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深夜バス
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──○○行きです
最終電車に何とか間に合い、急ぎ足で家までの道のりを歩く女性の横にバスが停車する。
──ご乗車お急ぎください
女性の付近にまったく人影はなかった。自分に声を掛けたのは間違いない、と女性は気がつく。
帰り方向に近いようで微妙に離れた行き先。
「方向が違うので乗りません」
女性の声を聞いてバスは発車する。中には数名乗っていたようだ。
終電後にバスが走るって便利になったのね、方向違いで残念、と女性が独り言で呟く。しかしここは交通の要になるようなエリアではない。そして今歩いている道は、バス通りですらなかった。
ふとよぎる悪寒。
《関わってはいけないものに関わりかけた》
そう。仕事疲れで変な幻を見た。きっとそう。
女性はそう結論付けて帰宅を急いだ。
********************
ネットの掲示板で頻繁に書き込まれるようになった都市伝説。
独り暮らしの社畜状態の人が失踪する事件が相次いでいるという。
共通しているのは、失踪前後に口座の現金引き出しが全くないこと。旅行や引っ越し準備等の形跡もないこと。最後の足取りが最寄り駅に最終電車で到着して下車した後だということ。
そして、防犯カメラの死角に入ったところで、姿が見えなくなっていること。
発覚したのは、家賃滞納で大家が強制退去の手続きを取った時に、親族が部屋の保証人になっていた人がいたからだ。
捜索願が出されても誰一人見つかっていない。
事件と事故の両方で調べても進展は全くなく、自作自演の模倣犯以外の失踪は全て迷宮入りとなっていた。
失踪者の9割が親族と没交渉だと書き込まれているのは、事件性もしくは謎を深めさせようとしたデマの書き込みなのだろうか──
もしくは──
********************
「もっと働け! お前らは現し世でも奴隷同然だったんだろうが!」
鞭で叩かれる者、嘆きながらのろのろと動いて罵声を浴びせられる者、そして、力尽き倒れる者もいる。
「倒れてる暇なんかあると思うな! 隠り世は過労死という逃げ道なんかねえからな!」
嘲るように喋っているのは、人の外見に似ているようで違う者だ。頭部には複数の角があり、口許からは鋭い牙が見えている。
一匹だけ逃したのがいた。
頭領は強引に乗せるなと言ったが・・・ 僅かにこちらの気配を纏っていた。
「頭領、1人逃したままでいいんでしょうか?」
「ああ、あれはやめておけ。他の奴等と揉める元になる」
「人間の女ごときで揉めるとは思えませんが」
「あの気配は《横丁》のものだ。確実に揉める。あの女はどのみち囚われる宿命ということだ」
違いありませんな。という同意の言葉と共に、二匹の鬼が嗤い出す。
やり過ぎた彼らが揉め事を引き起こし、自滅するのはしばらく先の事。
最終電車に何とか間に合い、急ぎ足で家までの道のりを歩く女性の横にバスが停車する。
──ご乗車お急ぎください
女性の付近にまったく人影はなかった。自分に声を掛けたのは間違いない、と女性は気がつく。
帰り方向に近いようで微妙に離れた行き先。
「方向が違うので乗りません」
女性の声を聞いてバスは発車する。中には数名乗っていたようだ。
終電後にバスが走るって便利になったのね、方向違いで残念、と女性が独り言で呟く。しかしここは交通の要になるようなエリアではない。そして今歩いている道は、バス通りですらなかった。
ふとよぎる悪寒。
《関わってはいけないものに関わりかけた》
そう。仕事疲れで変な幻を見た。きっとそう。
女性はそう結論付けて帰宅を急いだ。
********************
ネットの掲示板で頻繁に書き込まれるようになった都市伝説。
独り暮らしの社畜状態の人が失踪する事件が相次いでいるという。
共通しているのは、失踪前後に口座の現金引き出しが全くないこと。旅行や引っ越し準備等の形跡もないこと。最後の足取りが最寄り駅に最終電車で到着して下車した後だということ。
そして、防犯カメラの死角に入ったところで、姿が見えなくなっていること。
発覚したのは、家賃滞納で大家が強制退去の手続きを取った時に、親族が部屋の保証人になっていた人がいたからだ。
捜索願が出されても誰一人見つかっていない。
事件と事故の両方で調べても進展は全くなく、自作自演の模倣犯以外の失踪は全て迷宮入りとなっていた。
失踪者の9割が親族と没交渉だと書き込まれているのは、事件性もしくは謎を深めさせようとしたデマの書き込みなのだろうか──
もしくは──
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「もっと働け! お前らは現し世でも奴隷同然だったんだろうが!」
鞭で叩かれる者、嘆きながらのろのろと動いて罵声を浴びせられる者、そして、力尽き倒れる者もいる。
「倒れてる暇なんかあると思うな! 隠り世は過労死という逃げ道なんかねえからな!」
嘲るように喋っているのは、人の外見に似ているようで違う者だ。頭部には複数の角があり、口許からは鋭い牙が見えている。
一匹だけ逃したのがいた。
頭領は強引に乗せるなと言ったが・・・ 僅かにこちらの気配を纏っていた。
「頭領、1人逃したままでいいんでしょうか?」
「ああ、あれはやめておけ。他の奴等と揉める元になる」
「人間の女ごときで揉めるとは思えませんが」
「あの気配は《横丁》のものだ。確実に揉める。あの女はどのみち囚われる宿命ということだ」
違いありませんな。という同意の言葉と共に、二匹の鬼が嗤い出す。
やり過ぎた彼らが揉め事を引き起こし、自滅するのはしばらく先の事。
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