3 / 6
猫
しおりを挟む
「にゃーーー」
隣のデスクから聞こえてくる猫の泣き真似の声。またか、と思うのも仕方ないはず。
派遣で入ってきた初日から、仕事中に猫の動画を見ながら猫の物真似をしているのだ。3日でクビが飛ぶだろうと思ったのに、半年過ぎてもまだ飛んでいない。
上司も猫好きなのだ。初日の段階でサボりの報告をしたのだが、猫の動画と言った途端になあなあにされた。
婚活中の女性上司と、まだ若い青年派遣。猫好きという共通項と、下心付きの依怙贔屓。
色々な意味でコンプライアンスどこいった。
嘆く暇があったらさっさと仕事を進めないと。どうせ、隣のデスクの派遣の青年がサボった分をやる羽目になるのは確定で、更には上司の仕事も時々押し付けられている。
しかも、上司の陰謀で残業しても全部認められず、しかし終電近くまで仕事をする日も多かった。
********************
ある日、終電に乗り遅れた時に、ネットカフェを探して歩いている僕の横に一台のバスが停車した。
──○○行きです
家に近い方向の行き先を告げられたが、昼食も夕食も食べる暇もなかった僕は、この時何故か猛烈な空腹感を自覚した。このままバスに乗ればきっと乗り物酔いしそうだ。
「すみませんが結構です」
本当は乗りたかったが泣く泣く諦める。
──獲物が増えなかったか
運転手がそう呟いた事を僕は知らなかった。
そう、僕はとんでもない禍の渦中にいただけではなく、違う禍まで真横に迫ってた事を後から知ったのだ。
********************
「「にゃーーー」」
隣のデスクだけではなく、上司からも猫の泣き真似の声がするようになってきた。
猫真似というよりは、猫そのものの仕草や鳴き声をしてるように見えてきた。何故なら二人とも、椅子に座ることもせずにスマホを床に置き、寝転がりながらアプリ画面を見て寛いでいる。
あまりにも酷い二人を何とかしなければと思い部屋を出る。課長は嫌味な性格をしているから部長に直談判をしよう。そう思いながら廊下を歩くが、社内に人の気配が全くない。
休日のわけがない。スマホで日付と時間を確認する。昼まであと2時間程。何故誰もいない?
ふと視界に動くものが目に入った。走り去る猫の姿。
「何故社内に猫・・・・・?」
「可愛いでしょう? でも何故貴方は変わらないのかしら」
呆然とした僕の呟きに後ろから声がした。
驚いて振り返った僕の視界には大量の猫がいて。声の主は見当たらぬまま、猫たちは僕を囲むかたちで近付いて来た。
一匹の猫が僕に飛びかかって来たところで、僕の意識は暗転した。
愛犬の鳴き声が何故か聞こえた気がする。
********************
──先生、○○さんのバイタル値が上がりました
女性の声と、周囲のばたつく気配。
うっすら目を開ければ、見えるのは白い天井。まわりに見えるのは白衣を着た人たち。
体が動かせず、声もうまく出せなくて、辛うじて現状を聞けたのは翌日の事。
僕は社内で勤務中に、階段の転落事故に巻き込まれたらしい。
事故の元凶は派遣で入ってきた青年で、入った初日に事故を起こすわ、彼も重体だったらしいのだがICUから突然いなくなったりで、かなり大騒ぎになったらしい。
室長は僕たちの事故のあった日から奇行が始まり、青年が行方不明になったのと同じ日から出勤してこなくなり音信不通だという。
僕は青年よりも状態が悪く、3日程危篤状態が続いたらしい。三途の川を見てない上に、会社で社畜状態の夢を見ていたのだ。悪夢以外の何物でもない。
そして退院の日、会社に寄って諸々の手続きをしてから帰宅した。何事もなく帰宅して、日常に戻れることを願いながら。
リハビリを兼ねて、家で飼っている愛犬の散歩がしばらくの間の日課になるだろう。
********************
最近我が一族は少子化で滅亡の危機に瀕している。
あまりやりたくない手段ではあるが、人間で適性のある魂を持つ者を同族化させる事になった。
今回は二名の予定だったのだが、予想外に一名が紛れ込んで来たので、纏めて同族化しようとしたが三人目が上手く行かない。
三人目だけ失敗したのでその後の監視をしようとしたが、天敵の気配がしたため離れざるを得なかった。
──犬の護りなどと忌々しい!
