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2章 魔法使いとストッカー

24 購買部を作ろうよ!

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「ロダン、明日か明後日ね。エルの婚約の話し合い。上手く行くかしら?」
私は週末最後の授業を終え、屋敷で夕食までの間ロダンとお茶をしている。

「そうですね~。アダム様に急には会えませんからね。お嬢様はお祈りして待つしかありませんね。エルメダ様のご希望が通ればいいでしょうが。。。こればかりは21領主の跡取りの話ですので」

一層の事、アダム様に一方的に手紙を出しちゃう?『今夜12時にアダム様の王城の書斎に転移します』って。ロダンに怒られそうだけど。。。

「そっか。。。エルには、最悪ウチの領においでって言っちゃったけどいいわよね?」

ロダンは頭に手を当てながら長~い溜息を吐く。
「は~。ロッシーニからの報告で知っています。本気なんですか?」

「ええ。だって追い出されたら行く所がないじゃない。いいわよ、どうせロンテーヌ領は国の端っこだし。目立たないわよ。エルは特進科よ?領官僚にいいんじゃない?それより、昨日言っていた参謀の件、どう?何かいい戦法はある?」

「お嬢様、私が考えてしまっては他のクラスにとってフェアではありません。あっさり勝っても面白くないでしょう?ご自身でクラスの皆さんと相談するべきです。そう意気込まなくても、気楽に楽しめばいいと思いますよ。クラスでの話し合い自体が楽しい思い出になりますよ」

「そうは言っても。。。役職とか苦手なのよ。プレッシャーに弱いの。胃が痛い。。。」

「胃?何でしょうか。。。しかし、そこまで気を使わなくてもいいんじゃないでしょうか?」

そっか、胃とか臓器は知らないのかな?いや、また違う名前かも。
「お腹が痛くなるって事!それより、また思いついちゃったの。今言ってもいいかしら?」

「はいはい。新商品ですか?」
ロダンは何でもない様に紅茶を飲む。最近思いついてもリアクションが薄いように感じるんだけど~。

「もう、何だかそっけないわね。1つは新商品よ。だからナダルと話したいのと、もう一つがね、購買部を作ってはどうかと思って」

「購買部?ですか?」

「ええ。学校に支店を出せないかと思ってね。生活雑貨店の学生専用版よ」

「なぜそう思ったのでしょう?寮生活者の為ですか?でも、外出は届け出を出せばいつでも王都の城下へ行けますが?」

そうなんだ。。。でもあったら便利だよね。

「そうなの?でもね、ちょっと紙が足りないとか、ちょっとアレだけ無いとかで外出するのって面倒臭く無い?本当にこだわっている物なんかは外に買いに行けばいいの」

「面倒臭いですか。。。ははは。お嬢様らしい」

「異なる世界の学校にも購買部があってね、勉強に使う筆記用具の予備や体操服、ボタンなんかを売っていたの。お昼にはパンを売ってたりもしたわ。本当に今欲しいって言う何気ない日用品ばかりよ」

「ほぉ~。学生向けの商品ですか」
ロダンは何やら考えている。ま~、今はサボンとかがウチの商品だしね。

「今後、『運動服』を作るじゃない?だったら、学校で注文できたら便利だなって。汚れたり破れたりした時に、すぐに必要になるかもしれないわ。ついでに、ちょっとした雑貨も売ればいいかなって。うちのサボンやへちまん、歯磨き棒とかのラインの商品は特に寮生活の人には売れると思うのよ。あとは、学生カード入れとか発明してもいいわね~。レターセットとかも欲しいな。あっ!」

あっ!!!いいこと思いついちゃったよ。。。どうしよう。これはロゼ領に売ればいいと思うけど。。。どうする?

