2人ではじめる異世界無双~無限の魔力と最強知識のコンビは異世界をマッハで成り上がります〜

こんぺいとー

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第三章──光の勇者と学院生活

嗤う影の上で踊る。

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テンキには怒られてしまったが、あれにはちゃんと理由があるのだ。
魔導祭は目立つ大会だ。
フリードやスーを殺し、篠崎 輝を知る何者かが、介入してくる可能性がある。

だから何か妙なことが起きる前に、一瞬で決着をつける必要があったのだ。

───そして。
仕切り直された魔導祭に生徒全員の気が向いている今、テルは一人っきりである。
シエラもいるから、あるいは二人っきりか。

──もし自分が敵ならば、このチャンスは逃さない。
全てはテルとシエラの思惑通りだった。

『うん……ビンゴ、来るよ』

「あぁ」

静けさの深まる廊下で、冷たい影が空気を幾重にも引き裂く。

到底回避は間に合わない。【守護結界陣オーブ】を展開し体の重心をずらして致命傷を防ぐも、右腕と左足に深々と突き刺さった痛みは相当なものだ。

───だが。捕まえられているのはこっちではない。

「不定形ってアド、自分から手放すってバカだよなぁ!!」

光の属性陣、多重展開。弱点が分かっているなら他の属性なぞ無駄の極み。

「……【超増幅・輝烈閃ウル・シャイニングロウ】。消えてなくなれ」

影には断末魔も何も無く、ただ塵となって消えゆくのみ。

そしていよいよ───そいつは、現れた。

「自分から一人になるとはいい度胸をしている」

「それを分かってて来るお前も大概だろ」

「ふ。篠崎 輝よ、我が名はシャン・リオ。ある方にお前を連れてこいと命令されている」

「シャン・リオ……? どっかで聞いたような……」

『ダゴマさん達が言ってた英雄殺しだよ……まさか、フリードさんの件と繋がってるだなんて』

ダゴマの子供を始め、将来有望な者を次々に殺している【英雄殺し】が、フリードやスーを殺し、また何故か篠崎 輝を知る者と繋がっている。

また、闇が深まった。

『行こう、テル。……ここは正念場だよ』

こんなドス黒い邪悪をほったらかして逃走するなど、二人には出来なかった。

「……連れていけよ、どうせそいつと会わねぇと話が進まねえ」

「勇敢か、はたまた馬鹿なのか。──それはこの目でじっくり見極めるとしよう、着いてこい」

英雄殺しが取り出した魔石から、魔法陣が展開される。

──転移陣だ。

手招きする英雄殺しに従い、テルは躊躇なく陣に足を踏み入れた。

そして来たのは──暗い暗い、真っ暗な場所。
地面には紫に怪しく光る魔法陣があるが、あまりにも巨大で全貌が把握出来ない。

「篠崎 輝、久しぶりだな」

「……? 初対面だと思うけどな。とりあえず聞きたいことがいくらかあるんだが──いいか?」

黒い男だ。
そう表現するしか無いほどに、黒い格好をした男だ。

「構わない。聞くだけなら自由だからな」

『……口調、ちょっとテルと似てる……?』

「(やなこと言うなよ……)」

確かに言葉のイントネーションや語尾の具合が似てはいるが、それを指摘されるのは嫌だった。

「えっとじゃあまず……フリードやスーを殺したのはお前でいいんだな?」

「あぁ。フリードとやらを利用して最下層のゲートモンスターを仕向けさせたのは俺だ」

「……俺を挑発したのはなんでだ?」

「俺の計画のためだ」

「答えになってないな……まぁいいか」

「教えられないってことだな。まぁ代わりにいい情報を教えてやるよ……ヴェインとパーティを組んで、モンスターハウスの罠を踏んだのは俺だ」

衝撃的な情報だった。
それでは、まるで──。

「な? ハッキリしてていいだろ? お前が乗り越えてきた苦難は全て俺の用意したものだ。お前の敵は、俺一人なのさ」

じゃあ、それなら。
ヴェインを殺したのは───完全に、こいつだということになる。

あの時エンヴィーターが複数体現れるなんてことがなければ、後になってヴェインが自ら死を選ぶことなんてなかった。

あの時最下層のゲートモンスターなんてものが転送されて来なければ、ダゴマの腕も、ヴェインの死もなかった。

……後から、何を言っても事実は変わらない。

そんなことは、そんなことは分かっているが──。

だが、それ以上に、理屈以上に感情がこいつを許さなかった。

全てがこの影の手のひらの上なことが、余りにも気に食わなかった。

「命を、人の生き様を弄んでんじゃねえぞ……!!」

『テル……待って!! ダメ!!』

シエラの制止は、テルの耳には届かなかった。

「死んで償え……クソ野郎がッ!!」

勇者に放った時のものと同じ、全力の一撃。

「……強くなったなぁお前」

「嘘、だろ」

『テル、逃げよう!? 無理だよ、ダメなんだよ!! 死んじゃうよ……ッ!!』

勇者にさえ少しは効いていた。
勇者でさえ防御の姿勢は取っていた。
勇者にさえ、勇者にさえ痛いと言わしめた。

──その、攻撃を、受けたはずの。

影の男は、ノーモーションで何事もなかったように立っていた。
服にも、傷一つなく。

「ま、及第点だろ。こんだけ強けりゃ充分俺は神に勝てる」

「……神……だと?」

「知らねぇでもいい事だ。どうせ今ここでお前は死ぬんだからな」

這い寄る影に、余りにも強大すぎる悪意に。

テルは、シエラの言う【逃げる】しか、選択肢がないことを悟った。

「……クソ、仕方ねえ……ッ!!」

こいつをやれば、全てのカタがつくのに。
敗走するしかない自分が余りにも情けなかった。

「……チッ、保険をかけてやがったか……!!」

「アルカには感謝しなきゃな」

影が喉元を貫くより先に、テルは転移光に包まれた。



■ ■ ■

声を出すことは出来ず、呼吸も出来ず、だが死にはしない。
ただ命と意識だけがここにはあり、明確な体というものは表層でしか存在していない。

テルは転移したはずだった。
アルカに貰った転移陣を、作動させたはずだった。

──ここは、どこだ。

流れにただ身を任せるしかない、光の奔流の中────。

「どういう、ことだ」

真っ白な世界で、テルは困惑した。

これは余りにもおかしい。

自らの体が。声が。
慣れ親しんだに、変わっていた。

真っ黒な髪とそれなりに整った顔は自堕落な生活で台無し───でもない。
明らかに自分ではあるものの、転生前の自分とは正反対な清潔感のある状態になっている。

「テル……? テル、なの?」

横を振り向くと、自分がいた。
──いや、違う、シエラだ。

自分が中に入っていた時ほど目つきは鋭くなく、雰囲気が柔らかになっている。
改めて他人として見ると、とんでもない美しさだ。

「あぁ……どうなってるんだ」

『それはあなた達の命の鏡。魂のかたちです』

いきなり脳に直接響く声。
シエラとの会話とも少し違う、もっと強引な何かだ。
その声のした方向を見遣れば、シエラのそれなど比較にもならないほど眩しい女性が一人。

感じたのは、絶対的な力。
否、力と表現することすらおこがましい頂点だ。
威圧された訳でもないのに足が震え、冷や汗が頬をつたう。

『やっとお会い出来ました、篠崎 輝。……私はこの世界の神───マキナです』

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