隣のデスクから聞こえてくる猫の泣き真似の声。またか、と思うのも仕方ないはず。
派遣で入ってきた初日から、仕事中に猫の動画を見ながら猫の物真似をしているのだ。3日でクビが飛ぶだろうと思ったのに、半年過ぎてもまだ飛んでいない。
上司も猫好きなのだ。初日の段階でサボりの報告をしたのだが、猫の動画と言った途端になあなあにされた。
婚活中の女性上司と、まだ若い青年派遣。猫好きという共通項と、下心付きの依怙贔屓。
色々な意味でコンプライアンスどこいった。
嘆く暇があったらさっさと仕事を進めないと。どうせ、隣のデスクの派遣の青年がサボった分をやる羽目になるのは確定で、更には上司の仕事も時々押し付けられている。
しかも、上司の陰謀で残業しても全部認められず、しかし終電近くまで仕事をする日も多かった。
********************
ある日、終電に乗り遅れた時に、ネットカフェを探して歩いている僕の横に一台のバスが停車した。
──○○行きです
家に近い方向の行き先を告げられたが、昼食も夕食も食べる暇もなかった僕は、この時何故か猛烈な空腹感を自覚した。このままバスに乗ればきっと乗り物酔いしそうだ。
「すみませんが結構です」
本当は乗りたかったが泣く泣く諦める。
──獲物が増えなかったか
運転手がそう呟いた事を僕は知らなかった。
そう、僕はとんでもない禍の渦中にいただけではなく、違う禍まで真横に迫ってた事を後から知ったのだ。
********************
「「にゃーーー」」
隣のデスクだけではなく、上司からも猫の泣き真似の声がするようになってきた。
猫真似というよりは、猫そのものの仕草や鳴き声をしてるように見えてきた。何故なら二人とも、椅子に座ることもせずにスマホを床に置き、寝転がりながらアプリ画面を見て寛いでいる。
あまりにも酷い二人を何とかしなければと思い部屋を出る。課長は嫌味な性格をしているから部長に直談判をしよう。そう思いながら廊下を歩くが、社内に人の気配が全くない。
休日のわけがない。スマホで日付と時間を確認する。昼まであと2時間程。何故誰もいない?
ふと視界に動くものが目に入った。走り去る猫の姿。
「何故社内に猫・・・・・?」
「可愛いでしょう? でも何故貴方は変わらないのかしら」
呆然とした僕の呟きに後ろから声がした。
驚いて振り返った僕の視界には大量の猫がいて。声の主は見当たらぬまま、猫たちは僕を囲むかたちで近付いて来た。
一匹の猫が僕に飛びかかって来たところで、僕の意識は暗転した。
愛犬の鳴き声が何故か聞こえた気がする。
********************
──先生、○○さんのバイタル値が上がりました
女性の声と、周囲のばたつく気配。
うっすら目を開ければ、見えるのは白い天井。まわりに見えるのは白衣を着た人たち。
体が動かせず、声もうまく出せなくて、辛うじて現状を聞けたのは翌日の事。
僕は社内で勤務中に、階段の転落事故に巻き込まれたらしい。
事故の元凶は派遣で入ってきた青年で、入った初日に事故を起こすわ、彼も重体だったらしいのだがICUから突然いなくなったりで、かなり大騒ぎになったらしい。
室長は僕たちの事故のあった日から奇行が始まり、青年が行方不明になったのと同じ日から出勤してこなくなり音信不通だという。
僕は青年よりも状態が悪く、3日程危篤状態が続いたらしい。三途の川を見てない上に、会社で社畜状態の夢を見ていたのだ。悪夢以外の何物でもない。
そして退院の日、会社に寄って諸々の手続きをしてから帰宅した。何事もなく帰宅して、日常に戻れることを願いながら。
リハビリを兼ねて、家で飼っている愛犬の散歩がしばらくの間の日課になるだろう。
********************
最近我が一族は少子化で滅亡の危機に瀕している。
あまりやりたくない手段ではあるが、人間で適性のある魂を持つ者を同族化させる事になった。
今回は二名の予定だったのだが、予想外に一名が紛れ込んで来たので、纏めて同族化しようとしたが三人目が上手く行かない。
三人目だけ失敗したのでその後の監視をしようとしたが、天敵の気配がしたため離れざるを得なかった。
──犬の護りなどと忌々しい!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ
Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。
理由は決まって『従妹ライラ様との用事』
誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。
「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」
二人の想いは、重なり合えるのだろうか ……
※他のサイトにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる