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第伍章 混沌の胎動――謎の孤島編。

佰陸拾肆話 騒動、其の参。

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 少女の不適切発言を弄って、悠長に何ぞかの漫才を繰り広げる斗家真美女軍を他所に、静かに取り囲んで来た不遜な輩達。

「アンタ達……もしかして凄腕の冒険者とかか? だったらさっきは済まなかったな。お詫びと言っちゃなんだが、アンタ達に楯突いたその少女は、オレらできっちり説教しておくわ……それで手打ちってことで、な?」

「そうそう。アンタ見かけに寄らずブイブイ言わしてんだろ? 凄げぇ美人さんばっかりだもんなぁ。……へへへ、オイラも肖りたいぜ」

「アンタ達とオレらでWinWin両得ってことでさ、ひとつ頼むわ。……へへへ」

 とかなんとか。

 見るからに醜悪な下衆い顏で、不適切極まりない考えを隠そうともせず俺に何ぞ言ってくる。


 あのな、その強引極まりない理屈、ナニ?


 下衆な輩が言ったことを耳にした途端、更に下卑た笑いのヤツが数人、品定めするが如く舐め回すように見やりつつ、じわじわとにじり寄ってきやがった。


 ほれ、言わんこっちゃない。


 こんな可愛いらしい子を、漢臭いごっつい連中に身柄を引き渡したら、ナニされるか解ったもんじゃない――否、未来の宣う荒筋だっけ?
 そんな感じにナニされるのは間違いねーのな。
 このままだと間違いなく本人の宣ってる不適切な事態、未来宣う結果になりかねんのな、うん。

「――君はここを出るまでは俺達と一緒に行動しろ。信用……まではしないにしろ、アイツらに連れて行かれるよりは良いんじゃね? あとで逃げるもナニするのも自由にして良いってのは、俺がこの場で約束し保証するから……つっても、今だけでも信用してくれなければ意味ないんだがな?」

 放って置くのは忍びないので、ちょっと苦笑いで頭をポリポリ掻きながら、承諾し易い打算案を提示してみることにした俺。

「――あんな漢臭い下衆い連中に連れてかれたら、官能小説やパパのエロゲみたいに、美人の生まれを一生後悔することになるのだけは間違いないね……イーッヒッヒッヒ」

 何処ぞの魔女なモノ真似を披露しつつ、不適切極まる薄ら笑いで、何ぞな嫌な台詞をポロリと吐かした未来。

「――ヒィ!」

 当然、血の気が引いて真っ青に蒼褪める少女。

「また俺のパソコン勝手に漁ってたな? ま、見られて困るモノでもないし良いけどな」

 官能小説もだが、偶に広告に入る頭文字HやGな紳士ゲーとか漫画なアレらは、俺的に言うと娯楽作品の一つの完成形だと思ってるからな。

 紳士向けな内容ばかりでもない、実に良い作品が結構沢山あったりするんだよな~。
 立ち絵とか凄い綺麗な作品とか。

 ただな~、残念なことに多くの一般のヒトには属性が合わず、受け入れてもらえない方が多いってだけなんだよ……勿体ない。

 未来も見た目は中学生だが、実際はきっちり成人してるので、読もうが観ようが遊んでようがなんら問題ない……と思うことにしておいてやろうかな、うん。

 しかし未来。
 良いのかそんなで?
 美少女なのに……って単語は、あえて抜いておいてやるけど。

「お、お姉ちゃん! もっと……やんわりオブラートに包んで、ソフトに言ってあげても良くない?」

 焦りつつ困った複雑心理な顔で未来を叱咤する、斗家唯一の良心回路なアイ。

「――アイ。この子はボク達に敵対したんだ。あまつさえパパを侮辱する言葉を言いたい放題。本来なら今直ぐにボクが引導を渡したいのが本音」

 そう言いながら、襲撃組の少女を睨みつける未来。
 魔眼にはなってはいないが、恐ろしいほどに凄い威圧を纏って。


 別の言い方をするればだ。
 殺ろす気と書いて――殺気とも言う。


「――でも、パパが助けるって言ってるんだよ? なら、ボクのこの怒りは収めてパパに倣って――君を助けるつもりだけど?」

 だがしかし。
 スッと目を瞑って再び開けた瞬間、恐ろしい威圧が霧散した。
 何ぞ美少女らしい含みのない素敵笑顔で手を差し伸べる未来。

 但し。
 真面なことを言っている風でも、態度は演劇風に大袈裟で仰々しく巫山戯ながら、で。


「未来、お前な――」

 その巫山戯た態度を叱責してやろうと言い掛けたその時――。

「オレらを無視して、ナニを勝手に決めてやが――」

 下衆野郎の一人が傲慢な態度になって口を開いた。

「あ? ――ナニか文句でもあんの?」

 下衆い漢達の発言が言い終わる前に、睨みつけ威圧を纏う未来が遮った。
 例の魔眼になってはいないにも関わらず、さっきよりも息苦しさ増し増しのんごい威圧で。

「――ブサイク面のお兄さん達、未来の仰る通りでしてよ♪」

 絶賛、引っ付き虫と化していた最妃までもが、未来の後押しをする。
 慈愛溢れる怖い笑顔で威圧を掛け、徐に腰から抜き放った俺的ウィップを地面に打ち鳴らし、猛獣使いが如く威嚇したのだ。

「貴方達……良い度胸してるわよねぇ。もう死んじゃった方が世の為、ヒトの為、女の為、アタシの為よ?」

 更に妹的美少女形態のなんにも威圧を持たない婆ちゃんまでもが、ヤンキーの兄ちゃん的顎がシャクレ気味の表情になってしゃしゃり出る。
 当然、迫力もナニもあったもんじゃない。
 サムズアップから後ろの二人に親指を立て、コイツらが黙っちゃいないよ! 的に他力本願で煽る始末。


 なぁ、婆ちゃん。
 良いのかそんなで?


 相手は一般人……ってわけでもないだろうけども、ノウではなく正しくヒトには違いない。
 ちょいと、やり過ぎと違くね?
 そんな恐ろしい威圧――殺気を真面に打つけたらな、泡吹いて失神、或いは漏らしちゃうぞ、きっと。
 実際、コレでも随分と押さえてはいるんだろうけどもさ……。

「うっ……」「くっ……」

「ああ……綺麗なお花畑が――」

「ああ……ママ――僕もそっちへ――」

 あちゃ~、言わんこっちゃない!
 後ろの数人が泡吹いて倒れたんですけど⁉︎
 倒れる拍子に何ぞ妙なことを呟いてるヤツも居たけど……これ大丈夫か?



 ―――――――――― つづく。
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