ウィッチ・ザ・ヘイト!〜俺だけ使える【敵視】魔法のせいで、両親に憎まれ村を追放されました。男で唯一の魔術師になったので最強を目指します〜

(有)八

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一章 憎しみの魔女

15話 かけだし冒険者の一日

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「いわく付きってなんだ?」

 あっけらかんと言うユルナに、俺たち三人は固まった。

「いわく付きってのは、良い物じゃなくてだな……住んでた人が不幸になったり、亡くなったり……とにかくあんまり良くない事が起こったってことだよ!」
「でも借主の事と家は関係がないだろ?」

 いや、たしかにそうかも知れないけど! 気分的に! なんか起こりそうじゃん?!

「リオン、カナタ……なんかこう、除霊とか厄除けの魔法ってあるか……?」
「聖女じゃないんだから使えないよ……」
「読心術と風魔法しか使えないの知っているでしょう……」

 青ざめる俺たちをよそに、ユルナはずかずかと家に入っていった。

「――おおーっ! みんな早く入ってきな! なかなか豪華だぞ!」
「……何もない事を願おう」
「そうだね……」
「オバケとかでないですよね? 私そういうの無理なんですけど……」

 重い足取りで家に入った俺たちは、きらびやかな内装に、さらに不安が募るのだった。
 家具は一式揃っていて、それもなかなかの上物だと一目でわかるぐらい豪華だ。
 いかにも惨劇とか起こりそうな雰囲気を、そこら中から感じる。

「リオン、暖炉に火を点けてくれ。少しでも雰囲気を明るくしたい」
「そ、そうだね! 【ファイア!】」

 暖炉の薪に火が灯り、部屋に明るさと暖かさが広がっていく。

「みんな酒がたくさんあったぞ! 今日はこれで宴だ!」
「ユルナ以外未成年です。しかも置いてあったお酒をよく飲もうとしますね」
「あるものは飲まなきゃ勿体ないじゃないか。リオンは付き合ってくれるよな?」
「ダメに決まってるでしょ!」
 
 不安いっぱいの入居初日は、一人を除いてテンションの上がりきらない宴会で過ぎていった。

* * *

「おはよう……」

 だめだ、どうにも落ち着かなくて全然寝れなかった。
 慣れないベッドに、と言われた家でぐっすり眠れるほど、俺は肝が据わっていない。

 先に起きていたリオンとカナタも、二人の顔から寝不足なのが見て取れた。

「おはようございます……ふわぁ……」
「おはようタクトー……」
「おはよう! みんな起きるのが早いな」

 ユルナだけは昨日からテンションが高いままだ。本人は豪華な家を安く借りられて満足なんだろう。

「さあ、ランクアップ後の初任務! タクトは冒険者としての初任務だ。気合入れていくぞッ」
「「「おぉー……」」」
「なんだよ、気の抜けた返事だな」

 俺にとっての初任務は、コンディション最悪でのスタートとなった。

* * *

 ギルドから提示された依頼から簡単そうなものを選び、俺たちはアークフィランの外側、海岸沿いに来ていた。

 依頼内容は、海岸にスライムモンスターが大量繁殖してしまったので、それの討伐というもの。
 冬の海なんか寒くて人が立ち寄らないし、これなら俺も人目を気にせず魔法を使えると思ったのだ。

「このぶよぶよしたのがスライムってやつ?」

 体を震わせながらゆっくりと動き回る、緑や青色をした生物が数十匹ほど浜辺を徘徊している。

「不純物やら汚物から生まれる半液状のモンスターだ。襲ってくることはないが繁殖しすぎると、排水管に詰まったり、触れた草木を枯らしたりする」
「どうりでちょっとわけだ……」

 襲ってくることが無いなら危険性は低いか。ちゃっちゃと終わらせてしまおう。
 試しに俺は、一番近くのスライムに向けて魔法を唱えた。

「【敵視ヘイト】!】

 ぷよよんと揺れるだけでスライムは俺に向かってこようとはしない。
 敵視がちゃんと俺に向けられてるか分からないが、一応試してみよう。

「【反抗レジスト】! ……あれ?」

 イメージしていた火の球ファイアボールが出ず、俺は困惑した。
 反抗レジスト魔法が発動しないということは、俺に敵視が向いていないということだ。
 敵視ヘイト魔法がちゃんと掛からなかったのかな?

 俺の様子を見ていたカナタが、ある仮説を話し始めた。

「もしかすると、タクトの魔法は“意思を持つ生物”にしか、効かないのではないですか?」
「んー? つまり?」
「スライムには感情も意思もありません。ただ転がって滑って、汚物や草木をむしゃむしゃ食べるだけです。そこに思考は存在しないのです」

 そ、そんな……。まさかこんなに弱そうなモンスターを、俺は倒せないのか?

 敵視を向けることも考えることもしない。ただそこに存在するだけのスライムに、俺は無力だった。

 リオンから剣を借りて切ってみたが、剣はスライムの体をするりと通り過ぎるだけで、まるでダメージを与えられていない。
 やはり魔法が伴わないとモンスターを倒すことは出来ないのだ。

 今日からスライムは俺の天敵になった。

 結局この任務では活躍できないまま、リオン達が全てのスライムを討伐して任務完了となった。

「まあ……相性が悪かっただけだよ! 元気出して!」
「そ、そうです! きっとタクトはもっとイカついモンスター相手なら活躍できるはずです!」

 今は二人の慰めの言葉が心に染みた。
 情けねぇな、俺……。

* * *

 俺の冒険者ランクが低いということもあって、受けられる任務は雑用が多かった。
 スライム討伐を完了報告した後、他にもいくつか受けてみた。

 外壁のペンキ塗り、街のゴミ拾い、ティッシュ配り、庭の手入れ……などなど。

「……って、バイトじゃん! やってること全然、冒険者じゃないよこれ!?」
「まぁまぁ。最初はそんなものだよー」
「私たちも最初は婆さんの肩たたきから始めたものだ。いやー懐かしいな」

 任務ってもっと華々しいもんだと思っていたけど、想像よりも地味なんだな……冒険者って。

 街中を動き周り、流石に疲れが出てきたところで今日の仕事は終了となった。

「そういえば、居住カウンターの人に聞いたんだが」

 帰りの道中、ふとユルナが思い出したように話し出す。

「いわく付きの内容なんだけど、前に住んでた冒険者が……」
「――ッいいから! 何も言うな!」
「いや、でも……」
「知らなくて良いことも世の中にはあるんだ! あの家には何もない! それでいいんだ!!」

 せっかく忘れようとしているのに、内容を知ったら意識してしまうじゃないか!
 ユルナは言わせてもらえなかった事で不満そうだったがこれ以上、睡眠が削られるようなことは御免だ。

* * *

「じゃあ、私達は先に寝るね」
「ああ、おやすみ」

 日付が変わる頃に三人は二階の自室へと上がっていく。
 カナタから『タクトは二階侵入禁止』を言い渡されたので、必然的に一階の部屋が俺の自室となった。

 部屋にはベッドと机、大きな書棚が置かれており、前の冒険者の物なのか難しそうな本が沢山並んでいる。

 適当にその内の一冊を手に取って開くと、魔法に関しての指南書のようだ。
 これは魔法の勉強に丁度いいな。覚えても俺には使えないだろうけど。

 パラパラとページを捲っていると、不意に玄関の方から物音が聞こえた。
 気のせいだろうと特に気にしないでいると、だんだんと物音が大きくなっていく。

 ドンドンドン ガチャ ドンドン

 部屋にある時計を見ると、時刻はもうすぐ深夜一時を指そうとしている。
 こんな時間に来客があるわけがない。

 一向に止む気配がない音の正体を探るため玄関の様子を見に行くと、鍵のかかった扉のドアノブが、ガチャガチャと音を立てて捻られていた。

――いやいやいや。嘘だろ? 泥棒?

 その時、ユルナの言いかけていた言葉が脳裏をよぎった。

 『いわく付きの内容なんだけど、前に住んでた冒険者が……』

 ……まさか本当にじゃないよな……?

 リビングに置かれていたリオンの剣を借りて、ゆっくりと玄関に近づく。まだドアノブは動いている。
 もし泥棒なら、俺が三人を守らなければ……!!

 意を決して鍵を外し、俺は勢いよく扉を開けた。

「だ、誰だ!!」
「――んがッ!?」

 開かれた扉は向こう側にいた人物に直撃したようで、その人は額を抑えてうずくまっていた。

「……いったぁぁ……」
「え? あの……どちら様でしょう?」
「――ッどちら様はこっちのセリフだ!! ここはだぞ!!」

 額を抑え涙目で怒る人物には見覚えがあった。思わずを口に出してしまう。

「し、深緑の魔女?」
「むっ? 貴様が何故私の家に!? というか、その名で呼ぶな! 私の名前はリーフィリアだ!!
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