから、たまには良い食材で料理作って、お祝いしたかったから。とても普段使いの出来るスーパーじゃないもの」
唯香は好んで高級品を求める女性ではなかった。質素な生活だがいつも何にでもセンスが良く、望亜にしてもみすぼらしい所はどこにもなかった。そんな所も颯人は唯香が大好きな所だった。
「もうさ、俺たちも子供じゃないから、唯香も気づいてるだろ、俺の気持ち」
唯香は、とうとう来た、という顔で、颯人を見て頷いた。
「俺はお前が好きだ。初めてあのスーパーであった時から。一目惚れだったんだと思う」
淡々と颯人は話す。
「望亜もいるのに、お前に俺の気持ち押し付けて、困らせたくなくて、言い出せなかったけど、今日朝から望亜と過ごして、今こうして3人で夜まで過ごして、やっぱこれ以上我慢できなくなったって言うか………」
途切れ途切れ、颯人は言葉を紡ぐ。黙って唯香は聞いていた。
「いきなり進めようとか、思っては無いから。ただ、俺のこと好きなら、友達じゃなく、ちゃんと付き合ってほしい」
颯人が黙ると、今度は唯香が口を開いた。
「私も正直に言うわ。颯人くんが好きよ。じゃなきゃ、こんなに何度も会わないわ。初めてあった時、望亜をトイレに連れて行ってくれた時、こんな親切な人いるんだ。人は見かけじゃ無いって思った」
唯香の告白に颯人は笑った。
「駅で望亜が痴漢に間違われた時も、私引っ叩いてしまったのに、あなたは寄り添ってくれた。正直年下で、ホストクラブのオーナーと聞いた時は、住む世界が違うから、友達になっても続かないって思った。でも、今日までずっと、望亜や私のそばに居てくれた」
「じゃあ、俺たち」
颯人が唯香の両腕を、大きな手で捕まえた。
「でも、怖いのもあるの。だんだん私や望亜をいつか嫌いになっていくんじゃ無いかって!颯人くん、きっと今もモテてるでしょ?年上の子持ちの私なんて、いつか嫌になる。前の夫みたいに、いつか他の女性に行ってしまうって思ったら、今のまま友達の方がいいって」
最後まで言う前に、颯人は唯香の唇を唇で塞いだ。その間、マスターが話していた、いつかのライオンの話が頭に浮かんだ。
「………勝手なこと言うな。前の旦那と俺を一緒にすんなよ!俺だって怖いんだよ!唯香の1番は望亜だから、他人の俺が入り込む余地ないの分かってんだよ。でも俺は唯香とは恋人に、望亜とは今は友達のままでもいいからそばにいたいんだ。2人を助けられる存在になりたいんだ」
覚悟を決めた大きな力強い腕に抱きしめられ、唯香は心が暖かくなっていた。
「でも、望亜は普通の子と違う。もっと体が大きくなったら、たとえ颯人くんが大きくても押さえられない。望亜が本気で暴れたら、今だって先生達が押さえるの大変なのよ」
唯香の言葉に颯人は首を振った。
「障害児も健常児も同じなんだろ。ダメな時は、ちゃんと俺も教える。俺、ホストクラブのオーナーなんだぜ。やんちゃな男の扱いなんて慣れたもんさ」
唯香は駅での出来事での、自分が言った言葉を颯人がちゃんと覚えていてくれた事に涙が出てきた。
「俺、唯香と知り合ってから、色々気づいた。本当に好きになると怖いんだって。離れて行ったらどうしようって。望亜に好かれたい。嫌われたくないって、すげー必死になっちゃって。唯香だけじゃなく、望亜がいるから唯香が好きなんだよ。2人を守りたいって思っちゃうんだよ。俺の事よく知ってる奴らは、こんな俺を見たらきっと驚いて笑うよな」
唯香を愛し始めてから颯人の生活が一変して、店のホスト達は、颯人が女を一切近付けず抱かなくなったことを心配していたほどだった。
しかし当の颯人は、そんな刹那的な生活より、唯香と望亜との安らぎの生活を渇望していたのだ。
愛おしそうに唯香の頭を撫でながら、抱きしめる力も優しく変わっていた。
もう一度今度は優しく唇を重ねると、まるで少年のように照れながら颯人は言う。
「もっと望亜が俺に慣れるように週末は必ず俺のマンションで過ごそう。もう決まりだからな」
一方的に颯人は決めてしまったが、唯香は反論しなかった。
今はこの腕を振りほどきたくなかった。
寝顔も美少年だなと思いながら、眠っている望亜に囁いた。
寝室のドアを閉め、颯人は畳の横の、リビング部分のソファに腰掛けると、小さな音でテレビを見始めた。しばらくすると、唯香が濡れた髪にバスタオルをかけ、やはり浴衣姿で颯人の前に現れた。
その姿に颯人はときめいた。色っぽさについ生唾を飲んでしまった。
唯香は目鼻立ちがはっきりしている美女なので、すっぴんでもほとんど変わらず綺麗だった。
再びビールを2人は飲み始めたが、何を話して良いのか分からず沈黙してしまった。
「………あのさ、初めて会ったあのスーパー。あれからあの時しか会えなかったね」
急に思い出したように、溜めて溜めて颯人は話しかけた。静かな声だった。
「あの日は父の誕生日が近かったから、たまには良い食材で料理作って、お祝いしたかったから。とても普段使いの出来るスーパーじゃないもの」
唯香は好んで高級品を求める女性ではなかった。質素な生活だがいつも何にでもセンスが良く、望亜にしてもみすぼらしい所はどこにもなかった。そんな所も颯人は唯香が大好きな所だった。
「もうさ、俺たちも子供じゃないから、唯香も気づいてるだろ、俺の気持ち」
唯香は、とうとう来た、という顔で、颯人を見て頷いた。
「俺はお前が好きだ。初めてあのスーパーであった時から。一目惚れだったんだと思う」
淡々と颯人は話す。
「望亜もいるのに、お前に俺の気持ち押し付けて、困らせたくなくて、言い出せなかったけど、今日朝から望亜と過ごして、今こうして3人で夜まで過ごして、やっぱこれ以上我慢できなくなったって言うか………」
途切れ途切れ、颯人は言葉を紡ぐ。黙って唯香は聞いていた。
「いきなり進めようとか、思っては無いから。ただ、俺のこと好きなら、友達じゃなく、ちゃんと付き合ってほしい」
颯人が黙ると、今度は唯香が口を開いた。
「私も正直に言うわ。颯人くんが好きよ。じゃなきゃ、こんなに何度も会わないわ。初めてあった時、望亜をトイレに連れて行ってくれた時、こんな親切な人いるんだ。人は見かけじゃ無いって思った」
唯香の告白に颯人は笑った。
「駅で望亜が痴漢に間違われた時も、私引っ叩いてしまったのに、あなたは寄り添ってくれた。正直年下で、ホストクラブのオーナーと聞いた時は、住む世界が違うから、友達になっても続かないって思った。でも、今日までずっと、望亜や私のそばに居てくれた」
「じゃあ、俺たち」
颯人が唯香の両腕を、大きな手で捕まえた。
「でも、怖いのもあるの。だんだん私や望亜をいつか嫌いになっていくんじゃ無いかって!颯人くん、きっと今もモテてるでしょ?年上の子持ちの私なんて、いつか嫌になる。前の夫みたいに、いつか他の女性に行ってしまうって思ったら、今のまま友達の方がいいって」
最後まで言う前に、颯人は唯香の唇を唇で塞いだ。その間、マスターが話していた、いつかのライオンの話が頭に浮かんだ。
「………勝手なこと言うな。前の旦那と俺を一緒にすんなよ!俺だって怖いんだよ!唯香の1番は望亜だから、他人の俺が入り込む余地ないの分かってんだよ。でも俺は唯香とは恋人に、望亜とは今は友達のままでもいいからそばにいたいんだ。2人を助けられる存在になりたいんだ」
覚悟を決めた大きな力強い腕に抱きしめられ、唯香は心が暖かくなっていた。
「でも、望亜は普通の子と違う。もっと体が大きくなったら、たとえ颯人くんが大きくても押さえられない。望亜が本気で暴れたら、今だって先生達が押さえるの大変なのよ」
唯香の言葉に颯人は首を振った。
「障害児も健常児も同じなんだろ。ダメな時は、ちゃんと俺も教える。俺、ホストクラブのオーナーなんだぜ。やんちゃな男の扱いなんて慣れたもんさ」
唯香は駅での出来事での、自分が言った言葉を颯人がちゃんと覚えていてくれた事に涙が出てきた。
「俺、唯香と知り合ってから、色々気づいた。本当に好きになると怖いんだって。離れて行ったらどうしようって。望亜に好かれたい。嫌われたくないって、すげー必死になっちゃって。唯香だけじゃなく、望亜がいるから唯香が好きなんだよ。2人を守りたいって思っちゃうんだよ。俺の事よく知ってる奴らは、こんな俺を見たらきっと驚いて笑うよな」
唯香を愛し始めてから颯人の生活が一変して、店のホスト達は、颯人が女を一切近付けず抱かなくなったことを心配していたほどだった。
しかし当の颯人は、そんな刹那的な生活より、唯香と望亜との安らぎの生活を渇望していたのだ。
愛おしそうに唯香の頭を撫でながら、抱きしめる力も優しく変わっていた。
もう一度今度は優しく唇を重ねると、まるで少年のように照れながら颯人は言う。
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