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第二章──勝ち取れ栄光、英級昇格争奪戦
エリート新参、フリード登場
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冒険者ギルドの一角で、膝を組んで座る高貴な男が一人。
優美な動作で茶を飲み、息をついてから聞き返す。
「『嵐』、ですか?」
「そ。最近名を上げてる新人っす。なんでもとんでもない魔法であっという間に四十層のゲートモンスターを倒しちまったらしーっすよ」
「ほう、それは素晴らしいことですね」
「その感じはしっかり聞いてないっすよねー? まぁ本番はここからなんすけど、どうもその『嵐』、ソロ専みたいなんす。……勇級で新人でソロ専、まぁそういうことっすよ」
そこで、ようやく男は眉根を寄せた。
自分と同じ、新人かつ英級志願者のエリートであることが分かったからだ。
「ほう、私と同じ。……ふむ、そうですか、それは少し興味が出てきましたね」
「そうやって悠長にやってるのを見ると、スーはとてつもなく心配っす」
「私を誰だと思っているのですか、今月英級の座を独占するのは私フリード・アドバンと、【賢盟戦線】ですよ」
勇級冒険者フリード・アドバンは、そう優雅に、あるいはキザに宣言するのだった。
■ ■ ■
「はちまんきゅーせんごひゃくじゅうっ!!」
……腹筋の回数ではない。筋トレなどそもそもしていないが。
『うん、これで貢献値『89500』突破! 明日分までのボーダーは達成だね。お疲れ様』
「おう、まあしっかしここまで来ると迷宮の雰囲気もなんというか、物々しいな」
見た目はそこまで上と変わっていないが、こころなしかそんな気がした。
『そりゃ魔力密度がとんでもないからだよ。それに……この感じは、もうすぐゲートモンスターが復活するんじゃないかな』
「ゲートモンスターが? そりゃ黙ってられないな! 八十層のゲートモンスターってなると、どんだけ貢献値貰えるんだそれ」
『軽く一万だね。倒せれば英級間違いなし、逆に取られたら……』
全部水の泡、とばかりに手をパーにするシエラにテルは絶句する。
「おいおい洒落になってねーぞ……まぁ俺がやっつけちまえばいい話だけどさ」
『ふーん、だいぶ自信ついてきたんじゃない?』
まぁな、とテルは笑って答え、横から這いずってきた魔物を一薙ぎに焼く。
自分も大分力がついてきたものだ。
───突如。
パチ、パチ、パチ、と聞こえてくる拍手の方向を見やると、一人の男性が瓦礫に腰掛けていた。
「いやはやお見事。……貴女が『嵐』殿ですね?」
「(あら、し……?)」
『最近テルその名前で呼ばれてるみたいだよ。調子乗ると思ったから言わなかったけど』
おお、ついに自分にも二つ名が──! と、テルは歓喜。
「(嵐、嵐かぁ。シンプルでカッコイイ、いいセンスしてるぜ……)」
シエラの想像通り、かなり舞い上がっている。
シエラは思わずため息が出た。
それにハッとしたテルはごほんと咳払いをひとつ。男に向き直った。
「あぁ、えっと、そう呼ばれてるみたい、だな……? で、どちら様?」
「私はフリード・アドバン。貴女と同じ新米勇級冒険者です……にしても驚いた。私と同じくして上がってきたという新星が、まさかこんな華麗なお嬢さんだとは」
いちいち仕草が様になる男だ。
女ならばメロメロになる所なのだろうが、男のテルには逆効果でなんとなく腹が立った。
「中身は華麗じゃねーよ、悪ぃな。つか、同じってことは……」
「えぇ、私も英級を目指しております。どちらが英級に先に上がるか……切磋琢磨し、高め合いたいと思っております」
──うへぇ、胡散臭い。
それがテルの率直な感想であったが、しっしと無下にすることもはばかられた。
「あ、あぁ。……そう簡単には負けてやらねーから、覚悟しとけよ」
「勿論です」
「んじゃ帰るから、じゃーな」
「えぇ、お気をつけください」
手を振って別れ、魔法陣【固点転移】を起動する。
その名の通り、記録したひとつの座標へと転移することが出来る。
迷宮内部自体への魔法陣の書き込みは禁止されているから侵入には使えないが、中々便利なものだ。
『素敵な人だったね』
「……どこがだよ」
女性の感性はこの体になったところで一生分からんのだろうとテルは思った。
実際、女性へと変化したところで変わったことはほとんど無い。
トイレも風呂も着替えも生活魔法の【浄化】で済んでしまうから、シエラの裸体を拝むことすらないのが実情だ。
いや本人のいる前でそれを見せられるのは拷問そのものなのだが、それでも女性のからだへの興味というのはどうしてもあるのが男なのだ。
女性のからだに憑依しているというのに、それら一切を拝む機会がないのがなんとも残念だった。
■ ■ ■
「全く大人気ないっすね。挨拶の間中ずっと録画して映った腕時計から貢献値を盗み見ようだなんて」
空中に映ったテルの腕。装着された時計の表示を見るためにどんどんズームインしていく。
「賢いと言ってくださいスー。……さて、どれどれ─────!?」
