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第一章──冒険者登録が無双の門出
成り上がり計画始動っ!
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「お母さん!! えっと……い、いつも、あ、ありがとう……」
何となく、言っておかないといけない気がした。
こんな事をいきなり言うのは恥ずかしいし変だけれど、言っておかないと後悔する気がした。
きっと笑われるだろう。
でも、それでもいいと思えるほどに必死で本気だった。
返事を、返事を待っている間に視界は真っ白に塗りつぶされて───。
「シエラっち!!!」
「……ッ!! ……夢、か」
「シエラっち……シエラっちいいい!!」
名前を連呼して飛び込んでくるムルに、ああそうかと思う。
自分は蛇に襲われて気絶していたのだ。
辺りを見渡せばそこはまだモンスターハウスとかいう部屋の中。
「(シエラ、あれからどれくらい経った?)」
『ほんの五分くらいだよ。……死ぬかと思った、間一髪だったね』
たった五分なら問題はなさそうだ。
テルは安堵して、先の戦いを振り返る。
「(あぁ……あいつが毒を使うやつで助かった。おかげで『流れ』とやらをようやくつかめた)」
シエラが口酸っぱく言っていた『流れ』。
体の心の、さらに奥深くで循環しているそれを……テルは蝕まれることで理解した。
むしろ、そうしなければそれがあることを認知することすら不可能だったろうと思う。
『うん、想像していたとはいえ凄かったよ……あのエンヴィーターを五匹丸ごとやっちゃうなんて! ほん、ほんっとうにもうダメかと思ったんだから……』
蛇の名前はエンヴィーターと言うらしい。
とんでもない魔物だった。今頃死んでいたかもしれないと、噛み付かれた首筋をなぞる。
「傷……治ってんな」
「回復魔法。使えるから」
「そっか……そういやそうだったな、ありがとうレンリィ」
『すごい手際だったよ。殆ど完治だから医者に行く必要もないと思う』
「いや、守れなかった。ごめん」
「シエラちゃん、ほんとに、ほんとにすまねぇ……俺が不甲斐ないばっかりに、二度も危険に晒した……ッ!!」
「いや、俺の不注意だし……済んだことなんだから謝らないでくれよ、二人共」
ダゴマがいなかったら今頃のたれ死んでいただろうし、レンリィがいなかったらあの傷が治ることはなかった。
二人共、明らかに自分を責めすぎている。
「だが……っ!!」
「ハイハイとりあえず帰るアルよ、こんな所にずっといたらまた危ないアル」
「あ、あぁ……」
パンパンと手を叩いて二人を制止した後、ムルはリュックからゴソゴソと何かを取り出すと、こちらにひょいと投げた。
水色の結晶のようなものだ。
「……何これ」
「転移結晶アルネ。これがあれば迷宮の入口までひとっ飛びアル……でも近くに魔物がいると、魔力波が阻害されて起動しないアル」
「随分と便利なものがあるんだな……と、そういやさっきの人は?」
「気を失ってるだけアルよ、うちが運ぶアル」
「そうか、よかった……」
『あれのこと気にするなんて、随分お人好しなんだね』
「(そんなんじゃねーよ、ただ……)」
『ただ?』
「(あいつも俺と同じで、キッカケがありゃ変われるかなって)」
きょとんとするシエラをよそに結晶に魔力を流し込むと、先の転移と同じ光がテルを包んだ。
■ ■ ■
『さーテル、よーぉやく魔法も使えるようになったことだし、成り上がり計画についてばちこり話し合っちゃおうか!』
「おう! ようやくか、テンション上がってきたな……っ」
『うん! で、まずなんだけど、私たちが最終的に目指すのは『国家公認魔導士資格』を取る事。それがあれば極秘の研究や資料が閲覧出来て、テルと私の体を引き剥がすことも出来るかもしれないの』
「あぁ、そういやそんなこと言ってたな。そんで? 具体的にはこっからどうすんだ?」
『そうだね、とりあえず英級まで冒険者ランクを上げないとダメかな。そうじゃないと魔法学院に行くだけのお金と時間を稼げないから』
「うげ、英級……結構遠いな。えと、金は分かるけど時間ってのは?」
『英級冒険者はこれまでの実績に応じてノルマを無視できるから』
「あぁ、それで空いた時間を利用して……ってことか。考えられてるな」
『そそ。だから魔法学院に通ってるのは余程のお貴族様か英級冒険者以上しかいないんだよ』
「そうなのか……んじゃ次な、そもそも冒険者ランクってどうやって上げるんだ?」
『ちょうど明日給料日だよね? その時に更新が入るんだよ……えと、腕輪出して』
「あぁ」
言われるがまま出した腕輪には、『3870』と表記されている。
『うん、あの蛇たくさん倒したもんね……これならとりあえず勇級には上がるはずだよ』
「マジで……? そんな簡単でいいのか」
『簡単……? あの蛇の強さ実感したでしょ、普通死ぬんだよ?』
「ん、んん、それもそうか……で、英級になるのって具体的にはどれくらいこのポイント稼げばいいんだ?」
『聞いたところによると、大体十万くらいだって。勿論更新跨いじゃダメだから、かなり急がないとね……』
「じゅうま……? え、あの蛇一匹でいくつだっけか?」
『ん、774だね』
「……で、十万ってあの蛇何匹分だ?」
だいたい予測は出来ているが、確認する。
聞く前からテルの頬は既に引きつっていた。
『んーと、百三十体くらい?』
テルが殺されかけたあの蛇を、百三十体。
とんでもない数字に思わず頭を抱えた。
