5 / 10
05 便利な魔法と機械
しおりを挟む
「今日は他にどっか行く? それとも言っていたラーメン屋に直行する?」
「まずはラーメン屋へ行こうか。遠いのか?」
「電車で三十分ぐらいかな。でも、人気店だから大分待たなきゃいけないかも」
「待つ? 私は食べられればいいぞ?」
「じゃぁ、行きますか」
クリスは昨日即席で買った服に着替えていた。靴だけは自前だ。ブーツなので何にでも合うよね。
黒のシャツに白いワイシャツ、ゆったりめのパンツ。めっちゃシンプルなのに、このハイブランド感。上下で五千円もしてないのに… すごいを通り越してもはや乾杯だ。
「今から電車って言う乗り物に乗るよ」
駅まで歩きながら電車について話をする。いきなり見たらうれしさでそこで時間が過ぎそうだし。
「昨晩見た馬のない乗り物のことか?」
「車じゃなくて、それよりもっと大きいかな。何百人と乗せて運ぶ乗り物だよ。金属でできてて、メッチャ速いから」
「何百! そんなに乗せて壊れないのか?」
「うん。それも科学技術だよ。魔法がない代わりに人の手と知恵で何百年と培ってきた技術の結晶だよ? 空を飛ぶ金属の乗り物もあるんだから。ほら、あれ!」
と、ちょうど空を飛んでいる飛行機を指す。クリスは空を見上げて首を傾げている。
「鳥? にしては大きいな。アレのことか?」
「そうだよ。あれも昔の偉い人がつくった乗り物。日々進化してるんだ」
「進化? 出来上がりではないのか?」
「違う違う。あれでも十分なんだけど、もっと便利にって日々研究してるんだよ。人の欲は尽きないからね~」
「… もっとか。しかし、その欲のおかげでこのような世界になったのだろう? この世界は欲にあふれているな。いい意味でな」
「そうだね。私は便利な社会の恩恵を受けてるけど、半自動ぐらいがちょうどいいかな」
「半自動?」
「うん。勝手にドアが開いたり、勝手に車が走ったり… メッチャ快適なんだけどね、私はある程度自分でしないと、将来目的も意識も曖昧になっちゃいそうに感じてる。ましてや今、地球上から電気がなくなったら、大パニックだよ。あはは」
「私の世界でも魔法に頼り切っている部分はある。しかし、たくましい平民を見ているといつも思う。人の手でできることを魔法が担うのは良いことだが… 貴族は魔法がないと生きてはいけないだろうと。ユーリの危惧は私も感じている」
「そっか、クリスの世界は魔法か。どっちの世界でも課題はあるよ。うん。まっ私が言ってもしょうがないんだけど。って、駅に着いたよ」
切符売り場で料金表を見る。久しぶりだな、料金見て切符を買うの。
「ユーリ、この機械を操作するのだろう? 私がしてみたいのだがいいか?」
目がウキウキのクリスは昨晩触りまくったスマホのおかげで電子機器が気に入ったようだ。
「いいよ。じゃぁ、このコインをここに入れて~」
うんうんと、子供のようにピッッピッとボタンを押している。楽しそう。こんな些細なことだけど私までうれしくなる。
「買えたぞ! この紙がチケットか!」
「そう、切符ね。じゃぁ、こっち、この機械にその切符を入れて」
「こうか?」
すっと吸い込んだ切符に呆気を取られている。クリスは眉間に皺を寄せてフリーズした。
「機械にチケットを盗られてしまった… また買わなければ… すまんユーリ、コインをくれないか?」
「あはははは、大丈夫だって。こっち、ここに出てきてるから」
「何! どうなっている?」
「切符を確認したよってこと。だからこのゲートを通っていいの」
「これで入場確認が取れたということか? すばらしい」
クリスは切符を握りしめまぁまぁでかい声ではしゃぐので、ちょっと恥ずかしい。『イケメン外国人が日本のメトロに興奮してる件』とかYouTubeに上げられそうだな。
「じゃ、電車が来るからね。こっち」
昨日のドンキを彷彿させる。クリスを引っ張って歩く私。このままちゃんとラーメン屋に辿り着くのか心配だ。
「まずはラーメン屋へ行こうか。遠いのか?」
「電車で三十分ぐらいかな。でも、人気店だから大分待たなきゃいけないかも」
「待つ? 私は食べられればいいぞ?」
「じゃぁ、行きますか」
クリスは昨日即席で買った服に着替えていた。靴だけは自前だ。ブーツなので何にでも合うよね。
黒のシャツに白いワイシャツ、ゆったりめのパンツ。めっちゃシンプルなのに、このハイブランド感。上下で五千円もしてないのに… すごいを通り越してもはや乾杯だ。
「今から電車って言う乗り物に乗るよ」
駅まで歩きながら電車について話をする。いきなり見たらうれしさでそこで時間が過ぎそうだし。