ここに来て、初めてフリードは本気で硬直した。
──その空中に映し出された数値は、自らのそれを一万以上上回っていたから。
優美な動作で茶を飲み、息をついてから聞き返す。
「『嵐』、ですか?」
「そ。最近名を上げてる新人っす。なんでもとんでもない魔法であっという間に四十層のゲートモンスターを倒しちまったらしーっすよ」
「ほう、それは素晴らしいことですね」
「その感じはしっかり聞いてないっすよねー? まぁ本番はここからなんすけど、どうもその『嵐』、ソロ専みたいなんす。……勇級で新人でソロ専、まぁそういうことっすよ」
そこで、ようやく男は眉根を寄せた。
自分と同じ、新人かつ英級志願者のエリートであることが分かったからだ。
「ほう、私と同じ。……ふむ、そうですか、それは少し興味が出てきましたね」
「そうやって悠長にやってるのを見ると、スーはとてつもなく心配っす」
「私を誰だと思っているのですか、今月英級の座を独占するのは私フリード・アドバンと、【賢盟戦線】ですよ」
勇級冒険者フリード・アドバンは、そう優雅に、あるいはキザに宣言するのだった。
■ ■ ■
「はちまんきゅーせんごひゃくじゅうっ!!」
……腹筋の回数ではない。筋トレなどそもそもしていないが。
『うん、これで貢献値『89500』突破! 明日分までのボーダーは達成だね。お疲れ様』
「おう、まあしっかしここまで来ると迷宮の雰囲気もなんというか、物々しいな」
見た目はそこまで上と変わっていないが、こころなしかそんな気がした。
『そりゃ魔力密度がとんでもないからだよ。それに……この感じは、もうすぐゲートモンスターが復活するんじゃないかな』
「ゲートモンスターが? そりゃ黙ってられないな! 八十層のゲートモンスターってなると、どんだけ貢献値貰えるんだそれ」
『軽く一万だね。倒せれば英級間違いなし、逆に取られたら……』
全部水の泡、とばかりに手をパーにするシエラにテルは絶句する。
「おいおい洒落になってねーぞ……まぁ俺がやっつけちまえばいい話だけどさ」
『ふーん、だいぶ自信ついてきたんじゃない?』
まぁな、とテルは笑って答え、横から這いずってきた魔物を一薙ぎに焼く。
自分も大分力がついてきたものだ。
───突如。
パチ、パチ、パチ、と聞こえてくる拍手の方向を見やると、一人の男性が瓦礫に腰掛けていた。
「いやはやお見事。……貴女が『嵐』殿ですね?」
「(あら、し……?)」
『最近テルその名前で呼ばれてるみたいだよ。調子乗ると思ったから言わなかったけど』
おお、ついに自分にも二つ名が──! と、テルは歓喜。
「(嵐、嵐かぁ。シンプルでカッコイイ、いいセンスしてるぜ……)」
シエラの想像通り、かなり舞い上がっている。
シエラは思わずため息が出た。
それにハッとしたテルはごほんと咳払いをひとつ。男に向き直った。
「あぁ、えっと、そう呼ばれてるみたい、だな……? で、どちら様?」
「私はフリード・アドバン。貴女と同じ新米勇級冒険者です……にしても驚いた。私と同じくして上がってきたという新星が、まさかこんな華麗なお嬢さんだとは」
いちいち仕草が様になる男だ。
女ならばメロメロになる所なのだろうが、男のテルには逆効果でなんとなく腹が立った。
「中身は華麗じゃねーよ、悪ぃな。つか、同じってことは……」
「えぇ、私も英級を目指しております。どちらが英級に先に上がるか……切磋琢磨し、高め合いたいと思っております」
──うへぇ、胡散臭い。
それがテルの率直な感想であったが、しっしと無下にすることもはばかられた。
「あ、あぁ。……そう簡単には負けてやらねーから、覚悟しとけよ」
「勿論です」
「んじゃ帰るから、じゃーな」
「えぇ、お気をつけください」
手を振って別れ、魔法陣【固点転移】を起動する。
その名の通り、記録したひとつの座標へと転移することが出来る。
迷宮内部自体への魔法陣の書き込みは禁止されているから侵入には使えないが、中々便利なものだ。
『素敵な人だったね』
「……どこがだよ」
女性の感性はこの体になったところで一生分からんのだろうとテルは思った。
実際、女性へと変化したところで変わったことはほとんど無い。
トイレも風呂も着替えも生活魔法の【浄化】で済んでしまうから、シエラの裸体を拝むことすらないのが実情だ。
いや本人のいる前でそれを見せられるのは拷問そのものなのだが、それでも女性のからだへの興味というのはどうしてもあるのが男なのだ。
女性のからだに憑依しているというのに、それら一切を拝む機会がないのがなんとも残念だった。
■ ■ ■
「全く大人気ないっすね。挨拶の間中ずっと録画して映った腕時計から貢献値を盗み見ようだなんて」
空中に映ったテルの腕。装着された時計の表示を見るためにどんどんズームインしていく。
「賢いと言ってくださいスー。……さて、どれどれ─────!?」
ここに来て、初めてフリードは本気で硬直した。
──その空中に映し出された数値は、自らのそれを一万以上上回っていたから。
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