宝環戦士メダリオン ~変身ヒロインに対するえっちな展開が終わらない、ただひとつの原因~

蟹江ビタコ

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第一章

17、助けてほしい

「あ、アクアちゃん、大丈夫?」

 意識を取り戻したアクアに、ルビーは優しく声をかける。事態を呑み込めていないようだが、体力はそれなりに残っているようで、アクアはルビーに寄り掛かりながらも自分の足で地に立った。

「そっちのお嬢さんの目が覚めたか、ちょうどいい。改めて、挨拶しておこう」

 シリウスが、メダリオンのふたりに向かって恭しく、紳士的に頭を下げる。

「俺は鍛冶師ブラックスミスのシリウス。こっちは暗殺者アサシンのセルジュ。俺たちは黒の帝国ジェバイデッドの幹部だ、よろしく。君たちは、ジェバイデッドの事情について、既に知ってくれていると見受けるが?」

 ルビーとアクアは、互いに顔を見合わせた。地球を侵略しにきたという割には、シリウスの態度はかなり柔和で落ち着いている。セルジュのような横暴さも攻撃性も感じられない。
 アクアはルビーの目をじっと見つめ、なにか決心したかのように頷き、ジェバイデッドのふたりに向き直った。

「すべての女性が死滅し、種族として存続の危機にあると聞いています。それで、地球の女性となら交配ができるとも」

 凌辱され、意識を取り戻したばかりで状況をしっかり把握できていないはずだが、アクアはしっかりとした口調で受け応えている。このシリウスという男ならば、当初の目的である話し合いができると見込んだのだろう。

「なるほど。実はね、母星の寿命も限界を迎えているんだ。絶滅の危機に、住処の消滅。どうやら自然とやらは、ジェバイデッドに宇宙から消えろといっているらしい」

 シリウスから新たに齎された情報は、ジェバイデッドのより深刻な現状だった。種として生き残るための、雄と対となる雌のすべてを失い、その上、住処まで失くそうとしていたとは。
 そんな絶望的な状況下にありながら、シリウスは実に淡々と説明を続けた。

「けどね、俺たちも一生命体として、ただただ死を待つってことはできないんだ。単刀直入に言おう。俺たちジェバイデッドの目的は、生き残っている全国民の、地球への移住だ」

「……それで、地球を侵略しに来たと」

 アクアが固唾を呑み込んだ。

 シリウスの言うことは、実に合理的だ。もしも地球が今のジェバイデッドと同じ逆境下に置かれたら、やはり同じように交配可能な種族と移住先を捜し求めるだろう。種としての存続を賭けて、移住先の先住民たちと戦いを繰り広げることも、止む無しなのかもしれない。

 そう遠くない未来に訪れるであろう戦闘に、心を痛めているのだろうか。アクアはきゅっと口を結んで、ジェバイデッドのふたりを睨みつけていた。
 にわかに漂い始めた剣呑な空気を払うように、シリウスが両手を振る。

「待って、そんなに固くならないでくれ。地球侵略はあくまでも最終手段なんだ。俺は、ジェバイデッドの使者として地球にきた。今から俺らの主、ジェバイデッド皇帝の意志を君たちに伝える。これは、黒の帝国ジェバイデッドの総意だ。そう思ってくれていい」

 シリウスは、懐から真っ黒い筒のようなものを取り出した。その筒の側面から光が放射状に伸びて、空中に不可思議な文様を綴り始めた。宙に投影された光るそれは、どうやら文字の一種らしい。その文字を、シリウスが口にする。

 ──親愛なる太陽系第三惑星・地球の代表者へ。我が母星ミ・ゴスと母国ジェバイデッドの危機を伝える。星の命は風前の灯で、種を後世に伝えるための半身を失い、祖国は滅亡への一途を辿るばかり。我が罪なき愛国民を救うべく、地球移住の意をここに表明する。我々は武力による地球制圧を望まない。しかし、一刻の猶予はなく、手段が日に日に狭まっていることを留意されたし。地球人には慈悲と寛大な心を持って、我々を受け入れてくれることを切に願う──

 ホログラムの文章を読み上げ終わると、シリウスはそれを投げてアクアに寄越してきた。これが、敵の大将であるジェバイデッド皇帝の意志らしい。黒筒は、その旨を記した書状といったところだろう。

「何言ってるのか、さっぱりわかんない」

 ルビーは、ジェバイデッド皇帝の言葉をほとんど聞き流していた。小難しい言葉は耳から耳へと抜けていくから困る。
 しかし、横にいるアクアはこの書状の内容を理解し、重く受け止めたのか、ますます沈痛な面持ちになっていた。

「移住を受け入れなければ、武力行使も辞さない……つまり、いずれは地球侵略に乗り出すということですね」

 要約すると、そういうことらしい。

「そんなの脅しじゃん!」

 ルビーは弾かれたように叫び、セルジュを指差した。

「女の人誘拐したり、街を壊しまくって、私をぼこぼこにして! おまけにアクアちゃんにヘンな薬飲ませて、無理やり犯して! そんでもって、移住を受け入れなきゃ、もっとひどいことするって? そんな露骨な脅しがあるかァ!!」

 確かにこれは、武力行使をちらつかせた脅しと取れなくもない。肩を震わせて憤慨しているルビーではあるが、自身も街を壊しているし、自ら望んでセルジュに痛めつけられてもいる。しかも、アクアの痴態を見たいという欲望から。自分のことは棚に置いておきながら、ルビーは交渉に脅しを用いられていることに腹を立てていた。

