2人ではじめる異世界無双~無限の魔力と最強知識のコンビは異世界をマッハで成り上がります〜

こんぺいとー

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第二章──勝ち取れ栄光、英級昇格争奪戦

全員ライバル

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「シエラ様、これをヴェイン様から渡すようにと」

「ヴェイン……? あ、あぁあの時の……」

確か、テルを小突いたりトラップを踏んだりとやたらめったら戦犯をしていた奴だ。
それがいきなりどういう風の吹き回しだろうか、手紙など寄越すとは。

「まぁ別に拒否する理由もないし受け取っとくか……ありがとうシズルさん」

「いえ、仕事ですから」

テルにシズルと呼ばれた彼女はギルド専属の受付係のまとめ役だ。
キラリと知性的に光るメガネが示すとおり、かなり有能なエリート。
テル達冒険者の事情を隅から隅まで知っていて、トラブルなどの解決に彼女が活躍することは少なくないらしい。

「と、中身は───」

魔法印でされた封を乱雑に引きちぎって中身を取り出すと、あの態度からは想像もつかない、几帳面な字が綴られていた。

「……部屋で読むか」

なんとなく、そうするべきだと思った。



─────俺のせいで君たちの命を危険に晒した。
まずは、それを謝罪したい。
君の名誉を傷つけるような失言をしたことについても、同様にだ。

そして、ありがとう。
…………あの時、君が俺を守ってくれた。
助からない、みんな死ぬ。
そう思っていた絶望の淵に、君たちが光を見せてくれた。

君たちが救ってくれたこの命、無下には出来ない。
俺は生き方を少し、見つめ直してみようと思う──────。

「な、言っただろシエラ」

『……うん』

「人って、変われるよ」

こころなしか、温かい。
穏やかなぬくもりに吸い込まれるように、目を瞑った。



■ ■ ■

「シエラっちが英級冒険者を目指すゥ!? 本気で言ってるアルか!?」

「あぁ。こんだけの魔法が使えるようになったんだ、目指さなきゃ損だろ損」

「……それはまた、奇遇だな。実は俺達も心機一転、英級を目指すことにしたんだ」

それは初耳だ。

「この前まで勇級で充分、生活できない人も世にはいるのに過剰な報酬をこの身一つで受けるのは気が引ける───とか言ってたアル。……シエラっちが原因アルね」

「え、俺?」

テルが自分を指さしつつきょとんとすると、ダゴマは咳払いして言う。

「不甲斐ない自分を根性から叩き直すためだ。理想だけご立派な木偶の坊にゃなりたくねぇ」

「……気にしすぎ。でも、付き合う」

「そっ、か……」

ダゴマは善人だが、こうと決めたらテコでも動かない。それはまだ付き合いの浅いテルもよく知っていた。

『……まずいなぁ、英級って1ヶ月になれる人数決まってるんだよね……全員目指すとなるとかなりボーダーキツイよ』

引きつった顔でそう告げるシエラ。

「(え、全員ライバルってことか……?)」

『そ。テルも強くなったのはみんな知ってるし、パーティ一時解散でソロかなぁこれは……』

「シエラちゃんも目指すってんなら話は早い。一ヶ月の間俺たちはライバルだ。……だが、何か不安なことがあったり面倒事が起きたりしたら必ず言えよ。ただ個人の貢献度を効率よく稼ぐために解散するだけで、俺たちはずっとパーティメンバーだ」

「……あぁ、分かってるよ。次組む時はうんと強くなって驚かせてやるからな!」

シエラの答え合わせをするようにそう告げるダゴマだが、シエラがいくら強くなったとはいえ、精神面での心配は消えないのだろう。

ダゴマからの子供扱いは不思議と嫌ではないが、しかしいつまでも頼っているわけには行かない。
自立するいい機会だろうと思う。

「シエラちゃん……本当に一人で大丈夫……だよな、あぁ、分かってる……分かってるんだが……」

「未練タラタラアル」

ため息を零すようなムルの呟きは、幸いなことに悩める本人に届くことはなかった。

「んじゃあな!」

テルと手を振って別れ、そして見えなくなってからムルがぽつりと呟く。

「全部詭弁アルよねゴマ野郎。……シエラっちを英級にするわけにはいかないアルから」

ダゴマも、そしてレンリィも。
全員がそれを首肯した。



■ ■ ■

テルはダゴマ達と別れて即、迷宮へと潜っていた。

『南西二十メトリ、来るよー! ……ええと、【ダークスコーピオン】、貢献値31!』

「オッケー」

銃の形を模したあのポーズ。人差し指からバーン、と魔力を後方に撃ち出す。

魔力自体での攻撃というのはあまり有効ではないが、浅い層の魔物ならば何ら問題は無い。
撃ち出した魔力は魔物の眉間へと鋭く吸い込まれていき、その命を奪う。

「ほんと助かるよシエラ、後ろなんてどうやったって見えないからな」

腕時計のカウントが、きっかし31増えるのを確認してから歩き出す。

『外の魔力が感知できるようになれば全然見えるんだけど。まぁ魔力のない世界から来たテルには難しいよね』

「自分の中の魔力の流れでさえ全然だったからな」

逆に言えば、何かしらの認識するきっかけさえあればテルでも魔力感知はできるということだ。

『何かいい方法ないかなぁ……あ、南南東五十八メトリ、また『ダークスコーピオン』』

「あいあい」

アルトリア大迷宮第七層、ここまでは楽勝だった。この調子でどこまで行けるか、テルは内心かなりウキウキしていた。




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