「昨晩見た馬のない乗り物のことか?」
「車じゃなくて、それよりもっと大きいかな。何百人と乗せて運ぶ乗り物だよ。金属でできてて、メッチャ速いから」
「何百! そんなに乗せて壊れないのか?」
「うん。それも科学技術だよ。魔法がない代わりに人の手と知恵で何百年と培ってきた技術の結晶だよ? 空を飛ぶ金属の乗り物もあるんだから。ほら、あれ!」
と、ちょうど空を飛んでいる飛行機を指す。クリスは空を見上げて首を傾げている。
「鳥? にしては大きいな。アレのことか?」
「そうだよ。あれも昔の偉い人がつくった乗り物。日々進化してるんだ」
「進化? 出来上がりではないのか?」
「違う違う。あれでも十分なんだけど、もっと便利にって日々研究してるんだよ。人の欲は尽きないからね~」
「… もっとか。しかし、その欲のおかげでこのような世界になったのだろう? この世界は欲にあふれているな。いい意味でな」
「そうだね。私は便利な社会の恩恵を受けてるけど、半自動ぐらいがちょうどいいかな」
「半自動?」
「うん。勝手にドアが開いたり、勝手に車が走ったり… メッチャ快適なんだけどね、私はある程度自分でしないと、将来目的も意識も曖昧になっちゃいそうに感じてる。ましてや今、地球上から電気がなくなったら、大パニックだよ。あはは」
「私の世界でも魔法に頼り切っている部分はある。しかし、たくましい平民を見ているといつも思う。人の手でできることを魔法が担うのは良いことだが… 貴族は魔法がないと生きてはいけないだろうと。ユーリの危惧は私も感じている」
「そっか、クリスの世界は魔法か。どっちの世界でも課題はあるよ。うん。まっ私が言ってもしょうがないんだけど。って、駅に着いたよ」
切符売り場で料金表を見る。久しぶりだな、料金見て切符を買うの。
「ユーリ、この機械を操作するのだろう? 私がしてみたいのだがいいか?」
目がウキウキのクリスは昨晩触りまくったスマホのおかげで電子機器が気に入ったようだ。
「いいよ。じゃぁ、このコインをここに入れて~」
うんうんと、子供のようにピッッピッとボタンを押している。楽しそう。こんな些細なことだけど私までうれしくなる。
「買えたぞ! この紙がチケットか!」
「そう、切符ね。じゃぁ、こっち、この機械にその切符を入れて」
「こうか?」
すっと吸い込んだ切符に呆気を取られている。クリスは眉間に皺を寄せてフリーズした。
「機械にチケットを盗られてしまった… また買わなければ… すまんユーリ、コインをくれないか?」
「あはははは、大丈夫だって。こっち、ここに出てきてるから」
「何! どうなっている?」
「切符を確認したよってこと。だからこのゲートを通っていいの」
「これで入場確認が取れたということか? すばらしい」
クリスは切符を握りしめまぁまぁでかい声ではしゃぐので、ちょっと恥ずかしい。『イケメン外国人が日本のメトロに興奮してる件』とかYouTubeに上げられそうだな。
「じゃ、電車が来るからね。こっち」
昨日のドンキを彷彿させる。クリスを引っ張って歩く私。このままちゃんとラーメン屋に辿り着くのか心配だ。
21
あなたにおすすめの小説
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します
みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが……
余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。
皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。
木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。
伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。
そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。
しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。
ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。
妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる