グリム・リーパー 〜死神と呼ばれる男〜

くろとら

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第1章 旧校舎の怪奇

第2話

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「ねぇ、葵ー!!これから、穂乃果達と一緒にカフェに行くんだけど、一緒に行かない?」

「あっ、ごめん!!これから、行きたいところがあるから今日は無理!!」

「りょーかい!!じゃ、また今度一緒に行こうね!!」

「うん!!」

大学の講義を終えた葵は友人の栗山千歌からの誘いを断り勢いよく大学の教室から飛び出して行った。
大学の廊下を走っている葵に喚起の為に全開に開けられている廊下の窓から入り込む外の冷たい風が襲いかかっていた。
葵の今現在の服装は白のTシャツの上にハイネックのセーターと言うまるで秋のコーディネートをしていた為外の冷たい空気が当たり葵は震えていた。

葵は大学の廊下を走りながら外の冷たい風に当たりながらこんなに寒いならしっかりと天気を確認してもう少し厚着をしてくれば良かったと若干の後悔の念を抱いていた。

外の冷たい風に当たり震えながら大学の廊下を走っている葵は自分が所属している楽器・合唱サークルの先輩である吉本春香から教えてもらった人物のもとを尋ねる為に北校舎の二階奥にある空き教室に向かっていた。
葵が今現在向かっている北校舎は中央校舎や南校舎とは違く二階建てになっておりほとんどの教室が空き教室として使われているだけだった。
この北校舎は大学側がサークル活動をする学生達の為に建てた校舎の為現在複数の学生達がサークル活動の部室として空き教室を使用していた。


『ミステリー同好会』


葵は目的地である空き教室の前に到着した。
そんな空き教室には「ミステリー同好会」と言う名前が書かれているネームプレートが付けられていた。
葵は二、三度ネームプレートの名前を確認した後空き教室の扉を数回ノックをしてみたが空き教室の中からは何一つ返事は聞こえてこなかった。
葵は更に強く扉を数回ノックをしてみたがやはり空き教室の中からは何一つ返事は聞こえてこなかった。

「(う・・・うーん、こうなると仕方ないよね・・・)」

葵はそんな事を考えながら空き教室の扉を開けてみることにした。
葵は空き教室の扉を開けて中の様子を確認してみると空き教室の正面に置かれている黒色のソファの上で横になっている黒髪の男と目があってしまった。
どうやらこの男は葵が扉をノックした音で目を覚ましてしまったようで眠たそうな目を擦りながらソファから起き上がり扉を開けてすぐのところに居る葵を見つめた。

「あ・・・あのー、すいません。今お時間とかは大丈夫でしょうか?」

「・・・・・・別に大丈夫ですけど、話を聞く前にその開けている扉を閉めてもらえないでしょうか?外の冷たい風が流れ込んで来て寒いので」

「えっ・・・!?あっ・・・、はい!!すいません、今閉めます!!」

タイミングよく男と目が合ってしまった葵は言葉につまりながらも男に「時間は大丈夫か」と尋ねた。
男は若干の間を開けた後「大丈夫だ」と一言言った後更に続けて全開に開いている空き教室の扉を閉めるように言った。
葵は慌てて開けっ放しにしていた空き教室の扉をしっかりと閉めてから再び視線を男に戻した。
男は黒いパーカーに黒のジーンズといったまるで死神を彷彿させる上下黒色のコーディネートをし黒いフードを深く被っていた。

「・・・取り敢えず、そこに座って待っていてください」

「あっ・・・はい、分かりました」

葵は目の前に置かれている二つのパイプ椅子のうち一つのパイプ椅子に座った。
男は葵がパイプ椅子に座ったことを確認すると座っていたソファから立ち上がり部屋の隅に置かれている小型冷蔵庫の前に移動した。
男はその冷蔵庫から2Lのお茶のペットボトルを取り出し近くにある棚からは二つのコップを取り出した。
男はその場で二つのコップにお茶を注ぎ葵の元に戻り葵にお茶が注がれているコップを差し出した。

