宝環戦士メダリオン ~変身ヒロインに対するえっちな展開が終わらない、ただひとつの原因~

蟹江ビタコ

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第一章

11、話し合う以前の問題

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 屋上の扉から、水色ウサギのツクヨミが飛び込んできた。それを目にしたミラが、慌ててツクヨミを受け止める。

「ヨミくん、見つかったら騒ぎになるから、鞄から出てこないでってお願いしてるのに」

「そんなこと言ってる場合じゃないんだぴょん! 例の忍者野郎が、“メダリオンを出せ”とか言って駅構内で暴れてるらしいんだぴょん!!」

 ツクヨミの言葉に驚いたのか、ミラの双眸が見開いた。

 忍者野郎。脳裏に浮かぶのは、もちろんセルジュの姿だ。わざわざ指名してくるとは、いったいいかなる了見なのか。

「急ぎましょう。このままじゃ、取り返しのつかないことになっちゃう……きゃっ」

 ミラは立ち上がろうとしたようなのだが、どういうわけか体勢を崩し、可琳かりんの凹凸のない胸に倒れこんだ。

「わぉ。どったの、ミラちゃん。だ……」

 大丈夫か、とたずねるよりもはやく事態を察してしまい、可琳の口は『だ』の形のまま塞がらなくなってしまった。
 抱き留めたミラの身体が、異常なまでに熱い。火照っているというレベルはとうに超えている。

「ご、ごめんなさい……なんだか、私、カラダがヘン……」

 か細い声でそう訴えてくるミラの表情を目の当たりにし、可琳は背筋が震え上がった。
 ミラは先ほどにも増して頬を紅潮させ、喘ぐように呼吸し、瞳を潤ませている。

 明らかに発情している女の顔だった。

(うへへへへぇ……その顔めぇっちゃ好きぃ……!)

 思いも寄らぬところで欲情に冒されたミラの姿を目の当たりにし、可琳も顔をだらしなく綻ばせた。しかしこの顔を見せるわけにもいかず、可琳はミラが俯いている隙に、緩み切った表情筋に喝を込める。
 それにしても、ミラのこの突発的な身体の変異は何事だろうか。

「も……もしかして、薬の影響が出てるんじゃないかぴょん……?」

 薬、という単語がツクヨミの口から漏れると、屋上は耳に痛いまでの静寂に包まれた。
 ミラがセルジュに飲まされたという媚薬。効果は未知数とのことだったが、持続性のあるものだったらしい。それがこのタイミングで再発した、と。

 全身を軽く震わせるミラが、可琳にすがる。

「ど、どうしよう、可琳さん……私、こんなんじゃ、もしものとき戦えないよぉ……」

 どうやら可琳が思う以上に、ミラは肉欲の炎に煽られていて身体の自由もままならないらしい。これではメダリオンに変身して駅前に急行するなど、まず無理だろう。
 しかし可琳は、苦しむミラを余所に下卑た思考に頭を巡らせていた。

(どーぉやって、ミラちゃんと忍者さんにえっちしてもらうかなぁ。ミラちゃん、イイカンジに仕上がってるから会わせるだけでイケそうなもんだけど……駅だもんなぁ)

 前回は屋内ゲームセンターだったが、今回は屋外も屋外、大規模な駅という、大勢の人がひしめき合う場所が舞台となる。異星人セルジュがどのような倫理観を有しているのか定かならぬところだが、絶滅の危機に瀕しているとはいえ、さすがに大勢の目に晒される蒼天の下で事に及んだりはしないだろう。おそらく、たぶん。

 なにより、この状態のミラに『いいから現場に行こう』と強いるのはあまりにも不自然だ。ツクヨミも、『まさかミラを連れて行くつもりじゃないだろうな』と言わんばかりのジト目で可琳を見ている。

 ミラとセルジュのふたりを引き合わせるのは、かなり難しそうだ。
 ならば今回は、下準備に徹することにしよう。今後、ミラとセルジュがごく自然な形で性交できるように。ふたりの美しくもイヤらしい情交を鑑賞するためとあらば、どんな苦労や痛みもいとわない。そう決意して、可琳は一点のかげりもない満面の笑みを咲かせて見せた。

「心配するない、私が忍者さんと話してみるよ! ミラちゃんはちょっと休んでなさい」

 可琳はひとまず、当初の予定通りセルジュとの話し合いを試みることにした。
 地球侵略を中止してもらい、その後でミラと引き合わせるもよし。もしも交渉が決裂したら、そのときはそのときに考える。なにはともかく、駅で暴れているというセルジュを止めなければ。すべての話はそこからだ。 

