妖精に連れ去られた娘

紫ノ宮風香

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お腹がすいた

幼い頃に頭を占めていたのはそれだけだった。
姉も妹も両親に愛されているのに、あたしだけいない子として扱われている。



物心つく頃に離れにある物置小屋に押し込められ、食事も服も与えられずに何年も放置された。
普通であればとうに死んでいる筈。けれどもまだ生きている。
そしてもっとおかしいのは、誰とも話をした記憶がない・・・・・・・・・・・・のに、言葉も読み書きも理解していること。



あたしだけ愛されない。
時折離れに来る両親と姉と妹。妹はあたしの事をきっと知らない。そしてあたしだけを省いた世界で、あたし以外の家族が幸せそうに過ごしている様子を、物置の扉の隙間から見ることしか出来なかった。

辛いとも悲しいとも思わなかった。孤独と共にある既視感。過酷な労働がないだけきっとマシね。そう呟く。








ある日、大きな物音と共に物置小屋の扉が開けられた。

「お前が呪い持ちの女か!」

見知らぬ男があたしを蔑むように見下しながら問いかけてきた。けれどもあたしはそれどころではなかった。そう、物心がついた時に閉じ込められて以来、何一つ与えられなかったせいで、着るものが全く・・ないのだから。

慌てて物陰に隠れた全裸のあたしを引きずり出し、男は檻馬車にあたしを放り込み、そしてどこかに連れ去った。こんな事は今までなかった。
あたしはこの異常な状態と、何かを思い出しかけている解離した自分を自覚して、ただただ混乱することしか出来なかった。







☆★☆★☆★

遠くで悲鳴があがる。

「何て事!
人外の干渉があったら呪いが消されてしまう!
魔物に喰われてもだめよ!」

あの男は死なずの呪いを把握した上で生け贄に選んだのだろう。異世界で起きている事に干渉は許されない。

「何とかしなくては・・・・」

女の力ない呟きを残し、その周囲は暗転する。
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