「何ですか?また、思いついたんじゃないでしょうね?」
ロダンは呆れ顔で私を見る。

「ええ。。。香水のロゼ領に関係してくるから、来月のロゼ領領主様とのお茶会で提案するかどうか、お兄様も含めて話しましょう。これは、今思いついたからちょっとまとめておくので、今度でもいい?」

ずっと延び延びになっていたロゼ領領主とのお茶会が、ついに来月にある。ふ~。

「はぁ~。いいでしょう。来週の火の日の午後、ご主人様は時間が空きますので、その時までにお願いします」

「ええ。でね、さっきの話だけど、そんなに大きいお店でなくていいのよ。そうね。領城のエントランス横の小部屋ぐらいかな」

領の小部屋は大体8畳ぐらいの部屋だ。8畳あれば十分だ。

「そうですか。。。購買部は一旦保留でお願いします。まずは学校側へ申請しなければ。。。どう話を持って行くか。今は『運動服』の話を詰めていますからね。春の新学期からの販売予定に合わせてもいいですね。それなら話がしやすいか。。。わかりました、ご主人様と話してみます」

「よかったわ。私はどんな物があったらいいか、それとなくクラスメイトに聞いてみるわ」

ふふふ~ん。何がいるかな~。

筆記用具でしょ?学生カード入れは欲しいな、って私がだけど。あとはハンカチとかかな?刺繍糸とかもいるかな?他の科にも聞きに行きたいな、求める物が絶対違うよね、多分。

「次です。お嬢様。ナダルに相談事とは?」

『はっ』と、ニマニマ想像していた私は我に帰る。

「あぁ、髪飾りなんだけど。平民でもおしゃれができる物を思いついたのよ」

「髪飾りですか。。。金属は原価が高いですよ?平民向きは難しくないですか?」

「違うの。素材は布よ。だから大丈夫」

???ロダンはハテナマークだ。

「今、髪を結った時に縛るのって紐か太い糸じゃない?貴族は、ロダンがさっき言った様に、その上から金属の髪飾りで飾るじゃない?パーティーでは生花なんかも着けてるわよね?平民はせいぜいがんばってもリボンよ。そこで、前世で流行った物を思い出したの」

「異なる世界の物ですか。。。では平民向けですね?」

「そうね。。。素材を一級品にすれば貴族にもウケると思うわ。でも、普段使いがせいぜいよ。。。そっか!購買部ができれば、これも『日用品』か!普段使いの髪飾り!いい!」

ロダンは紅茶のおかわりをサーブしながら、やっぱり呆れ顔。。。解せん。
「それで肝心の物はどんなものなんでしょう?」

「あのね」
と、私は前世でよく使用していた『シュシュ』の絵を描いて見せた。

「本当は、この布がクシュクシュってなる様にゴムって言う製品が使われているんだけど、こっちには無さそうなの。だからゴムの代わりに細いリボンで結ぶ様にするの。そうしたらクシュクシュってなるでしょう?このヒラヒラが可愛いのよ。どう?」

ロダンは絵を持ち上げて考えている。
「そうですね。。。素材、布を高位貴族の夜会ドレスに使う様な物にすれば、下位の貴族は飛びつくかもしれません。使用する布が少ないので、ドレスに比べれば数段値段は安くなりますし、これぐらいならと買うでしょう。しかも普段使いなら、自慢にもなるでしょう。布が一級品ですから。お年頃の、それこそ学生には受けはいいかもしれませんね。。。エリにも意見を聞きましょう」

ロダン、やっぱりいいね~。1話すと10まで広げてくれるから助かる!

「ではエリにも意見を聞いて、ナダルと打ち合わせをしたいわ。まずは試作品よ!それからお兄様に話を持って行きましょう!」

「そうですね。お嬢様はこの絵とレポートを書いて下さね。そうですね。。。10日後に確認させて下さい」

「わかったわ。次から次にごめんなさいね」

「いいんです。こうして、すぐ相談してくれる様になって私も動きやすいですから」

うっ。。。過去の私。。。ごめんなさい。

「えへへ~」
と、笑ってごまかす。

「ロゼ領への話もレポートに書いて下さると助かります。よろしくお願いします。では、購買部の話は来週の火の日ですから、その日は寄り道しないで早く帰ってきて下さい」

はいはい。

てか、ロゼ領へは提案だから、ウチには旨味があんまりないんだけど。かと言って、ロンテーヌ領で作るのもコストがかかりそうなんだよね~。


ふふふ。これは秘密だよ。来週までお待ち下さい!

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