「……ちょっと待って、変な薬を飲ませて、無理やり犯した?」

 シリウスは右手でルビーを宥めるような仕草をしながら、説明を求めてセルジュを仰ぐ。当のセルジュは、何食わぬ顔をしていた。

「そこの女に、俺の子を産ませたいから例の薬を飲ませて犯した。それのなにが悪い」

「悪いだろ!? 相手の同意なしに妊娠促進剤を飲ませたばかりか、強姦って! お前の倫理はどうなってるんだ、母親の腹の中に置いてきたのか!?」

「俺に母親なんぞおらん!!」

 ジェバイデッドのふたりが再び口論を始めてしまい、ルビーは白けてしまった。横目でアクアを盗み見てみると、頬を赤く染めて俯いている。どうやら、セルジュから面と向かって『子を産ませたい』と言われたことに、照れているらしい。こういう反応をする辺り、やはりアクアの倫理観も少々ズレている。

「……もういい。セルジュ、お前はあとで説教だ。こっちの話が終わるまで、ちょっと黙ってろ」

 半ば強制的に話を切り上げたシリウスは、セルジュを下がらせてから、メダリオンのふたりに歩み寄った。

「あー、ごほん。セルジュの件は、俺の監督不行き届きだ、すまない。セルジュこいつの首を刎ねて、誠意のひとつでも示したいところなんだけど、こんなのでもジェバイデッドの貴重な血が流れてるからね。殺すのはちょっと。罪滅ぼしと言っちゃなんだが……」

 シリウスの背から再度、機械触手が飛び出した。大量の触手は四方八方、街の至るところへ伸びていく。
 ある触手は瓦礫を持ちあげ、ある触手はその瓦礫を元の場所に戻し。
 曲がった信号機が、歪んだガードレールが、割れた窓ガラスが、機械触手によって、あれよあれよと修復していく。まるで突貫工事だ。

 破壊し尽くされた街や駅はあっという間に、何事もなかったかのように、元の姿を取り戻した。

「セルジュの暴挙は、どうかこれで大目に見てもらえないか」

 機械触手を引っ込めたシリウスが、神妙な声色で懇願する。

「本来、うちの陛下は平和主義者なんだ。できれば武力行使を避けたいというのは、陛下の本心だよ。地球外部生命体の受け入れが、容易ではないことも重々承知している。だが、どうか俺たちを助けてほしい」

 ルビーとアクアは閉口する。ジェバイデッドは、単純な地球侵略者ではない。少なくとも今の段階では、地球に助けを求めてやってきた難民だ。なんの手違いか、セルジュが単独で女性を誘拐したり、街を破壊したりという事件は起きたが、いずれも被害は最小に食い止められている。
 セルジュはともかく、このシリウスという男は悪い人間ではない。アクアを無条件で返してくれたし、街の修繕も施してくれた。セルジュに対する叱責も的を射ており、ジェバイデッドの使者として、至極真っ当な人物だといえるだろう。
 おそらくそれは、アクアも痛感している。だからこそ、どう返答していいのかわからず、困っているようだった。

 数瞬の沈黙の後、アクアが口を開いた。

「……私も、争いは嫌です。地球に害が及ばず、あなたたちが滅亡しないで済むのなら、協力したい」

 アクアの答えを聞いて、ルビーは正気か疑った。あれだけ手酷く凌辱されておきながら、まだ助けたいという気持ちを抱いているのだから。
 しかし、相手側に戦う意志がないとなれば、アクアがこう返答するのもわかっていたような気がする。お人好しもここまでくると、国宝級だ。

「……ありがとう、アクアちゃんは優しいね。それじゃあ、その書状を、白の女王ファイブ陛下に渡してくれるかな」

 シリウスの口からファイブの名が出てきたこともそうだが、書状を渡してくれと頼まれて、アクアは驚き目を見開く。

「女王さまに?」

「太古より地球を守護してきたファイブ陛下ほど、地球の代表者に相応しいお方はいないよ。まずは、ファイブ陛下のご意向を伺いたい」

 一抹の不安が拭えないのだが、シリウスがファイブを指定するのなら、この場は素直に従うしかない。

「……お預かりします」

 アクアが書状の黒筒を大事そうに抱えると、シリウスは深く頷いた。

「本当に、ありがとう。ファイブ陛下の返事を聞くまでは、地球にも地球人にも危害を加えないと確約する。セルジュも、わかったな?」

「……ちっ」

 相も変わらずセルジュは不服そうに眉をひそめているが、それでも口を挟まない辺り、ジェバイデッド皇帝の命令には絶対服従の姿勢らしい。
 シリウスが銀槌の柄で、地面に円を描いた。地面に穴が開き、そこに青と紫のマーブルがかった油膜がかかっている。

「一か月後の、この時刻、この場所で待ってる。いい返事が得られるよう願っているよ、それじゃ」

 最後にそう言い残して、シリウスは穴の中に飛び込み、消えた。おそらくこの穴は、ルビーがゲームセンターで見たものと同じで、瞬間移動装置ワームホールの一種なのだろう。行き先は、地球におけるジェバイデッドの根城か、はたまた死を間近にしている母星か。

 その穴の縁に、セルジュも立った。しかしすぐには入らず、じっとアクアの方を見つめている。射抜くような視線に恐れを成したのか、アクアの肩が強張った。
 まさか早速、約束を反故にしてアクアを攫うつもりなのか、とルビーは身構えたが、無用の心配だったようで、セルジュもワームホールへとスッと落ちていった。

「……結局、地球こっちが協力しなきゃ戦争吹っかけてくるってことでしょ? 図々ずーずーしー」

 ワームホールが消えたのを見計らって、ルビーが口を尖らせる。

「でも、これで女王さまが少しでも意見を変えてくれれば、平和的に解決できるかも」

 書状を握りしめるアクアの顔は、ほのかに明るい。

「ないない。あの女王さまだよ? 首を縦に振ると思う?」

 ルビーがそう告げるや、アクアの眉尻が目に見えて下がった。
 
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