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16.バディ
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看守の説明が終わって牢の前に戻った。他の女囚たちの身体刑も終わったようだ。私達は牢の前に並ばされる。バディの女の子は背中が赤く腫れ上がっていて痛ましい姿になっていた。
看守が女囚たちに手錠、足枷を付けていく。私達新人は拘束されたまま話を聞いていたので前手錠を後ろ手錠に変えられるだけで処置が終わった。全員の拘束が済むとバディ同士で腰縄が結ばれる。首輪も鎖で繋がれた。短い鎖で繋がれ肩がぶつかるほどの距離で拘束される。そして何故か防声具が外された。看守が鉄格子を開く。
「入れ」
看守の指示でバディと一緒に大人しく中に入る。すごく狭い牢だ。近くで見ると鉄格子の間には編みの細かい金網が張られ、小さな隙間さえない。この狭いスペースがこれから2ヶ月間、私の生活スペースになる。鎖が張られて首が絞まらないようにバディ相手とゆっくり動きを合わせて座る。座ると床の一部が2箇所丸く凹んでいるのが目に入った。その穴はとても汚くゴミのようなものが溜まっていた。
横を見るとバディの子が、何かを言いたそうに私の方を見ていた。何か良くないことをしてしまっているのかと不安になったけど何が悪いのかは分からない。互いに防声具は外されているけど、牢の外には看守がいる。さっき説明された発声制限を受けている状態で、話す訳にもいかない。
「1707番。正座!」
鍋を持った看守がやって来て注意された。よく見るとバディはしっかりと正座をして座っていた。このことを伝えようとしてくれていたのだろう。慌てて座り直して謝った。
「申し訳ありません」
油断していた。消毒の時などは先輩たちをよく見て真似できていたのに牢に入ったのでもう1日が終わりだと思ってしまった。でもここも安息の場所ではないのだ。
「次からは懲罰を与えるからな」
私は許されたらしい。看守が床の窪みにお玉でドロっとした液体を2杯入れた。
「給餌を許可する」
「はい。ありがとうございます。いただきます」
バディ相手がいただきますと返事をした。私も急いで
「ありがとうございます。いただきます」
と同じ言葉を繰り返した。防声具を外された理由が分かった。どうもこれが私達奴隷に与えられる餌のようだ。バディは床に口をつけて、それを啜り始めた。後ろ手に拘束されているので体を倒し、口で直接啜るしかないのだ。
首輪が繋がれているので、私も彼女に引っ張られるような形で身体を倒した。だけど、なかなか口をつけられなかった。強い抵抗感があった。最初にあったゴミは、私の前にここに収容されていた女囚の食事の残りカスだろう。衛生的とは思えずしばらく躊躇した。
だけど、食べなければ懲罰だろうし、ここで生きていくためには食べるしかないと思い定めて我慢して口をつけることにした。
それは、とても薄く水っぽい麦粥だった。味は全くしない。美味しいものではなかった。久しぶりの食事だったけれど楽しむ余裕なんて全然ない。とてもお腹が減っていたし、食事の時間がどれくらい与えられるのかも分からなかったので急いで食べた。食べながら自分のことを豚みたいだなと思った。本当に家畜以下の扱いなんだと改めて感じた。
慣れない食べ方で大変だったけど、必死になってなんとか食べ終わった。初めての給餌はとても屈辱的だった。初めてで上手に食べることができず、鼻の頭や口の周りにたくさん麦粥が付いてしまった。しかも後ろ手錠で拘束されているのでそれを拭うこともできない。それにお腹が一杯になることもない。どう考えても量が足りなかった。
「食べ残しはないな」
食べ終わると看守がやってきて、食べ残しがないかチェックを受けた。確認が済むと口周りが汚いまま防声具が付けられてしまう。更に看守は、私達の首輪の鎖を壁のフックに繋いで身体を動かせる範囲をより制限した。そして牢に鍵がかけられ閉じ込められた。鉄格子が私達の自由を奪う。
「就寝を許可する」
