黄昏の騎士

紫ノ宮風香

文字の大きさ
上 下
2 / 8

《彼》

しおりを挟む
邪悪な魔導師が邪神復活を目論んで世界の理を壊して、異世界で悪辣極まりない事をし出すようになってからどれだけの年月が過ぎた事だろう。

邪神復活は守護神とその信徒達が阻んでくれたけど、邪神の封印のし直しで彼等は手一杯になってしまった。

各国の騎士の中で魔法も扱える者が集まって、異世界へ赴き魔導師を追うことになった。
けど、魔力の高い騎士の人数はそう多くなく、戦える者は数える程だった。
そして魔導師の逃げた先の異世界は魔法がなく、神の存在も薄れた世界。
追跡は困難を極めるだろう。



《僕》は本来王宮魔導師の道に進むはずだった。
しかし、邪悪な魔導師と対峙する者の神託が降りたと告げられた。
齢10歳で魔導騎士としての道を歩む事になった。

初めて異世界へ赴いたのは12歳。
姿隠しの魔術を使いながら魔導師の痕跡を探していく。しかし、黄昏時だけは何故か姿隠しの魔術が薄れがちになった。
逢魔が時と呼ばれるこの時だけ、何かの干渉を受けているのかもしれない。

幸い《僕》に気付く者はほぼいなかった。
ただひとりの例外は小さな少女。《彼女》はそれからも《僕》の事を誰にも告げず、認識をしながら距離を保ってくれていた。



魔導師の気配は時折見えていた。邪法を人間の体に埋め込み自ら死に向かわせ、その魂を取り込み己の力にしようとしていた。
邪法の発動を食い止める事が最大の課題だろう。
魂の取り込みだけは食い止めているが、犠牲者は日増しに増えている。

何とかしなければ。
しおりを挟む

処理中です...