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第一話 ありふれた日常。
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いつもと変わらない、平凡な朝の風景。
人々が忙しなく行き交う町を歩き、今日も仕事へと出掛ける。
駅に着くと、真面に歩くのもままならない、有象無象の人混みに嫌気が差す。
毎朝のことだと諦めて、人混みを掻き分け改札口へと急ぐ。
ホームに辿り着くと、電車に乗る順番待ちの乗客で長蛇の列だった。
うんざりだと思う前に電車が到着する。
そして今日も今日とて通勤ラッシュの時間帯に、押すな押すなの鮨詰め状態に陥る。
俺は何処にでもある日常、いつもと変わらない朝を、今日もしがなく過ごす筈だった――。
◇◇◇
「何が……起きた……?」
気付けば人が折り重なるように伸し掛かり、呼吸が覚束ないばかりか身体中が痛い。
そこら中から老若男女の呻き声と、悲鳴に怒号が耳に届く。
外からは爆発音。その度に大きく揺れてビリビリと振動が伝わってくる。
煙が充満し焦げ臭いうえ、錆びた鉄の臭いが入り混じった、火葬場独特の嫌な臭いも鼻についた――。
(電車……事故?)
そんな風に感じている俺は、身動きが取れない。
身体に伸し掛かる感触から察するに、どうやら折り重なる乗客らの下敷きになっている模様。
「くっ……伸し掛かってる人! 早く退いて!」
腹の底から怒号をあげたが、ピクリとも動いてくれやしない。
“ キュイン、キュイン、キュイン―― ”
喧騒の中、妙な電子音が鳴り響いているのに不意に気付く――。
(なんの音?)
音の発生源を耳で追うと、腰のポーチに入れてある俺のスマホから鳴っているようだった。
伸し掛かる人が邪魔で取り出し難いが、なんとか取り出せた。そして割れていた画面を見る。
「壊れた? 違う! なんだっ⁉︎」
目を見開き、スマホの割れた画面を見入ってしまった。何故なら――。
“ このまま死にたくなければ念じなさい――無念、と ”
ブラックアウトした液晶画面一杯に書かれる、赤く血塗られた擲り書きのメッセージがあったからだ。
割れて液晶が機能していないんだから、当然、メールやSNSの類いであるわけがない。
「なんなんだっ⁉︎ 俺が死ぬだっ⁉︎ 冗談は大概にしろよっ!」
馬鹿馬鹿しいにもほどがあると怒り心頭な俺は、なんとかこの状況から脱出する為、押し退けようと必死に足掻く。
だがしかし。折り重なる乗客は一人ではないようで、重く伸し掛かったままビクともせず、無駄な抵抗に終わった。
「これ、たぶん圧迫死とか窒息死とか……そんなだな」
どうにもできず半ば投げやりになって、今までの人生を思い起こす――。
見た目が瓶底メガネのブサメンで、デブなボディかつ生粋の美少女アニメオタクな俺は、親しい友達も居なければ、当然、彼女なんて良い人も居ない。
辛く寂しい学校生活を経て、今年ようやく勤めた会社は、何の因果か超ブラック企業。
更に同僚からもハブられ、上司にも毎日嬲られる始末。
良いことも愉しいことも何ひとつなく、何も解らないままに、二十歳に満たない短い人生を、今日、終えるのか……。
そんな嫌なことを思っている間も、喧しく鳴り響いてくれやがる俺のスマホ。
「この音を聴きつけて救出してくれると良いんだけど……」
そんな風に考えて、壊れて鳴り響いていることに感謝した、まさにその時だった――。
一際、大きな爆発音が轟き、床全体が大きく揺れるのだった。
直後、伸し掛かっていた乗客らが更に重みを増し、俺を急激に圧迫した。
今のであばら骨が折れたのか、鈍い衝撃と鋭い焼けるような痛みが俺を襲う。
「ゲホ……」
折れたあばらが突き刺さったか、内臓を潰されたのかは知らないが、俺は口から吐血した。
血の味が口内に広がってむせ返る。最早、息をするどころではなくなった。
焼けるような痛みも重なって、意識が次第に遠退いていく――。
『このまま死にたくなければ念じなさい――無念、と』
(幻聴か? 何を念じろと? このまま死ぬのが、悔しくて堪らないって?)
さっき見たメッセージと同文の内容が、今度は抑揚のない機械じみた合成音声で、ダイレクトに頭に響いた。
「誰だって……死にたくは……ねぇだろ……普通? 俺だって……死にたくない……聴くまでもねぇわ……阿呆か?」
ぼんやりと疑問が浮かび、最後に悪態を吐いたところで、そのまま意識が途切れかけた。
その時――。
――――――――――
世界の行く末は、俺の頑張り次第?
