前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

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1章 ロンテーヌ兄妹

52 守護者達

<カイデール目線です>

成人の儀を終え、午後のお茶の時間より早い頃。屋敷に帰った俺は、部屋で明日の学校の用意をしていた。

そんな時、お爺様は俺とランド、リット、マーサ、ケイトを執務室に招集した。

「皆さんにはこの誓約書に新たにサインをお願いいたします」
ロダンが差し出した、革でできた大きな契約書を見たケイトの喉が『ヒュッ』と鳴った。

お爺様は無言で目を瞑って上を向いている。誰も声を発しない。

「これは魔法誓約書の一種ですが、最上級の物になります。破れば命を落とします。これは強制ではありません。そして今の段階で誓約内容は言えません。サインをしない者はこのまま退出して下さい」

そんなに?命かけるような事件があるのか?

俺はオロオロして周りを見渡す。ケイトの顔は真っ青だ。

「そんな大事なのか?ミランやエリは?アークは?」

「お嬢様に関係する必要最小限の人員です。今後増えるかもしれませんが、増えても1人か2人でしょう」

ジェシー?また何か発明した?そんな事でこれはおかしい。

ランドとリットが前に出て、スラスラとサインをしだした。

「待て、そんな。。。命がかかってるんだぞ!話を聞いてからでも。。。」

ランドとリットは笑顔で俺を見た。

「問題ない。お嬢様の事なら私は了承する」
「俺も、お嬢とは一蓮托生だから」

そんな。。。

「ケイト、無理はするなよ。お願いだ、お爺様!この部屋を今出ても罰はないのでしょう?」
あぁ、とお爺様は頷く。

しかし、ケイトは意を決したのか、青い顔が真剣な顔に変わっていた。

「大丈夫ですよ。カイ様。私はお嬢様と卒業後はロンテーヌ領で楽しく暮らす約束をしたのです。問題ありません」
と、微笑んでいる。

「私は、お嬢様の事でどうしても必要なのね?」
マーサはロダンに再度確認している。

「ええ、あなたの研究内容をアークから報告を受けています。はとても必要です。お嬢様も関わっていますよね?出来る事なら、あなたのその『聡明な頭脳』をお嬢様の為にお使い願いたい。選択権はあなたにあるので、出て行っても処罰はありません」

「。。。そう。全て知っているのね」
と、ぽつりとこぼすとマーサは躊躇することなくサインをした。

その後、ロダンとお爺様がサインをした。

「カイ様はどうされますか?今なら部屋を出て行けますよ」
ロダンは無表情で俺を見る。どっちでもいいと言う感じだ。

。。。俺は今、どんな顔をしている?手が小刻みに震えている。どう言う事なのか。。。

え~い。。。よし!

俺は腹をくくってサインをした。
「たった一人の妹の事だ。問題ない」

「では、少々長くなりますので、皆さん空いている椅子にお座り下さい」
ロダンは皆を座らせると話し出した。

「本日、お嬢様の成人の儀がつつがなく終了しました。結果ですが、魔法の属性は1種類で家魔法の土です。魔力量は王と並ぶそうです。あと、特化の『写』という字が確認されています。王はこの事をご存知です。そして、『異なる世界の記憶』についてもご存知です。やはり王の特化『眼』の前では隠しきれませんでした」
ここまでで質問は?とロダンは周りを見渡す。

皆無言だ。

「今回集まっていただいたのは、お嬢様の特化について、私は今の段階から警戒すべきだと思ったからです」

「なぜだ?まだ魔法すら習っていないのに。。。特化の特性も不明なのに。何をそんなに急ぐ?」
諦めの悪い俺は、まだこの魔法誓約書をどうにかしたくて必死にロダンに訴える。

「カイ様。先手を打たなければお嬢様の身が危険です」
ロダンは極力優しい声で答えてくれた。

「ジェシーが危険?」

「はい。私が考えたお嬢様の特化『写』ですが、恐らく『模写』の『写』の事だと思われます」

そんな予想。。。妄想じゃないのか?いや、元参謀としての勘なのか?