 言うが早いか、可琳はすっくと立ちあがり、パーカーのポケットから赤く輝くメダルを取り出して高らかに叫ぶ。

「ルビーメダル、インストール!」

 胸に当てたメダルが、赤い閃光を放ち可琳を包み込む。

「そいじゃ、フェーちゃん今日はお留守番よろしくね! 行ってきまーす!」

 ルビーメダリオンへと変身した可琳はフェーに後のことを託し、屋上から飛び立って行った。





 セルジュが暴れ回っている、と聞いていたものだから、ルビーは駅ビルの倒壊や、最悪、死傷者が出ていることも予想していたのだが。
 いざ現場に到着してみれば、駅ビルは無表情でそびえ立っていたし、人も溢れかえっており、いつもと変わらぬ賑わいを見せている。

 ただひとつ違っていることと言えば、駅構内に設置されている巨大な時計台の前だ。この街で屈指の待ち合わせスポットでもあるこの時計台の周りは、いつでも人がごった返しになっている。だが、今日は時計台を中心にしつつも、そこから少し離れたところで円を描くように人垣が出来上がっていた。皆一様に、不安げな表情を顔に貼り付け、時計台の様子を伺っている。

 ルビーが人の群れを割って時計台の前に出ると、いた。
 真っ黒い忍装束を身に纏う男が。いかにもチンピラといった風情の青年を、片手で掴み上げた状態で。

 ルビーはその光景に臆することもなく、おどけた調子で黒装束の男──セルジュに声をかけた。

「やっほー。ご指名ありがとうございまーす、ルビーちゃんだよー!」

 場違いなまでに陽気なルビーの声に反応して、黒い頭巾がこちらを向く。やや間を置いて、セルジュは掴んでいたチンピラを物のように放り投げた。そこには似たような背格好の青年らがすでに数十人ほど倒れており、警備員と思しき男性もちらほらと転がっている。全員が全員ぐったりしていて、ぴくりとも動かない。

「……お前か」

 やはり黒頭巾で顔が隠れていて表情は読み取れないが、セルジュの声にはどことなく落胆の色を含まれていた。
 せっかくこうして現れたというのに、思っていたよりも反応が薄く、ルビーは拍子抜けする。

「あれー? 忍者さんが、メダリオンを出せーって叫びながら暴れてるっていうから、満を持して登場したんですけどー?」

 ルビーはてっきり、セルジュが自分と再戦したいがために暴れまわっていたのだと思っていた。
 ゲームセンターでの戦いを謎の声に止められて、かなり不服そうだったから。だから事件を起こしてメダリオンを誘い出したのだと、そう思い込んでいたのだが。

「人聞きの悪いことをいうな。シリウスから、地球人を襲わぬよう指示されている。腹立たしいことにな」

 そうはいうが、現に三十人近くの人間がセルジュの周りに倒れている。さっきの様子から考えるに、皆、セルジュに打ちのめされたのだろう。ルビーが訝しげに目を細めていると、セルジュはそれに気づいてか、倒れている人たちに視線を流した。

「こいつらにしたって、俺がメダリオンの所在を聞きまわっていたところに喧嘩を吹っかけてきたから、買ってやっただけのことだ」

「……私たちのことを聞きまわってたぁ? その格好でぇ? ぶふっ」
 
 その光景を想像し、ルビーは盛大に吹き出した。忍者の格好をした男が街中を闊歩するという絵面の、なんとシュールなことか。そこで転がっているチンピラ風の男たちも、コスプレして街を歩いている頭のイカれた奴がいると思って、ちょっかいを出したのだろう。セルジュが地球侵略を目論む、異星人であるとも知らずに。警備員の方は、往来で始まった喧嘩を止めようとして巻き込まれたといったところか。気の毒なことだ。
 どうやら、どこかで情報がねじ曲がり、セルジュが暴れているということになってルビーたちに伝わったようだ。

「女の方はどうした」

 セルジュに不機嫌ぎみに問われ、ルビーははたと真顔になる。
 自分も女であることはひとまず置いておくとして、セルジュのいう女とは、アクアのことだろう。

「なんだー、聞きまわってたって、アクアちゃんを見つけるため? なになに? アクアちゃんに用事なの?」

「用向きもくそもない。あの女は俺のものだ、さっさと差し出せ」

 セルジュの不遜な物言いに、ルビーのこめかみがぴくりと痙攣する。

「いやいや、忍者さんごときにあげられるわけないっしょ。せいぜいそのイケメン面と下半身で、アクアちゃんを悦ばせるぐらいしか使い道ないってーの」

 これがセルジュにアクアを抱かせようとしている人物のセリフなのだから、タチが悪い。
 肉欲と精神的な結びつきは、必ずしもイコールではない。ふたりが肉体からだで繋がるのは良しとしても、セルジュがアクアの恋人や伴侶として相応しいかどうかは、また別問題である。言動に多少、いや、かなり問題はあれど、ルビーを突き動かす原動力は、いつだって『保刈ほかりミラ及びアクアの幸せのため』だった。
 常人には到底理解しがたいが、これがルビーという人物だ。