「本当はジュースとかがいいと思ったんですが、生憎この部屋には水とお茶しかありませんので、今回はお茶で我慢してください」

「い・・・いや、大丈夫ですよ!!私ジュースよりお茶の方が好きなので!!」

「・・・そうですか、なら良かったです」

葵はあまりの気まずさに耐えられなくなってしまい男から差し出されたばっかりのお茶が注がれているコップを手に取りそのまま勢いよく飲み干してしまった。
男はそんな葵を見ながら「それで、今回はどのようなご要件で?」と話を切り出した。

「え・・・えーと、お話の前にまず一つだけ確認させてもらっても大丈夫ですか・・・?」

「・・・・・・・・・大丈夫ですよ」

「あ・・・貴方が、海道零時さんで間違えないんですよね?」

「・・・はい。俺が海道零時で間違えありません」

葵にそう聞かれた男「海道零時」はお茶を少し飲んだ後にそう答えた。
何故葵は零時のもとを訪れたのか、それは旧校舎で起きた出来事をサークルの先輩である吉本美優に相談してみたところ霊感があり推理力もある零時なら相談に乗ってくれるかもしれないと言われ葵は零時のもとを訪れることにしたのだった。

「それにしても、よく俺がこの教室に居ることが分かりましたね?俺がこの教室に居ることは教授の中でも知らない教授もいるのに・・・」

「・・・実は、所属しているサークルの先輩の吉本先輩に今回のことを相談してみたらここを勧められたんですよ」

「・・・吉本?その先輩の下の名前は?」

「美優です。楽器・合唱サークルの三年吉本美優先輩です」

「あぁ・・・。美優先輩ですか・・・」

「み・・・美優先輩を知っているんですか?」

「少し前に絡む機会がありましてね」

「な・・・なるほど、そうだったんですね」

どうやら零時は葵の先輩である吉本美優のことを知っていたようだった。

「それで、君の名前は?」

「あっ・・・。私は大原葵って言います、学年は二年です」

「なるほど、大原葵さんね・・・。呼び方は葵さんでいいでしょうか?」

「あっ・・・、はい大丈夫です!!」

零時は葵に名前を尋ねた。
葵が零時に自己紹介をすると零時は即時に下の名前で呼んでもいいかと尋ねた。
すると葵は若干戸惑いながらもそれを了承した。

「それで、葵さんはどんな要件で俺のところに?」

「じ・・・実は、私の友達が今大変なことになっていて、そのことで今日相談しに来たんです・・・」

「・・・その、大変なこととは?」

「そ・・・その、実は私達数日前に女性の幽霊が出ると言われている旧校舎に私を含めた四人で行ってみたんです。そこで、私以外の美来、和也君、達弘君の三人が人間では無いなにかを見たらしく幽霊に呪われたって言って不登校になってしまっていて・・・」

「不登校・・・、それって三人ともがですか?」

「い・・・いえ。不登校になってしまっているのは美来と和也君の二人だけなんです・・・。達弘君だけは大学には来ているみたいなんですけどあれ以来私を避けているようで、私と顔を合わせてくれないんです・・・」

「なるほど・・・。それで、葵さん達は一体旧校舎で何を見たんだ?」

「そ・・・それが、私も詳しくは分からないんです・・・」

「・・・分からない?葵さん、君はその三人の友達達と旧校舎に行ったんですよね?」

「確かに、さっき言った通り私も旧校舎に行ったんですけど、幽霊を見たのは和也君と達弘君だけで、美来は幽霊に髪の毛を掴まれただけで、私自身は何も見てませんですし、何もされていないんです・・・」

「なるほど・・・。それで、その和也君と達弘君の二人は旧校舎でどんな幽霊を見たんですか?」

「・・・すいません。それも、私には分からないんです」

「・・・何故?」

「私も、どんな幽霊を見たのかが気になって、後日和也君と達弘君の二人にどんな幽霊を見たのか聞いたんですけど、二人とも顔を真っ青にして「何も見てない」と言って、私には何も話てくれなかったんです・・・」

