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第二部 新たな出逢い。そして――。

三十六発目 ビレッジ・アドベンチャーを真面目? にやってみるも……おや? おやおや?【中編】

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 見張り小屋っぽい建物の中を、息を潜めて窓からこっそりと覗くも、目にした瞬間――唖然としてしまった。


 何もない。


 見張り小屋と言うか詰所と言うかには、最低でもある筈の机に椅子の類いもない。
 外壁を担う打ちっぱなしの板が丸出し。当然、床もなく土が丸出し。
 要するに演劇なんかで良くある、外側からそう言う風に見せかけて作ったハリボテだったのだ。

「意味が解らない……なしてこんな唐突に?」

 張り詰めていた緊張が解かれ、脱力しつつ呆れ返ってしまった。

「にぃに、どしたん、なの?」

「ぱぱ、だいじょぶ、です?」

 窓を見ながら呆けている俺の外套の両裾を、幼い手で掴みつつそう心配してくれる。
 おかげで我に返った俺は、二人の頭の高さまでしゃがみ込む。

「あ、うん……ごめん。予想の斜め上だったから。もう大丈夫だよ、ありがとう」

「よかった、なの」「です、です」

 そう言って二人の頭を撫でると、にぱっ♪ っと天使の笑顔で答えてくれた。


 丁度、その時だった。


「なんだ?」

 急に息苦しさを覚え、鳥肌が立つ。
 俺の後方――つまり入口付近から、何かの嫌な気配が滲み出るかのように蔓延し、覆い尽くすかの如く伝わってきた。

「なの?」「です?」

 ナイチチちゃんにアルチチちゃんの二人にしても、何か得体の知れない怖気を感じたのか、俺にしっかりしがみついてくる。

 いつもなら真っ先に対峙する筈の二人がこれだ。慌ててそっちに振り返ってみれば――。


 え? 何あれ?


『うふっ、うふっ、うふふっ♡』

 とんでもない変態が唐突に湧いた。
 それも変態の代名詞である某ドワルフとは違うベクトル方向性で。


 所謂、外見からして生粋の変態。
 変態としか言いようがない変態。
 目を擦って瞬きを数回するも、それでもやっぱり変態にしか見えない変態。
 関わってはテラヤバいやつだと、俺の危機感が警笛を鳴らす。


 あらゆる意味で。


『うふっ、うふっ、うふふっ♡』

 白いキレッキレの食い込みパンツのみ着用した、パっと見はイケメンのおっさんだった……んですけども。

 化粧が濃ゆい。濃ゆ過ぎる。
 美しく見せようと盛りに盛って、結局は醜くなるクドさテラMAXで濃厚なアレな顔。

 更には全身真っ黒な身体を半分捻った斜め姿で香ばしいポーズを披露。
 筋肉ムキムキかつピクピクとアピールをしつつ、最後は不敵にニヤリときた。

『うふっ、うふっ、うふふっ♡』

 まだ続く。幼乳神様に気色悪さテラMAXな、下品かつ穢らわしい視線を放ち、身体を微妙に捻っては戻しを繰り返し、キレッキレの食い込みパンツの前後を、まざまざと見せつけてくるときた。

 その所為で後ろの局地的一部には謎の茶色い汚れ、前は黄色い滲みに気がつく。
 それ以上に前のヤバさテラMAXな凄い盛り上がりで絶賛野営なうな、局地的一部分が最悪すぎてゲロしそうだ。

『うふっ、うふっ、うふふっ♡』

 俺の知るところでは全くないのだけども、何もない空間から突如として湧いた、うふふ♡しか言わない謎の変態って……なんの嫌がらせだろうか?

 漆黒の宝剣を抜き放ち、鋼の盾を引き絞って、二人を守るように一歩前に出る。

「――なんだ、お前は?」

 宝剣の切っ先を向け、敵意剥き出しの眼光で睨みつけ、聞きたくもないが一応は誰何をやっておく。

 答えがなんであろうと、何者であろうとも、こいつは全力で葬り去ることが既に決定。大体、味方である筈がない。


 某ドワルフ、某エロフを遥かに凌駕する重度の変態。もしもこんなのが味方だったら、俺は甘んじて……否。真っ先に死を選ぶ。


「そ~です♡ わたくしが変なおぢさんです♡ 変なおぢさん♡ だから、変なおぢさん♡」

 腰をフリフリ前後チラチラ。そんな飄々とした態度で戯けているも、仰る通りの変なおぢさん――どころではない。
 あらゆる意味で禍々しくも悍ましい、纏わりつくような嫌な気を全身から放ってきやがった。
 変態の気迫、或いは力の象徴とでも言うのだろうか。
 お陰で身に纏う装備に衣服も弾け飛ぶ、嫌な幻覚を見せられた。

「あらやだ。力をこめすぎて真っパになっちゃったわ、うふふ♡」


 幻覚じゃなかった。


 裸族になって筋肉ムキムキ。アーンド、ピクピク。
 だがしかし。下半身には謎の影、或いは光る、更にはゴミが通り過ぎるなどなど。神がかったタイミングで全貌は不明。


 これがなければ目が腐っての即死だったところ。
 なので局地的一部分については一応セーフだけども、その他の部分を見てるだけでもゲロりそう。


 何処ぞの神様か女神様の加護でしょうか? 助かりました、ありがとう。


「うふふ♡ 今からとても素敵なをお見せしますわ♡」

 そう言って裸族になって隠す場所もない筈なのに、何処から取り出したのか、手には例の謎の物体が握られていた。
 しかも愛おしそうに頬擦りした姿を見せつけてきた。


 嫌なアレをお見せするの間違いなのでは?


「これは私がお慕いしてやまない、今はお眠りになられる魔王様のアレ恥肉♡ 素晴らしいアレの片鱗をご覧に入れますわ♡ 私と一つになりましょう♡ やん♡」

 謎の物体を、言葉にするのも憚られる、に押し当てるうふふ♡な変態。


 俺は何を見せられているんだろうか?
 謎の影、或いは光る、更にはゴミが舞って全貌は不明。


 だがしかし、なんだろうか。一瞬、背筋がゾクリとした。
 それも、なんかモヤっとした良く解らない感覚で。
 ただこのモヤっとした感覚は、気色悪さからくる生理的嫌悪感ってのだけは、何故かハッキリと解ります、うん。

「キモ兄様あにさまを亡き者にした貴方様の実力♡ 噂にたがわず流石ね♡」

「は?」

 まずいつ噂になったのか知りたい。
 そしてどうして俺の実力で倒したことになったのかを聞きたい。
 更に過大評価で噂を流した無能なやつを、是非とも教えて欲しい。


 それ以上に、今しがた遭遇したばかりだゆーに、流石ね♡と納得する根拠を、いつの間に得たのかが何よりも知りたい。


「すんません。それは大きな誤解です。俺は何もしてませんし、結局は自滅しただけです」

 ゲロりそうで話しすらしたくない相手だが、スルーしても強引に進めてくる輩だろうと、なんとか声を捻り出し、ちゃんと否定しておく。

「あら~♡ 謙遜しちゃって♡ 私の中で凄い好感度が爆上がりよ♡ 先っちょがもうヌルヌルだわ♡」


 それは魔王様の恥肉の所為です。


「いや、何を言ってるのか全く解りません。人族の言葉でお願いします」

 やっぱり某ドワルフと同じ、変態の耳は難聴系だった。

「この魔王様の恥肉でぇ♡ 私のさる部分……いやん♡ 私自身がね♡ ここよ、ここ♡ ここがとっても凄くパワーアップするのよ、うふふ♡」

 犬丸出しな局地的部分に、魔王様の恥肉をあてがったと思えば……変で妙な動きでカクカクと腰振り運動を開始した。

「プリンプリンなプリンセスフォーム♡ 面食いだけどメイクアーップ♡」

 最後はこんな決め台詞ときた。

 腰を振り気色悪いけったいな動きをずっと見せつけられるも、俺の知るところでは全くないが、何故か謎の影が差したり、或いは光りが差し込んだり、更にはそこら辺に散乱する道具などのゴミが舞って、装着後の全貌は相変わらず隠されて全貌が不明ってんだから……まぁ不思議不思議。
 目が腐る、或いは目がぁ~っ、目がぁ~っと大騒ぎしない理由だな、うん。

 さる局地的一部分がどうなってるのかなど、直視させられんだけ随分と救われてる。


 やっぱりこれは、何処ぞの神様か女神様の加護でしょうか?
 実に助かります、本当に感謝しかありません。ありがとう。


「変♡態♡完♡了♡ さぁ~♡ 二人っきりで♡ 思いっきり出し合いましょうねぇ~♡ べ、別に貴方の為に準備したんじゃないんだからね? うふふ♡」

 何故かしなを作り、ツンデレっぽく語尾が疑問系でそう言い捨てるうふふ♡な変態。


 ちなみに、姿は全く変わっておりません。


(二人きり? そう言えば、さっきから二人とも静かだけど……え?)


 気づけばナイチチちゃんとアルチチちゃんが、この場から消えていた――。



 ――――――――――
 変態を見て目が点になるのはお約束?
 否。点どころか潰れる、腐る。過酷過ぎるっ⁉︎∑(゚Д゚)
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