1 / 1
たった数分で
しおりを挟む
俺の家庭は、超一般的だ。
両親と祖母と妹と俺の5人で暮らしてる。
ちょっとボケ気味の婆ちゃんがいて大変な時もあるがまあ何となく生きている。
「お兄ちゃんご飯だってー」
「俺腹痛いからトイレ行ってから行くわ。
母さんに先食べといてって言っといて」
「わかった」
俺はイヤホンをつけてなにか聴きながらじゃないと落ち着かないタイプなもんで、
腹痛いのを我慢しながら
イヤホンを探してトイレに駆け込んだ。
1階から家族の騒がしい声が聞こえる。
今日は父さんが2週間ぶりに出張から帰ってきて久しぶりに全員揃ったからみんないつもよりテンションが高い。
トイレから出てイヤホンを取ると下から
「ギャー」だの「キャー」だの騒がしい声が聞こえてきた。
「何してんだ?久しぶりとはいえはしゃぎすぎだろ……」
腹痛が治まったばっかりの俺は多分ついていけないし、空気を壊すのも気が引けるからちょっと2階で時間を潰すことにした。
漫画を読み始めたらすぐに静かになった。
いや、なんか、落ち着いたというより
異様な静けさ。
ほんとに下に人いるのかよ?ってぐらい。
とりあえず俺も腹が減ったんで下に降りることにした。
「あー腹減った!
母さん、今日の夜ご飯なんな、の?」
目を疑ったよな。うん。
だって
みんな血まみれで机に突っ伏してたから。
「は……?」
床や壁、テーブル、ご飯にも血が着いてる。
「茜、大丈夫か?」
妹からの返事はない。
「母さん!父さん!!婆ちゃん!」
これ、もしかして、死んでるのか?
俺以外みんな死んでるのか?
「おい!おい!!起きろよ!」
どんだけ顔を叩いても目を覚まさない。
「うわあ!!!!」
婆ちゃんを叩いたら
口から指が出てきた。多分茜のだと思う。
たった数分でこんなことする奴、誰だよ!?
とにかくここにいたら俺も殺されると思って
一目散に外に出て隣人の家のドアを叩いた。
「助けてください!!!
助けてください!!助けて!!!」
ドンドンドンドンしていると
隣人のおばさんが出てきて、
血まみれの俺を見て悲鳴をあげた。
「住田さん、すみません、助けてください。あの、俺、トイレから出たら、家族が、なんか、」
パニクって言葉にできない。
「とにかく入りなさい」
「ごめんなさいお邪魔します」
「これで拭いて。
何があったか教えてくれる?」
「あ、ありがとうございます」
今まであったことを住田夫妻に全て話したら警察に連絡してくれた。
「状況がよく分かってないかもしれないけど、とにかく警察が来るまでゆっくりしなさいね。心を落ち着かせるのよ」
ガクガク震える俺におばさんがお茶を出してくれた。落ち着けるわけないだろ……と内心思いつつ有難くお茶を頂いた。
暫くぼーっとしていると
サイレンの音が聞こえて、警察が来た。
「君が斉田和樹くん?何歳?」
「17歳です」
「みんながご飯食べてる時何してたのかな?」
「俺はその時トイレにいて─────」
事細かに説明した。
といっても、俺はトイレにいて、出たら既にみんな血まみれだったので犯人については分からない。
「とりあえずこのまま署まで行こう」
俺に話を聞いてももう何も分からないのにな、と思いながらも警察署に行くことにした。
住田さんにはどえらい迷惑をかけた気がする。
「住田さんすみませんでした。またお礼させて下さい」
「もう、いいのよそんなのは…早く行きなさい」
「ありがとうございました」
警察署に行って、また色々聞かれた。
家族間のトラブルは~とか。
トラブルなんて無い。普通の家だから。
「んー、普通の家ねぇ」
「普通の家なんです」
小さい頃からごくごく普通の家庭だった。
働き者の父と、それを支える専業主婦の母。
頑固で近寄り難い雰囲気の爺ちゃんと
こっそりお小遣いをくれる優しい婆ちゃん。
茜の習い事はピアノとそろばんで、
俺は喘息に効くと聞いて水泳を習っていた。
年に1回みんなで温泉旅行に行った。
クリスマスはみんなでツリーを飾り付けて
こどもの日には爺ちゃんが
でっかい鯉のぼりを庭に立ててくれた。
不自由なく生きてきた。
門限もきつくないし、
テストの点が悪くても何も言われなかった。
親が厳しかったり、家庭環境が複雑だったり、
貧乏な奴が、ただ羨ましかった。
みんなそれなりに苦労してるんだろうけど
俺にはそれがない。生きてる気がしなかった。
いつも平和な家庭に、気付いたらイライラしていた。
もしかしたら、
これは
俺が望んだ家族の結末なのかもしれない。
「君…相当傷ついてるね」
「えっ?」
「涙も流さないじゃん」
「いや、傷ついてるっていうか、
未だに信じきれてない、ので」
「そっか」
俺は家族が大好きだった。
あのちょうどいい広さの家も、大好きだった。
「小林寛美さん、分かるかな?」
「俺の叔母さんです」
「小林さんが迎えに来てくれるから」
「え、あの叔母さんが?」
「うん。ちょっと待っててね」
子供嫌いであんまりいい思い出がない寛美叔母さんが
まさか迎えに来てくれるとは……
このまま父方の実家の方に飛ばされるかと思った。
「和樹」
「叔母さん、来てくれてありがとう」
「いや、別にいいよ。車で話しよう。
警察官さんどうもすみませんでした。
あとはよろしくお願いします、」
「姉さんたち、ほんとに亡くなったの?」
「う、うん」
「そっか」
叔母さんは信じられないみたい。
そりゃそうか、
親戚の家族が急に殺されたんだもんな。
「あたし悔しいから絶対犯人捕まえるよ」
「…捕まらないと思う」
「え?」
「捕まらないよ。警察の人も指紋とか、足跡とか無かったって言ってたし。叔母さんの力でどうにかなるの?」
「やってみないとわかんないでしょ」
「そうかな……」
両親と祖母と妹と俺の5人で暮らしてる。
ちょっとボケ気味の婆ちゃんがいて大変な時もあるがまあ何となく生きている。
「お兄ちゃんご飯だってー」
「俺腹痛いからトイレ行ってから行くわ。
母さんに先食べといてって言っといて」
「わかった」
俺はイヤホンをつけてなにか聴きながらじゃないと落ち着かないタイプなもんで、
腹痛いのを我慢しながら
イヤホンを探してトイレに駆け込んだ。
1階から家族の騒がしい声が聞こえる。
今日は父さんが2週間ぶりに出張から帰ってきて久しぶりに全員揃ったからみんないつもよりテンションが高い。
トイレから出てイヤホンを取ると下から
「ギャー」だの「キャー」だの騒がしい声が聞こえてきた。
「何してんだ?久しぶりとはいえはしゃぎすぎだろ……」
腹痛が治まったばっかりの俺は多分ついていけないし、空気を壊すのも気が引けるからちょっと2階で時間を潰すことにした。
漫画を読み始めたらすぐに静かになった。
いや、なんか、落ち着いたというより
異様な静けさ。
ほんとに下に人いるのかよ?ってぐらい。
とりあえず俺も腹が減ったんで下に降りることにした。
「あー腹減った!
母さん、今日の夜ご飯なんな、の?」
目を疑ったよな。うん。
だって
みんな血まみれで机に突っ伏してたから。
「は……?」
床や壁、テーブル、ご飯にも血が着いてる。
「茜、大丈夫か?」
妹からの返事はない。
「母さん!父さん!!婆ちゃん!」
これ、もしかして、死んでるのか?
俺以外みんな死んでるのか?
「おい!おい!!起きろよ!」
どんだけ顔を叩いても目を覚まさない。
「うわあ!!!!」
婆ちゃんを叩いたら
口から指が出てきた。多分茜のだと思う。
たった数分でこんなことする奴、誰だよ!?