人々が忙しなく行き交う町を歩き、今日も仕事へと出掛ける。
駅に着くと、真面に歩くのもままならない、有象無象の人混みに嫌気が差す。
毎朝のことだと諦めて、人混みを掻き分け改札口へと急ぐ。
ホームに辿り着くと、電車に乗る順番待ちの乗客で長蛇の列だった。
うんざりだと思う前に電車が到着する。
そして今日も今日とて通勤ラッシュの時間帯に、押すな押すなの鮨詰め状態に陥る。
俺は何処にでもある日常、いつもと変わらない朝を、今日もしがなく過ごす筈だった――。
◇◇◇
「何が……起きた……?」
気付けば人が折り重なるように伸し掛かり、呼吸が覚束ないばかりか身体中が痛い。
そこら中から老若男女の呻き声と、悲鳴に怒号が耳に届く。
外からは爆発音。その度に大きく揺れてビリビリと振動が伝わってくる。
煙が充満し焦げ臭いうえ、錆びた鉄の臭いが入り混じった、火葬場独特の嫌な臭いも鼻についた――。
(電車……事故?)
そんな風に感じている俺は、身動きが取れない。
身体に伸し掛かる感触から察するに、どうやら折り重なる乗客らの下敷きになっている模様。
「くっ……伸し掛かってる人! 早く退いて!」
腹の底から怒号をあげたが、ピクリとも動いてくれやしない。
“ キュイン、キュイン、キュイン―― ”
喧騒の中、妙な電子音が鳴り響いているのに不意に気付く――。
(なんの音?)
音の発生源を耳で追うと、腰のポーチに入れてある俺のスマホから鳴っているようだった。
伸し掛かる人が邪魔で取り出し難いが、なんとか取り出せた。そして割れていた画面を見る。
「壊れた? 違う! なんだっ⁉︎」
目を見開き、スマホの割れた画面を見入ってしまった。何故なら――。
“ このまま死にたくなければ念じなさい――無念、と ”
ブラックアウトした液晶画面一杯に書かれる、赤く血塗られた擲り書きのメッセージがあったからだ。
割れて液晶が機能していないんだから、当然、メールやSNSの類いであるわけがない。
「なんなんだっ⁉︎ 俺が死ぬだっ⁉︎ 冗談は大概にしろよっ!」
馬鹿馬鹿しいにもほどがあると怒り心頭な俺は、なんとかこの状況から脱出する為、押し退けようと必死に足掻く。
だがしかし。折り重なる乗客は一人ではないようで、重く伸し掛かったままビクともせず、無駄な抵抗に終わった。
「これ、たぶん圧迫死とか窒息死とか……そんなだな」
どうにもできず半ば投げやりになって、今までの人生を思い起こす――。
見た目が瓶底メガネのブサメンで、デブなボディかつ生粋の美少女アニメオタクな俺は、親しい友達も居なければ、当然、彼女なんて良い人も居ない。
辛く寂しい学校生活を経て、今年ようやく勤めた会社は、何の因果か超ブラック企業。
更に同僚からもハブられ、上司にも毎日嬲られる始末。
良いことも愉しいことも何ひとつなく、何も解らないままに、二十歳に満たない短い人生を、今日、終えるのか……。
そんな嫌なことを思っている間も、喧しく鳴り響いてくれやがる俺のスマホ。
「この音を聴きつけて救出してくれると良いんだけど……」
そんな風に考えて、壊れて鳴り響いていることに感謝した、まさにその時だった――。
一際、大きな爆発音が轟き、床全体が大きく揺れるのだった。
直後、伸し掛かっていた乗客らが更に重みを増し、俺を急激に圧迫した。
今のであばら骨が折れたのか、鈍い衝撃と鋭い焼けるような痛みが俺を襲う。
「ゲホ……」
折れたあばらが突き刺さったか、内臓を潰されたのかは知らないが、俺は口から吐血した。
血の味が口内に広がってむせ返る。最早、息をするどころではなくなった。
焼けるような痛みも重なって、意識が次第に遠退いていく――。
『このまま死にたくなければ念じなさい――無念、と』
(幻聴か? 何を念じろと? このまま死ぬのが、悔しくて堪らないって?)
さっき見たメッセージと同文の内容が、今度は抑揚のない機械じみた合成音声で、ダイレクトに頭に響いた。
「誰だって……死にたくは……ねぇだろ……普通? 俺だって……死にたくない……聴くまでもねぇわ……阿呆か?」
ぼんやりと疑問が浮かび、最後に悪態を吐いたところで、そのまま意識が途切れかけた。
その時――。
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