「えっ!そんなのまだわからないじゃないか。『描写』は?それか、ただ鏡のように『写す』のかもしれない」

「そうですね。もしそうならそれでいいのです。その時はこの魔法誓約書を破棄しましょう。しかし、私が予想するのは、もしものお話ですが、お嬢様の命が関わるパターンを推測した話です」

俺は開いた口が塞がらない。

「では、続けます。もし『模写』だった場合、能力は無限になります。『特化』を持っているだけでも貴重なのに、この能力で、一人一つしかなかった個々の才能である『特化』を写し取れば。。。そうなれば、お嬢様はこの世で1番強い魔法使いになってしまいます。我が国や他国の貴族たちは取り合いを始めるでしょう。歪み合い略奪戦が起き、遂には、必ず戦争が起きます。はたまた、お嬢様自身が兵器として送り込まれるかもしれません。監禁され魔力が尽きるまで『特化』を写し取る地獄の日々が来るかもしれない。終には、能力に恐れ暗殺が頻発するかもしれない。もし『模写』だった場合、それだけとても危険な能力になるのです」

。。。

「ジェシー。いや、ジェシカは大変なものを背負ってしまった。カイが言うように『描写』なら、それならそれでええ。しかし、最悪の場合。。。儂はジェシカを失いたくないのだ。もう可愛い我が子達を、孫を。ここにいる皆の命をジェシカのために捧げて欲しい。そうじゃ、儂の我儘じゃ。儂が背負う。これは儂のゴウじゃ。あの子は悪くない。皆わかって欲しい」

話を聞いて俺は下を向いて泣いてしまった。お爺様は慈悲の目で俺を見つめる。

涙が止まらない俺の頭をなでてくれる。お爺様はジェシーを想って罪を背負うと言う。皆の命を。。。

「皆、だまし討ちのような事をしてしまった。すまない。命を懸けさせてしまった。本当にすまない」
その場でお爺様は皆に頭を下げた。

「しかし、儂は皆に願いたい。ロダンには人生の道しるべに。カイは家族の愛情を注いでくれ。ケイトはジェシーの安らぎの場所に。ランドとリットは盾と矛に。マーサは研究者としてその知恵を。万が一、他者に悪用されるかもしれんが、ジェシカ自身の心を守ってほしい。自分の力に絶望して悪の道にジェシカ自身が進まないように」
お爺様は話した後も皆に頭を下げ続けている。

。。。俺は。

「俺からもお願いだ。俺は、今は何もできない小さな存在だ。。。。が、妹を守って下さい。お願いします」
俺はお爺様の横に並び必死に頭を下げた。

「ご主人様、心配はいらない。お嬢様は俺の命だ」と、ランド。
「お嬢の事は言われなくても守ってみせる。俺の半身だからな」と、リット。
「私は笑う事しかできませんが、精一杯お世話させていただきます」と、ケイト。
「お嬢様にはびっくりするぐらいの恩義があるの。問題ありませんわ」と、マーサ。
「ご主人様、いえクライス様。私はあの時クライス様に忠誠を、命を捧げております。それはご家族であるお嬢様にも当然です」と、ロダンは跪き騎士礼をした。

すっと立ち上がりロダンは、
「では、一同よろしいですね。お嬢様が学校で魔法を習得するまで、そして習得してからも、万が一の場合を想定して守護をお願いいたします。また、お嬢様の特化『写』の秘密を未来永劫、心に秘めるように。全ては私達の小さな姫の為に!」

バッと振り向き、ロダンは内ポケットからシュッとペーパーナイフを出し、部屋の隅の花瓶の影へ突き刺した。

「アーク。出て来なさい。そしてサインをするんだ。処罰は追って言う」

影からズズズと姿を現したアークは罰が悪そうに出て来た。

「おまっ!」
俺はカッとなってドカドカと近づいていきアークを思いっきり殴った。

「申し訳ございません。私も仲間に入れて欲しかったのですが。。。出るタイミングを失いまして。。。」
口の端が切れているアークはうつ向いて言い訳をする。

「ご主人様、決して盗み聞きするつもりはありませんでした。お嬢様の為に私も力を尽くしたいと、心から思っています」
アークはお爺様に謝罪すると、誓約書にサインをした。

「は~、仕方がないですね。カイ様が罰を下してくれたので良しとしましょう。その、恥ずかしがり屋なのか対人恐怖症なのか。。。影に潜む癖は以後は治して下さいね」
と、ロダンが締めくくった。

緊張の糸が途切れたのか、クスクスとマーサとケイトが笑っている。リットはアークの頭をグリグリしている。ランドは呆れた顔でアークを睨んでいた。



今日、ここに集まった皆は同じ方向を向いて歩くこととなる。俺の心は、いつの間にかスッキリした晴れた青空のようになっていた。


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