12時になったのか通路から看守の声が響く。バディの子が正座を崩したので私も崩した。寝ていいとは言われたけれど、牢内はとても狭く横になれるような広さはない。1人でも寝転べないだろうけれど、2人ではなんとか座ることができるスペースしかなかった。背中を冷たい壁にもたれかけさせ、座ったまま体を休めるしかなかった。裸なので寒かったが、短い鎖で繋がれているので強制的にバディと肌が触れ合う状態になる。互いに体温で温め合うことができるのはありがたかった。
ー警告、鉄格子に脱走防止電流が流れます。看守の方は離れてくださいー
突然電子音が流れた。よくわからないけれど、鉄格子に電流が流れているのだろう。少なくとも触らないほうがいいのは理解できた。
突然バディの子が私の脇腹を指で触ってきた。びっくりした。拘束されたまま上手に私の脇腹の方に両手を移動させているようだ。最初は、私をくすぐっているのかと怪訝に思ったたけれど、すぐに文字を書いていることに気が付いた。
よろしくね
ひらがなでよろしくねと書いているようだ。何度もよろしくねと繰り返し書いている。私も相手の脇に書こうとしたら、すぐに目で動きを止められた。彼女は天井の方に目線を動かす。そこには監視カメラがあった。角度的に死角になるように注意しろということだろう。
わたし なまえ アンナ
彼女の名前はアンナと言うらしい。やはり日本人ではないのだ。アンナさんは目を瞑って寝たふりをしながら文字を書き続けた。
はじめて つかれている よゆう できたら かいて
今日は疲れているだろうから奴隷生活に慣れて余裕ができてから書いてと気を使ってくれているのが分かった。とても嬉しかった。私も目を瞑って寝たふりをして、監視カメラに映らないように指だけ動かして彼女の脇腹に文字を書いた。
ありがとう わたし さき よろしくね
それだけ書いて目を開くとアンナさんも微笑んでいた。防声具のマスクで顔全体は見えないけれど目で分かった。規則違反だけど同じ女囚の仲間とコミュニケーションを取る事ができたのは嬉しかった。少し奴隷として生きていくことに自信を持つことができた。アンナさんが体をもたれかけてくる。私もアンナさんの方に体を寄せて寄りかかって眠りについた。
看守が女囚たちに手錠、足枷を付けていく。私達新人は拘束されたまま話を聞いていたので前手錠を後ろ手錠に変えられるだけで処置が終わった。全員の拘束が済むとバディ同士で腰縄が結ばれる。首輪も鎖で繋がれた。短い鎖で繋がれ肩がぶつかるほどの距離で拘束される。そして何故か防声具が外された。看守が鉄格子を開く。
「入れ」
看守の指示でバディと一緒に大人しく中に入る。すごく狭い牢だ。近くで見ると鉄格子の間には編みの細かい金網が張られ、小さな隙間さえない。この狭いスペースがこれから2ヶ月間、私の生活スペースになる。鎖が張られて首が絞まらないようにバディ相手とゆっくり動きを合わせて座る。座ると床の一部が2箇所丸く凹んでいるのが目に入った。その穴はとても汚くゴミのようなものが溜まっていた。
横を見るとバディの子が、何かを言いたそうに私の方を見ていた。何か良くないことをしてしまっているのかと不安になったけど何が悪いのかは分からない。互いに防声具は外されているけど、牢の外には看守がいる。さっき説明された発声制限を受けている状態で、話す訳にもいかない。
「1707番。正座!」
鍋を持った看守がやって来て注意された。よく見るとバディはしっかりと正座をして座っていた。このことを伝えようとしてくれていたのだろう。慌てて座り直して謝った。
「申し訳ありません」
油断していた。消毒の時などは先輩たちをよく見て真似できていたのに牢に入ったのでもう1日が終わりだと思ってしまった。でもここも安息の場所ではないのだ。
「次からは懲罰を与えるからな」
私は許されたらしい。看守が床の窪みにお玉でドロっとした液体を2杯入れた。
「給餌を許可する」
「はい。ありがとうございます。いただきます」
バディ相手がいただきますと返事をした。私も急いで
「ありがとうございます。いただきます」
と同じ言葉を繰り返した。防声具を外された理由が分かった。どうもこれが私達奴隷に与えられる餌のようだ。バディは床に口をつけて、それを啜り始めた。後ろ手に拘束されているので体を倒し、口で直接啜るしかないのだ。
首輪が繋がれているので、私も彼女に引っ張られるような形で身体を倒した。だけど、なかなか口をつけられなかった。強い抵抗感があった。最初にあったゴミは、私の前にここに収容されていた女囚の食事の残りカスだろう。衛生的とは思えずしばらく躊躇した。
だけど、食べなければ懲罰だろうし、ここで生きていくためには食べるしかないと思い定めて我慢して口をつけることにした。
それは、とても薄く水っぽい麦粥だった。味は全くしない。美味しいものではなかった。久しぶりの食事だったけれど楽しむ余裕なんて全然ない。とてもお腹が減っていたし、食事の時間がどれくらい与えられるのかも分からなかったので急いで食べた。食べながら自分のことを豚みたいだなと思った。本当に家畜以下の扱いなんだと改めて感じた。
慣れない食べ方で大変だったけど、必死になってなんとか食べ終わった。初めての給餌はとても屈辱的だった。初めてで上手に食べることができず、鼻の頭や口の周りにたくさん麦粥が付いてしまった。しかも後ろ手錠で拘束されているのでそれを拭うこともできない。それにお腹が一杯になることもない。どう考えても量が足りなかった。
「食べ残しはないな」
食べ終わると看守がやってきて、食べ残しがないかチェックを受けた。確認が済むと口周りが汚いまま防声具が付けられてしまう。更に看守は、私達の首輪の鎖を壁のフックに繋いで身体を動かせる範囲をより制限した。そして牢に鍵がかけられ閉じ込められた。鉄格子が私達の自由を奪う。
「就寝を許可する」
12時になったのか通路から看守の声が響く。バディの子が正座を崩したので私も崩した。寝ていいとは言われたけれど、牢内はとても狭く横になれるような広さはない。1人でも寝転べないだろうけれど、2人ではなんとか座ることができるスペースしかなかった。背中を冷たい壁にもたれかけさせ、座ったまま体を休めるしかなかった。裸なので寒かったが、短い鎖で繋がれているので強制的にバディと肌が触れ合う状態になる。互いに体温で温め合うことができるのはありがたかった。
ー警告、鉄格子に脱走防止電流が流れます。看守の方は離れてくださいー
突然電子音が流れた。よくわからないけれど、鉄格子に電流が流れているのだろう。少なくとも触らないほうがいいのは理解できた。
突然バディの子が私の脇腹を指で触ってきた。びっくりした。拘束されたまま上手に私の脇腹の方に両手を移動させているようだ。最初は、私をくすぐっているのかと怪訝に思ったたけれど、すぐに文字を書いていることに気が付いた。
よろしくね
ひらがなでよろしくねと書いているようだ。何度もよろしくねと繰り返し書いている。私も相手の脇に書こうとしたら、すぐに目で動きを止められた。彼女は天井の方に目線を動かす。そこには監視カメラがあった。角度的に死角になるように注意しろということだろう。
わたし なまえ アンナ
彼女の名前はアンナと言うらしい。やはり日本人ではないのだ。アンナさんは目を瞑って寝たふりをしながら文字を書き続けた。
はじめて つかれている よゆう できたら かいて
今日は疲れているだろうから奴隷生活に慣れて余裕ができてから書いてと気を使ってくれているのが分かった。とても嬉しかった。私も目を瞑って寝たふりをして、監視カメラに映らないように指だけ動かして彼女の脇腹に文字を書いた。
ありがとう わたし さき よろしくね
それだけ書いて目を開くとアンナさんも微笑んでいた。防声具のマスクで顔全体は見えないけれど目で分かった。規則違反だけど同じ女囚の仲間とコミュニケーションを取る事ができたのは嬉しかった。少し奴隷として生きていくことに自信を持つことができた。アンナさんが体をもたれかけてくる。私もアンナさんの方に体を寄せて寄りかかって眠りについた。
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