『まぁでも魔法大分使えるようになったんでしょ? 近いうちにいけるはずだよ、みっちりやればね』
「スパルタだなチキショー!!」
暫くはゆっくり寝られそうにない。
テルは今のうちに布団の温もりを楽しもうと、勢いよくダイブした。
何となく、言っておかないといけない気がした。
こんな事をいきなり言うのは恥ずかしいし変だけれど、言っておかないと後悔する気がした。
きっと笑われるだろう。
でも、それでもいいと思えるほどに必死で本気だった。
返事を、返事を待っている間に視界は真っ白に塗りつぶされて───。
「シエラっち!!!」
「……ッ!! ……夢、か」
「シエラっち……シエラっちいいい!!」
名前を連呼して飛び込んでくるムルに、ああそうかと思う。
自分は蛇に襲われて気絶していたのだ。
辺りを見渡せばそこはまだモンスターハウスとかいう部屋の中。
「(シエラ、あれからどれくらい経った?)」
『ほんの五分くらいだよ。……死ぬかと思った、間一髪だったね』
たった五分なら問題はなさそうだ。
テルは安堵して、先の戦いを振り返る。
「(あぁ……あいつが毒を使うやつで助かった。おかげで『流れ』とやらをようやくつかめた)」
シエラが口酸っぱく言っていた『流れ』。
体の心の、さらに奥深くで循環しているそれを……テルは蝕まれることで理解した。
むしろ、そうしなければそれがあることを認知することすら不可能だったろうと思う。
『うん、想像していたとはいえ凄かったよ……あのエンヴィーターを五匹丸ごとやっちゃうなんて! ほん、ほんっとうにもうダメかと思ったんだから……』
蛇の名前はエンヴィーターと言うらしい。
とんでもない魔物だった。今頃死んでいたかもしれないと、噛み付かれた首筋をなぞる。
「傷……治ってんな」
「回復魔法。使えるから」
「そっか……そういやそうだったな、ありがとうレンリィ」
『すごい手際だったよ。殆ど完治だから医者に行く必要もないと思う』
「いや、守れなかった。ごめん」
「シエラちゃん、ほんとに、ほんとにすまねぇ……俺が不甲斐ないばっかりに、二度も危険に晒した……ッ!!」
「いや、俺の不注意だし……済んだことなんだから謝らないでくれよ、二人共」
ダゴマがいなかったら今頃のたれ死んでいただろうし、レンリィがいなかったらあの傷が治ることはなかった。
二人共、明らかに自分を責めすぎている。
「だが……っ!!」
「ハイハイとりあえず帰るアルよ、こんな所にずっといたらまた危ないアル」
「あ、あぁ……」
パンパンと手を叩いて二人を制止した後、ムルはリュックからゴソゴソと何かを取り出すと、こちらにひょいと投げた。
水色の結晶のようなものだ。
「……何これ」
「転移結晶アルネ。これがあれば迷宮の入口までひとっ飛びアル……でも近くに魔物がいると、魔力波が阻害されて起動しないアル」
「随分と便利なものがあるんだな……と、そういやさっきの人は?」
「気を失ってるだけアルよ、うちが運ぶアル」
「そうか、よかった……」
『あれのこと気にするなんて、随分お人好しなんだね』
「(そんなんじゃねーよ、ただ……)」
『ただ?』
「(あいつも俺と同じで、キッカケがありゃ変われるかなって)」
きょとんとするシエラをよそに結晶に魔力を流し込むと、先の転移と同じ光がテルを包んだ。
■ ■ ■
『さーテル、よーぉやく魔法も使えるようになったことだし、成り上がり計画についてばちこり話し合っちゃおうか!』
「おう! ようやくか、テンション上がってきたな……っ」
『うん! で、まずなんだけど、私たちが最終的に目指すのは『国家公認魔導士資格』を取る事。それがあれば極秘の研究や資料が閲覧出来て、テルと私の体を引き剥がすことも出来るかもしれないの』
「あぁ、そういやそんなこと言ってたな。そんで? 具体的にはこっからどうすんだ?」
『そうだね、とりあえず英級まで冒険者ランクを上げないとダメかな。そうじゃないと魔法学院に行くだけのお金と時間を稼げないから』
「うげ、英級……結構遠いな。えと、金は分かるけど時間ってのは?」
『英級冒険者はこれまでの実績に応じてノルマを無視できるから』
「あぁ、それで空いた時間を利用して……ってことか。考えられてるな」
『そそ。だから魔法学院に通ってるのは余程のお貴族様か英級冒険者以上しかいないんだよ』
「そうなのか……んじゃ次な、そもそも冒険者ランクってどうやって上げるんだ?」
『ちょうど明日給料日だよね? その時に更新が入るんだよ……えと、腕輪出して』
「あぁ」
言われるがまま出した腕輪には、『3870』と表記されている。
『うん、あの蛇たくさん倒したもんね……これならとりあえず勇級には上がるはずだよ』
「マジで……? そんな簡単でいいのか」
『簡単……? あの蛇の強さ実感したでしょ、普通死ぬんだよ?』
「ん、んん、それもそうか……で、英級になるのって具体的にはどれくらいこのポイント稼げばいいんだ?」
『聞いたところによると、大体十万くらいだって。勿論更新跨いじゃダメだから、かなり急がないとね……』
「じゅうま……? え、あの蛇一匹でいくつだっけか?」
『ん、774だね』
「……で、十万ってあの蛇何匹分だ?」
だいたい予測は出来ているが、確認する。
聞く前からテルの頬は既に引きつっていた。
『んーと、百三十体くらい?』
テルが殺されかけたあの蛇を、百三十体。
とんでもない数字に思わず頭を抱えた。
『まぁでも魔法大分使えるようになったんでしょ? 近いうちにいけるはずだよ、みっちりやればね』
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