前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila

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2章 魔法使いとストッカー

53 千年前の魔法使い

 結局、ロダンに『明日からにして下さい』と言われたので、今日は朝からお兄様の執務室へやって来ている。
 私はスラスラと読みながら真新しい紙に本の写しを書いていく。

『今日で俺がこの世界に来て三年になる。やっと各国も落ち着いてきた。今更だが日記をつけようと思い立った。誰にも知られたくないので故郷の文字の日本語で書くことにする。どうせ、俺しかわからないし。

ー(中略)ー

 この世界の魔法の原理は簡単だ。出したい魔法を想像して、それに合う言葉を口にするんだ。それである時俺は間違って日本語で魔法を唱えたら威力が何十倍にもなった。そうだ、俺はチートを授かっていたんだ。今まで『他の人より魔法が上手に使えるだけ』としか思っていなかったが、やっぱそこは転移者じゃん? チートあったぜ! いやっほい』

 … 『チートあったぜ』じゃないよ。もう。この人。

 この人こと『坂井一輝さかいかずき』さんはこの世界の神様、ホセミナ様が転移させた人だった。転移させられたのは十八歳の夏。部活帰りにトラックに轢かれる所を神様に助け出され… と、お決まりのアレのようだ。
 当時は、初代王時代で誰しもの魔力が今より多かったそうだ。なので平民も生活魔法程度は使えていたらしい。だからなのか、国が建国された当時だからなのか、各国は十年にも及ぶ魔法戦争で疲弊していた。
 そこで、神様は坂井君にお願いした。『この世界の魔法の行く末は、このままでは破壊にだけしか使われないようになる。どうにか世界を救ってくれないか? 坂井君の知識と良心で良い魔法を浸透させて欲しい』と。
 そして、転移して二ヶ月後、ほんの些細なきっかけで気づく。『どうやら俺には本当に世界を変えるような膨大な魔力と日本語と言う武器が備わっている』と。

「坂井君、いい子だったんだろうな。本当に色々と魔法について調べているけど…」

 ページを進むにつれ、各国の事情や神様の事情などがちらほら書かれていた。

 グランド様や他の神竜達は膨大な魔力はあるが『人』を傷つけることが許されていなかった。攻撃しても自分に跳ね返るんだそうだ。守り神として位置付けてしまった制約らしい。だから、ホセミナ様は坂井君を転移させた。選ばれた理由は一つ。その優しい性格とプロに並ぶゲーム知識。

 ホセミナ様は自分の愛する世界をどうにかしたかったんだろうね。ゲーム知識って… ゲームの呪文と魔法が重なったのかな? しかし転移か… 坂井君も思う所はあるんだろうけど。

 それから坂井君は四つの国の国王を呼び会談の席を設ける。半ば強引な所はあるけれど… そこはどうしても力技になってしまうよね。単身各国に乗り込んで魔力を見せつけたみたいだ。『俺は神の遣いである。各国はこれ以上争いをしない事。もしこれ以上世界を壊して神様を悲しませるようなら、俺が直々に沈めてやる』と。

「一人で国を滅ぼす魔力とか… それって… もう魔神じゃん? てか、この人が好青年でよかった。マジで」

 ホセミナ様もすんごい悩んで選んだんだろう。坂井君の人格頼みだよー。じゃなきゃこんなのギャンブルじゃない?

 と、一冊目は国が平定してからの個人的な過去録だった。所々に魔法陣や魔法の呪文も書かれている。

「お嬢様、先ほどからブツブツと… お言葉遣いも」

 執務室まで私についてきているケイトは少々おかんむりだ。

「ごめんケイト。でも今は許して。執務室は防音だし… 今だけ、ね?」

「まぁまぁケイト。ジェシーが大人しく机に向かっているんだ、大目に見てやれ。それに聞いていたらなかなか面白い話し言葉だぞ?」

 と、お兄様は私の独り言を面白がっている。

「… ご主人様はお嬢様に甘すぎです」

「まぁまぁ」

 よし、気を取り直して。
 と、次のページをめくると『お仕置きの輪』と言う魔法が書かれていた。

「マジ!!! こんなに早く解決しちゃうの!!!」

 私はうれしくなり思わず本を持ち上げて飛び跳ねた。

『子供が悪さをしたらかける魔法。約一ヶ月間魔法を封じる事ができる。もちろん悪さをしたのが王様でもOK』

「お兄様! 見てください! もう発見しました。この魔法は使えるかもしれません!」

 と、書類に目を通していたお兄様に駆け寄る。側にいたイーグルも驚いている。

「まさか!!! 解呪の仕方が書かれているのか?」

「… いえ。『お仕置きの輪』と言う魔法封じの呪文が書かれています。この輪っかと同じかどうかはわかりませんが… 『子供が悪さをしたらかける魔法』ですって。ついうれしくなってしまって… すみません」

「は~、そうか。でも一応は手がかりにはなるのか?」

「どうでしょう? お嬢様、実際は何と書かれているのでしょう? 我々は読めませんので」

 と、イーグルが私が開いた日記のページをのぞき込んでいる。

「あぁ、そうよね。翻訳した呪文の文はこんな感じよ。『我が両手に聖なる力を宿せ。過ぎ去りし罪は光に包まれた時、三十の朝日を浴びるまで春を待つ桜の蕾の如く沈黙する。メッ』です」

 ちゃんと読んで思ったけど、最後の『メッ』ってちょっと間抜けすぎない? 前文とのギャップが…

「なるほど。そうなると、この魔法は恐らくですが三十日後まで解けないようですね。でも、待てば自然に解呪される? と言う事でしょうか?」

「そうなるわね」

「他に方法はないのでしょうか? 魔法を禁ずるとは… いささか子供を諌めるにしては大袈裟では?」

「昔の人は平民でも多少魔法が使えたそうよ。それでじゃない?」

「へぇ~、すごいな。もしかしたら今でも魔法が使える平民がいるかもな」

 と、相変わらず斜め上な返答をするお兄様。

「そんな事よりご主人様、『過ぎ去りし闇は光に包まれた時』です。恐らくお嬢様がかけられた魔法で間違いないかと。実際、目の前が眩しくなったとおっしゃっていたではありませんか?」

「た、確かに。ジェシー、この魔法を途中で終わらせる方法は書いていないのか? 『子供が悪さ』と言っても程度があるだろうし、反省したら早く解呪できる方法とかないのか?」

「… もう少し読んでみます。ちょっと早合点しました」

「ん」

 そう言うとお兄様はまた執務に戻ったが、イーグルが『ロダンを呼んできます』と退出していった。

 さぁ、私は続きを読みますか。
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