とにかくここにいたら俺も殺されると思って
一目散に外に出て隣人の家のドアを叩いた。
「助けてください!!!
助けてください!!助けて!!!」
ドンドンドンドンしていると
隣人のおばさんが出てきて、
血まみれの俺を見て悲鳴をあげた。
「住田さん、すみません、助けてください。あの、俺、トイレから出たら、家族が、なんか、」
パニクって言葉にできない。
「とにかく入りなさい」
「ごめんなさいお邪魔します」
「これで拭いて。
何があったか教えてくれる?」
「あ、ありがとうございます」
今まであったことを住田夫妻に全て話したら警察に連絡してくれた。
「状況がよく分かってないかもしれないけど、とにかく警察が来るまでゆっくりしなさいね。心を落ち着かせるのよ」
ガクガク震える俺におばさんがお茶を出してくれた。落ち着けるわけないだろ……と内心思いつつ有難くお茶を頂いた。
暫くぼーっとしていると
サイレンの音が聞こえて、警察が来た。
「君が斉田和樹くん?何歳?」
「17歳です」
「みんながご飯食べてる時何してたのかな?」
「俺はその時トイレにいて─────」
事細かに説明した。
といっても、俺はトイレにいて、出たら既にみんな血まみれだったので犯人については分からない。
「とりあえずこのまま署まで行こう」
俺に話を聞いてももう何も分からないのにな、と思いながらも警察署に行くことにした。
住田さんにはどえらい迷惑をかけた気がする。
「住田さんすみませんでした。またお礼させて下さい」
「もう、いいのよそんなのは…早く行きなさい」
「ありがとうございました」
警察署に行って、また色々聞かれた。
家族間のトラブルは~とか。
トラブルなんて無い。普通の家だから。
「んー、普通の家ねぇ」
「普通の家なんです」
小さい頃からごくごく普通の家庭だった。
働き者の父と、それを支える専業主婦の母。
頑固で近寄り難い雰囲気の爺ちゃんと
こっそりお小遣いをくれる優しい婆ちゃん。
茜の習い事はピアノとそろばんで、
俺は喘息に効くと聞いて水泳を習っていた。
年に1回みんなで温泉旅行に行った。
クリスマスはみんなでツリーを飾り付けて
こどもの日には爺ちゃんが
でっかい鯉のぼりを庭に立ててくれた。
不自由なく生きてきた。
門限もきつくないし、
テストの点が悪くても何も言われなかった。
親が厳しかったり、家庭環境が複雑だったり、
貧乏な奴が、ただ羨ましかった。
みんなそれなりに苦労してるんだろうけど
俺にはそれがない。生きてる気がしなかった。
いつも平和な家庭に、気付いたらイライラしていた。
もしかしたら、
これは
俺が望んだ家族の結末なのかもしれない。
「君…相当傷ついてるね」
「えっ?」
「涙も流さないじゃん」
「いや、傷ついてるっていうか、
未だに信じきれてない、ので」
「そっか」
俺は家族が大好きだった。
あのちょうどいい広さの家も、大好きだった。
「小林寛美さん、分かるかな?」
「俺の叔母さんです」
「小林さんが迎えに来てくれるから」
「え、あの叔母さんが?」
「うん。ちょっと待っててね」
子供嫌いであんまりいい思い出がない寛美叔母さんが
まさか迎えに来てくれるとは……
このまま父方の実家の方に飛ばされるかと思った。
「和樹」
「叔母さん、来てくれてありがとう」
「いや、別にいいよ。車で話しよう。
警察官さんどうもすみませんでした。
あとはよろしくお願いします、」
「姉さんたち、ほんとに亡くなったの?」
「う、うん」
「そっか」
叔母さんは信じられないみたい。
そりゃそうか、
親戚の家族が急に殺されたんだもんな。
「あたし悔しいから絶対犯人捕まえるよ」
「…捕まらないと思う」
「え?」
「捕まらないよ。警察の人も指紋とか、足跡とか無かったって言ってたし。叔母さんの力でどうにかなるの?」
「やってみないとわかんないでしょ」
「そうかな……」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる