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第三章──光の勇者と学院生活
転生召喚・光の勇者
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「あ? 編入生だと?」
「そー! しかも帝級冒険者で、特待生らしいの!! テンキとどっちが強いかなあ?」
煽るように言う少女に、ハッ、とシガ・テンキは鼻で笑って応じる。
「オレに決まってんだろ? 勇者なんだぜ、オレはよ」
「だよねー!!」
テンキは勇者である以前に転生者だ。
神からの託宣を受けて、忌々しく住みにくい日本から転生した。
選ばれし勇者、最強の主人公なのだ。
「それよりそいつ、男なのか? 女なのか?」
それは非常に重要だった。
突然現れるミステリアスな美少女転校生、それはテンキの性癖をぶち抜く──素晴らしい属性であるから。
「んー、女の子だったと思うよ?」
「よっしゃあァ!!!」
テンキは転生前の恋愛経験はゼロであるものの、こちらに来てからは勇者の強さと地位を最大限に活用して、ハーレムを築いている。
その転校生とやらももれなく仲間入りだ、テンキの虜になること間違いなしだろう。
あぁ全く、ここはなんと住みよい楽園だろうか。
「あ、テンキ、チャイム鳴るよ」
「あァ、また後でな」
「うん」
テンキは少女──シオンに手を振って別れ、早足で自分の教室へと向かった。
■ ■ ■
列車を降りてついに学院を尋ねたテルは今、私立魔法学院フランドルの応接間にいた。
快適な旅だった……とは言いがたい。
特に安眠を邪魔したあの男は絶対に許さない。
まぁ憲兵に連れていかれたことだし、今頃牢獄の中だろうが。
「この度はシエラ様、この私立魔法学院フランドルをご贔屓にして頂き誠にありがとうございます」
さて、火が出そうな勢いでゴマを擂る中年男性は、私立魔法学院フランドルの最高責任者──つまり理事長だ。
そのお偉い様が頭を必死で下げるという状況に、テルは困惑しつつ答える。
「あぁ、まぁ国家公認魔導士試験を受けたいってだけですし。むしろ急なお願いで申し訳ありません」
「いえいえそれならば他の学院でも良かったでしょうに……急だろうがなんだろうがとても喜ばしいことでございます、私どもをご贔屓にしてくださり誠にありがとうございます」
「(ご贔屓って……)」
凄まじい頭の下がりっぷりに顔を引き攣らせるテルに、シエラが補足する。
『魔法学院って結構乱立してて、公式で認められてるところ同士でも競争がとにかく激しいの。帝級冒険者の編入だなんて美味しい案件、そう簡単に逃すわけにはいかないんだろうね』
なるほど、そんな事情が。
とはいえこちらには、ちゃんとフランドルを選んだ理由がある。
そんな躍起に頭を下げられても、いやはや困るというものだ。
ここはひとつ煽てて、安心させてあげねばなるまい。
「まぁフランドルは蔵書が随一って話を聞きましたから。特待生には閲覧許可が出るんでしょう?」
「勿論ですとも!! 図書室はあちらにあります、是非是非お使いください」
『いよっし……! 小さい頃に読んだ魔導全集全五十八刊、ちゃんと暗記出来てるかどうか見直さなきゃ』
あぁなるほど、小さな疑問が今ひとつ解けたとテルは思う。
それはド底辺で暮らしを立てていたシエラがどうやって魔法の知識をつけたのかという疑問。
答えとしては幼少期、貴族の頃に丸暗記していたということなのだろう。
にしても五十八刊丸暗記とはとんでもない才覚だが、とテルは思う。
自分は漢字を覚えるにしろ三十回は書かねばならない、残念な脳みそだというのに。
「編入生の紹介とかそういうめんどくさいのってやっぱあるんです?」
「あぁいえいえ!! 顔を出すも出さぬもご自由になさってください、一応所属は一等生赤組となっております」
「分かりました、ありがとうございます」
『楽でいいね! じゃ、早く図書室行こうよ』
学校という単語にあまりいい記憶のないテルとしては、嬉しい話だ。
急かすシエラに従って、図書室へと向かった。
■ ■ ■
シエラは未だに魔導書を積み重ね、ルンルンとはしゃぎながら読んでいる。
テルにはそんな大した興味も集中力もなく、欠伸をしながら気分転換になる本を探していた。
「ん? これって……」
手に取った本の題名は『転生召喚・光の勇者』。
転生、という部分にどうしても惹かれた。
シエラはテルが何を読んでいようと別に怒らないだろうし、これを読むことにした。
◇◇◇
ある所、聡明なる男生まれる。
男は生まれし時より話し、書き、読んだ。
また、魔法ならざる不思議な力『聖光』を使えたという。
ある時、男は転生者を名乗る。
上記の全てがこれによって説明され、男は神に選ばれし者として持て囃された。
そしていつの日か男は国を任される勇者となり、その力ここに極まる。
魔王を討ち、真の平和を取り戻した勇者は今も英雄として語り継がれている。
◇◇◇
ざっと、そんな内容だった。
「───俺以外にも、いたのか」
それとも、あくまでこの世界で二度目なのか。
思えば、テルとは一体誰なのだろう。
シエラは、魔王を取り込んだはずだったと言っていた。
しかしテルには、先日まで日本で暮らしていた記憶が確かにある。
そして何より────。
死んだ記憶が、ない。
転生? 否、二度目の人生ではないのだ。
どちらかと言えば、飛ばされてきた、が正しい。
しかも、魂だけだ。
さらに、シエラは魔王を取り込んだはずだと言っているのだ。
まるで分からない。
テルは何故この世界の、シエラの体へと憑依したのか?
得るものは多く、この世界で暮らすことに何の不満があるわけでもないが───。
ただ、自分の出自が闇に包まれていることに、言いようのない不安を感じた。
「そー! しかも帝級冒険者で、特待生らしいの!! テンキとどっちが強いかなあ?」
煽るように言う少女に、ハッ、とシガ・テンキは鼻で笑って応じる。
「オレに決まってんだろ? 勇者なんだぜ、オレはよ」
「だよねー!!」
テンキは勇者である以前に転生者だ。
神からの託宣を受けて、忌々しく住みにくい日本から転生した。
選ばれし勇者、最強の主人公なのだ。
「それよりそいつ、男なのか? 女なのか?」
それは非常に重要だった。
突然現れるミステリアスな美少女転校生、それはテンキの性癖をぶち抜く──素晴らしい属性であるから。
「んー、女の子だったと思うよ?」
「よっしゃあァ!!!」
テンキは転生前の恋愛経験はゼロであるものの、こちらに来てからは勇者の強さと地位を最大限に活用して、ハーレムを築いている。
その転校生とやらももれなく仲間入りだ、テンキの虜になること間違いなしだろう。
あぁ全く、ここはなんと住みよい楽園だろうか。
「あ、テンキ、チャイム鳴るよ」
「あァ、また後でな」
「うん」
テンキは少女──シオンに手を振って別れ、早足で自分の教室へと向かった。
■ ■ ■
列車を降りてついに学院を尋ねたテルは今、私立魔法学院フランドルの応接間にいた。
快適な旅だった……とは言いがたい。
特に安眠を邪魔したあの男は絶対に許さない。
まぁ憲兵に連れていかれたことだし、今頃牢獄の中だろうが。
「この度はシエラ様、この私立魔法学院フランドルをご贔屓にして頂き誠にありがとうございます」
さて、火が出そうな勢いでゴマを擂る中年男性は、私立魔法学院フランドルの最高責任者──つまり理事長だ。
そのお偉い様が頭を必死で下げるという状況に、テルは困惑しつつ答える。
「あぁ、まぁ国家公認魔導士試験を受けたいってだけですし。むしろ急なお願いで申し訳ありません」
「いえいえそれならば他の学院でも良かったでしょうに……急だろうがなんだろうがとても喜ばしいことでございます、私どもをご贔屓にしてくださり誠にありがとうございます」
「(ご贔屓って……)」
凄まじい頭の下がりっぷりに顔を引き攣らせるテルに、シエラが補足する。
『魔法学院って結構乱立してて、公式で認められてるところ同士でも競争がとにかく激しいの。帝級冒険者の編入だなんて美味しい案件、そう簡単に逃すわけにはいかないんだろうね』
なるほど、そんな事情が。
とはいえこちらには、ちゃんとフランドルを選んだ理由がある。
そんな躍起に頭を下げられても、いやはや困るというものだ。
ここはひとつ煽てて、安心させてあげねばなるまい。
「まぁフランドルは蔵書が随一って話を聞きましたから。特待生には閲覧許可が出るんでしょう?」
「勿論ですとも!! 図書室はあちらにあります、是非是非お使いください」
『いよっし……! 小さい頃に読んだ魔導全集全五十八刊、ちゃんと暗記出来てるかどうか見直さなきゃ』
あぁなるほど、小さな疑問が今ひとつ解けたとテルは思う。
それはド底辺で暮らしを立てていたシエラがどうやって魔法の知識をつけたのかという疑問。
答えとしては幼少期、貴族の頃に丸暗記していたということなのだろう。
にしても五十八刊丸暗記とはとんでもない才覚だが、とテルは思う。
自分は漢字を覚えるにしろ三十回は書かねばならない、残念な脳みそだというのに。
「編入生の紹介とかそういうめんどくさいのってやっぱあるんです?」
「あぁいえいえ!! 顔を出すも出さぬもご自由になさってください、一応所属は一等生赤組となっております」
「分かりました、ありがとうございます」
『楽でいいね! じゃ、早く図書室行こうよ』
学校という単語にあまりいい記憶のないテルとしては、嬉しい話だ。
急かすシエラに従って、図書室へと向かった。
■ ■ ■
シエラは未だに魔導書を積み重ね、ルンルンとはしゃぎながら読んでいる。
テルにはそんな大した興味も集中力もなく、欠伸をしながら気分転換になる本を探していた。
「ん? これって……」
手に取った本の題名は『転生召喚・光の勇者』。
転生、という部分にどうしても惹かれた。
シエラはテルが何を読んでいようと別に怒らないだろうし、これを読むことにした。
◇◇◇
ある所、聡明なる男生まれる。
男は生まれし時より話し、書き、読んだ。
また、魔法ならざる不思議な力『聖光』を使えたという。
ある時、男は転生者を名乗る。
上記の全てがこれによって説明され、男は神に選ばれし者として持て囃された。
そしていつの日か男は国を任される勇者となり、その力ここに極まる。
魔王を討ち、真の平和を取り戻した勇者は今も英雄として語り継がれている。
◇◇◇
ざっと、そんな内容だった。
「───俺以外にも、いたのか」
それとも、あくまでこの世界で二度目なのか。
思えば、テルとは一体誰なのだろう。
シエラは、魔王を取り込んだはずだったと言っていた。
しかしテルには、先日まで日本で暮らしていた記憶が確かにある。
そして何より────。
死んだ記憶が、ない。
転生? 否、二度目の人生ではないのだ。
どちらかと言えば、飛ばされてきた、が正しい。
しかも、魂だけだ。
さらに、シエラは魔王を取り込んだはずだと言っているのだ。
まるで分からない。
テルは何故この世界の、シエラの体へと憑依したのか?
得るものは多く、この世界で暮らすことに何の不満があるわけでもないが───。
ただ、自分の出自が闇に包まれていることに、言いようのない不安を感じた。
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