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第十話 任務? を終えたあとのご褒美?

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 犠牲者らのご遺体を丁重に弔ってもらったあと、ボロアパートに帰宅した俺と悪魔さま改め邪神さま。

 とりあえず風呂に入ってスッキリしたところで、汚くはないけども狭っくるしい六畳一間に置かれる丸いちゃぶ台を挟み、親密なお友達姿の邪神さまと差し向かいに座り、暢気にテレビ番組を観て寛いでいた。


 幸せってなんだろう?
 こう言う何気なさがそうなのかな? 


「うわぁ、大々的なニュースになっちゃってるよ」

 俺達が引き上げた直後の映像だろうか。
 半壊した教会を背景に、ご遺体らが燃え盛る映像が映し出され、女性リポーターが険しい表情で喧しく報道していた。

 どのチャンネルにしても、緊急特番が組まれ、最早、それ一色だった。
 ただ局によって、報道の仕方がまちまち。
 真面目な事件として報道する局もあれば、黒ミサが行われていたやら、謎の不適切な内容で報道する局もあったり。
 当然と言えば当然だけど、核心に迫る正解と呼べる報道は何一つない。

「大規模テロやら猟奇殺人やらの誤報道はまだ良いとして、不正疑惑の証拠隠滅に放火って……ゴシップにしてもちと酷ない? 善良な市民を洗脳、従順な信者にして搾取とか……ないない。そんなあり得ない吊し上げ方で、面白おかしく報道しての視聴率稼ぎって……最低だな。ないわ」

 あまりの内容の酷さに呆れた俺は、梅昆布茶を啜りつつ悪態を吐く。

「仕方あるまい。我も向こうも隔離は勿論、認識阻害、隠蔽措置諸々など施しておらん。そもそも既に手遅れであったし、我もそこまでは面倒見きれぬ。後先考えず暴挙に出た天使らが全面的に悪い」

 ちゃぶ台の上の煎餅せんべいを摘み、梅昆布茶の入った湯飲みを煽っていた邪神さま。
 呆れた物言いかつ興味なさげに言い捨てる。

 今気づいたんだけども邪神さま。
 物を食べたりしても大丈夫なんですか?
 俺の親密な友達に取り憑いている状態じゃなかった? 精神体アストラル体だとかなんとかな?
 消化器官のない人形の素体の中に、食べた物がぐちょぐちょで残ってたりしたら……おうふ。
 次に俺が腰振り運動を勤しむ時に、間違いなくドン引きになるね、うん。

「そ、そりゃそうだけどさ……慈愛あふれる邪神さまにしては、ちょっと酷い物言いだよね?」

 やっぱり梅昆布茶を啜りつつ、それはないんじゃないと意見する。

「勘違いするなよ、下僕。我は有象無象な人間なんぞ、基本的にはどうでも良いのだ。何処で誰が死のうが騒ぎになろうが、我の知ったことではない。要はこの世界の人間全てが死滅せねばそれで良いのだ。大量虐殺でない程度で、局地的に適度に死ぬ分には、寧ろ、大歓迎だぞ? 労せず魂が得られるし、負の感情も増して喜ばしいことこの上ない」

 顔色ひとつ変えず、酷いことを平然と仰る……って、人形だから表情には出ないよな。俺ながら迂闊。

「おうふ。とっても邪神さまらしい言い訳で御座いますねぇ? 俺と助けに行ってくれたクセに。更に丁重に弔ってくれたクセに」

 やや意地悪気味にジト目で見ると。

「――ブフォ⁉︎ あ、あれはだな! て、天使に襲われて増大した恐怖などの負の感情をだな! わ、我は喰いに行っただけに過ぎん! た、魂は……。えーい、もう良い! 変に勘繰るでないわ、下僕!」

 盛大に噴いて、必死に弁解するときた。

「そう言うことにしておきますよ」

 あまり意地悪するのもなんなので、俺なりに精一杯の優しい微笑みで納得してあげた。

「ところで邪神さま。ひとつお願いがあるんだけど――」

「薄気味悪い笑顔で何を申す、下僕。先に言っておくが……我に対して、身のほど知らずな願いは口にするなよ? ぞ?」

 そのままの笑顔で言おうとするも、やや喰い気味に謎の台詞。
 身の危険? そんなのを感じたのかは俺の知るところでは全くないけども、何故か俺からやや距離を取る邪神さま。

「身のほど知らずって……しかも呪うのではなく祝われるの? 何、その新手の呪い方? じゃあ良いよ」

 なのでプイっとそっぽを向いて、ちょっとイジけたフリをしてみると。

「――も、申してみよ、下僕。少しばかり譲歩してやってもやぶさかではない。と言うか、気になるではないか」

 慌ててそう言ってくれるときた。
 やっぱり優しいですよ、邪神さまは。
 世間一般での悪魔のイメージとはかけ離過ぎてて、俺には邪悪の化身だとは、到底、思えませんよ。

「一緒に寝て――」「却下だ」

「じゃあ膝枕――」「却下だ」

「じゃあ――」「全て却下だ」

「――ケチ……ちょっとくらい……」

 タコさん唇にしてブー垂れる。

「くっ……相変わらずキモいな。その面で内股モジモジとは。流石の我も嫌な油汗が噴き出て蕁麻疹が出るぞ?」

 いや、出ないでしょ? あとディスり方がパないっす……。

「うわぁ……過酷な言われようだな、俺。ちょっと泣いて良いかな? 部屋の隅っこにいって、のの字書いて、シクシクと泣いてて良いかな? いじけてて良いかな?」

 ちゃぶ台から立って、言葉通り実行。
 邪神さまをチラチラ見ながらね?

「――くっ……。まぁ、千歩譲って……て、手ぐらいは……に、握ってやろう……先の褒美だ。悦れ、下僕」

 そっぽ向いてはいるも、そっと手を差し出してくれるってんだから。

「やった! うひひ」

 もう可愛い仕草に我慢できず、思いっきり飛びついちゃいました。

「くっ……存外にキモ過ぎであろう! 手だけと言ったであろう! わ、我の胸に埋まろうとするな! 更に頬擦りは寄せ、頬擦りは! ぬぉ! 何と言う濃さの負の感情を垂れ流しておるのだっ⁉︎ ぬぉお⁉︎」

 とかなんとか。

 抱きつこうとする俺に対し、必死に抵抗する素振りはするも、拒絶はせずに嫌がらず戯れてくれた優しい邪神さま。
 もしも本気で嫌がってたり不快に思われていたら、まず間違いなく俺がこの世から消えてなくなってただろうから。

 相手は正しく人じゃないけども、家族以外の他人にこんな風に相手してもらえて、心の底から嬉しかった。
 魂半分を持っていかれて魔法少女? になって良かったなと改めて思ったり。
 俺の荒んだ人生も、まだまだ捨てたもんじゃないなとか本気で思ったり。

 邪神さまらしくない邪神さまに、ちょっと……いいや、かなり癒された。



 ――――――――――
 世界の行く末は、俺の頑張り次第?
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