「それともなぁに? 忍者さんごときが、アクアちゃんを幸せにしてくれるわけェ? 生涯かけて幸せにするんだーって気概があるなら、アクアちゃんを渡さないでもないですけどぉ?」

「あの女に俺の子を産ませる。それ以外には何もない」

 セルジュは、アクアを子供を産む道具としか考えていないようだ。
 こんな非人道的な男に、アクアを渡せる道理がない。いや、そもそもそんな考えでアクアを欲していることすら烏滸おこがましい。
 なんとか静けさを保っていたルビーの怒りは、ついに激しく燃え上がった。
 
「やっぱダメだテメーは、お話になんねぇ! テメーはアクアちゃんを気持ちよくする肉棒でしかないってことを自覚しなァ!! くらえ、“フェニックス・ブロー”!!」

 ルビーは炎を纏った拳でセルジュに殴りかかる。電光石火と呼ぶに相応しい、目にも止まらぬ猛攻だったが、セルジュは助走もなしに高く跳躍し、これをいともたやすく避けてしまった。

 ──ドゴォォォンッッ

「あ、やっべ」

 避けられたルビーの熱拳は、セルジュの背後にあった時計台に見事命中する。巨大なオブジェは、真っ二つに割れて駅構内に沈んだ。

 辺りがシンと静まり返り、ルビーも一瞬にして我に返る。セルジュにちょっと思い知らせるだけのつもりが、器物を破損してしまった。正義の味方という立場上、無意味に破壊行動するのはいただけない。

「やはりお前を平伏せねば、あの女が手に入らないというわけだな。ちょうどいい、お前との雌雄を決さなければならないと思っていたところだ」

 声の方を振り返ると、上半身を捻りながら垂直に飛び上がるセルジュの姿が目に入った。遠心力を用いての強烈な飛び回し蹴りを叩き込まれ、ルビーは二メートルほど吹っ飛んでしまう。しかし寸でのところでガードが間に合い、辛うじて直撃を免れた。空中でくるりと身体を回転させ華麗に着地し、颯爽と立ち上がる。

 ところが、ルビーが迎撃態勢を整える間もなくセルジュは迫ってきていた。

「ちょっと待ってちょっと待って! 私は話し合いに来たんだよ!」

 息もつかせぬ連続打撃をかいくぐりながら、ルビーは当初の目的を思い出していた。アクアに託された、ジェバイデッド人との話し合いという目的を。
 だが、時すでに遅し。

「這いつくばってこうべを垂れろ。そしてそのまま、自分の女が俺に凌辱される姿を見ながら憤死するがいい」

 セルジュは闘争心に火がついてしまったようで、まるで聞く耳を持ってない。それでもルビーは必死に食い下がる。

「いやもう、それは大歓迎なんだけどさ! なんでそこまでアクアちゃんに執着するかなー! 子供作りにきたんでしょ? 他の女の人でもいーじゃんっ」

 彼ら、黒の帝国ジェバイデッドの最大の目的は種の存続。実も蓋もない言い方をすれば、種付けさえできれば相手は誰でもいいはずだ。
 それなのに、なぜかセルジュはしきりにアクアを求めている。

「……それが可能なら、わざわざ捜しまわったりなどするものか!」

 他の女でいいだろう、という一文が癇に障ったのか、セルジュの攻撃がいっそう苛烈さを増した。受け損ねたルビーはついによろめいて、そのまま駅構内の床に膝をついてしまう。
 すぐさま立ち上がろうとしたが、不穏な気配がそれを留めた。
 弾かれるように顔を上げると、眼前にセルジュが立っていた。右脚を、ほぼ真上に振り上げた状態のセルジュが。
 なにをされるか本能で感じ取ったルビーは、体勢が不十分ながらも後方に跳んだ。

 セルジュの右脚が、一切の躊躇ちゅうちょもなくギロチンの刃のごとく無慈悲に振り下ろされる。ルビーの頭蓋ずがいに直撃するはずだったかかと落としが、地面を踏み抜いた。そこから駅構内の床に、蜘蛛の巣状の亀裂きれつが波紋のように広がっていき、地盤が隆起していく。
 塊と呼ぶに相応しいコンクリート片が、周囲の人々の頭上高く舞い上がった。あとは重力に従い、落ちて来るのみ。
 
「うわああああああ!!」
「きゃあああああ──!」
 
 瞬く間に、駅が阿鼻叫喚の渦に呑み込まれてしまった。ルビーの背後で、逃げ惑う人々の泣き叫ぶ声や物が壊れる音がけたたましく飛び交っている。
 だが、ルビーの視線はセルジュのみに注がれていた。しかも、なぜか楽しげな視線が。

「いーこと思いついちった」

 ルビーは舌なめずりすると、再び拳に炎を纏わせて構えを取り、そして。

「よっしゃ、ってやるぜ! かかってきなァ!」

 高らかに戦闘開始を宣言した。
 
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