「なるほど・・・。それで、今不登校になっている和也君と美来さんの現状はどんな感じなんですか?」

「和也君はあれから体調を崩してしまったようで今は病院に入院しています。美来の方は精神的ショックが酷いみたいであの日から自分の部屋に引きこもってしまっています」

「なるほど・・・。つまり、葵さんは和也君と美来さんの状況からして旧校舎で見たと言う幽霊が原因だと思い、俺に旧校舎のことを調べて欲しいと思っているですね・・・」

「は・・・はい、美優先輩から海道さんはそうゆう怪談系などには詳しいと聞いたので・・・」

「・・・・・・なるほど」

葵から一連の話を聞いた零時は一度葵に視線を移した後、腕を組み、目を瞑り、何かを考え始めた。

「あ・・・あのー、やっぱり無理でしょうか?」

何かを考え始めた零時を見た葵は零時の顔を覗き込むように見てそう尋ねた。

「いいえ、無理ではないですが、調査費などその他もろもろ合わせて三千円かかることになりますが、今支払うことはできますか?」

「えっ・・・!?お金がかかるんですか!?」

「まぁ、掛かりますね。もし、俺と葵さんが知り合いならば無償で調査することはできましたが、現状俺と葵さんはただの大学の同級生ですからね」

「なるほど・・・。やっぱり、そうなりますよね・・・」

「それで、どうしますか?」

零時にお金がかかることを伝えられた葵は零時同様に目を瞑りお金を支払うかどうかを考え始めた。

「・・・・・・分かりました。調査費などその他もろもろ含めてかかる三千円支払います。ですが、今持ち合わせが無いので、後払いにさせてください」

「・・・・・・後払いですか」

「ダメでしょうか?」

「いいえ、可能ですよ」

「なら、後払いでお願いします」

「分かりました。では、こちらの書類に名前をお書きください」

葵は数分考えた末調査費などその他もろもろ含めた三千円を支払うことに決めた。
しかし葵の手持ちには三千円が無かった為零時にお願いして後払いにさせてもらうことにした。
葵から「後払いでお願いします」と言われた零時は座っていたソファから立ち上がりソファの横に置かれている物入れから一枚の書類を取り出し葵の前に差し出した。

「こ・・・この、書類は?」

「言わゆる契約書と言うものです。昔、葵さんのように後払いをお願いしますと言ってきた人が結局一円も支払うこと無く」

「わ・・・分かりました、取り敢えずこの契約書に名前を書けばいいんですよね?」

「はい。少し手間になりますがお願いします」

零時が葵の前に差し出した書類は言わゆる「契約書」と言うものだった。
零時曰く昔のことが原因で後払いを頼み込んで来た人には必ずこの契約書にサインをもらっているらしい。
葵は零時が自分の前に差し出して来た契約書にサインをすることに対して同意をし契約書と同様に差し出された黒いボールペンを手に取り契約書にサインを書き始めた。

「こ・・・これで、いいんですか?」

「はい、大丈夫ですよ。では、改めて旧校舎の件について調査させていただきますね」

「はい、お願いします!!」

契約書にサインを書き終わった葵は黒いボールペンを机の上に置き契約書を零時に差し出した。
零時は葵から契約書を受け取ると葵の名前を確認した後改めて旧校舎について調査することを了承した。
葵はそんな零時に頭を下げそう言った。

「あとあの、これ私のスマホの携帯番号とLISOのIDです。もし、調査などで進展があったらここに連絡をください」

「はい、分かりました。調査なとで進展がありましたら必ず連絡しますね」

「はい、よろしくお願いします!!」

「俺も最善を尽くしますね」

葵は零時に契約書を差し出した後自分の鞄からメモ用紙を取り出し黒いボールペンを手に持ちメモ用紙に自分の電話番号とLISOのIDを書いて零時に手渡した。
葵は零時に連絡先を書いたメモ用紙を渡した後パイプ椅子の上から立ち上がり零時に向かって頭を下げた後そのまま部屋を後にした。
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