43 / 100
1章 ようこそ第7騎士団へ
41 忘年会
しおりを挟む
「では、団長。開始の挨拶をお願いします」
ドーンに促されて、私は厨房のカウンター前に椅子を置きその上に立つ。
「本日はみんな集まってくれてありがとう。団長に就任し、こんな短い時間でみんなと仲良くなれたのが正直一番嬉しいです。今日は、1年の労を労ってもらおうと『第7騎士団第1回腕相撲大会』を企画しました。優勝者には3万Kを用意しています。がんばって下さい。しかし、ルールもありますよ? まず1、汚ない罵りのヤジをかけない事。2、負けた者に嫌味を言わない事。3、仲良くする事。ケンカはダメよ? ではトーナメントを組みたいので、トリスとテッセンが持っている箱から番号を引いて下さい。そして、右横に設置した番号に自分の名前を書いて下さい! あと、少しですが飲み物も用意しています。お酒があるけど飲みすぎないように!」
パチパチパチ~。大きな拍手と共にザワザワとくじ引きが開始される。
「だ、団長。いいですか?」
私と同じぐらい背の低い女性騎士とガッチリした筋肉女性騎士が話しかけてくる。
「ん? どうしたの?」
「私は男性に勝てる自信がないので参加しなくてもいいですか?」
「う~ん。いいけど… でもどうせ負けてもいいなら参加してみたら? 腕を組み合うだけでも楽しいよ? 後々、話のネタにもなるし。他の隊員と仲良くなれるチャンスじゃない?」
「そうですか?」
「そうだね~どうしても嫌なら棄権でもいいわよ? でも番号は引いてね? 数を合わせてトーナメントの紙を作ってしまったから。名前の横に棄権って書いてくれればいいし。でもよく考えてね。勝つ事だけがこの会の目的じゃないし。私はみんなに楽しんで欲しいんだ?」
「わかりました… そう仰るなら挑戦してみます!」
「うんうん。無理はしないでね。応援するよ、がんばって」
ちょっと気が弱いのかな? 納得してくれたみたいで、その女性騎士はハニカミながらお友達の女性騎士と番号を引きに向かって行った。
「ドーンは? 参加してよ? 私もするし」
「ええ。我々側近は最後に番号を引きましょう」
「了解。私も最後にしよっと。って、速攻で負けてそうだけど。ふふふ」
「私も途中で負けるでしょうね。若い奴が多いですから」
「そうなの? ドーンって結構隠れマッチョじゃないの?」
「そこそこですよ。もういい歳ですから」
「ふ~ん」
大方、番号を引き終わったようなので私も引きに行く。さてさて、誰が相手かな~。
「D組17番」
「お~!」
「誰と対戦だ?」
「おい、見えねぇ」
私のお相手はベテラン男性騎士だった。終わった。あはは、あの腕のヒトコブラクダ。見た目で既に負けたよ。ふえ~ん。1回戦は通過したかったな~。
「アレクは?」
「俺はB組だ」
「クルスは?」
「俺もBだ」
「お~、じゃぁ、追々当たるね~。トリスは?」
「俺はAだよ」
「ドーンは?」
「私もDです」
「え~。じゃぁ、仇取ってね。まだしてないけど、負けそうな相手なんだ~」
「ははは、開始前からそんな事ではいけませんぞ?」
「だって~。って、リックマイヤーは?」
「俺とコリーナはCだ。俺もこんな若い連中に勝てる気がしねぇ。副団長、あっちで飲もうや。コリーナ、あとは頼まぁ~」
「え~、リックマイヤーさん! ずるい!」
ドーンとリックマイヤーは連れ立って、食堂の隅の席へ移動して若い連中を肴に飲み始める。
「あ~いいな~。私も飲みたい」
「ダメだ。俺らはジャッジ役だろうが。じゃぁ、各組に側近が散らばったからよろしく~。早めに進行してくれ」
クルスの号令でグループに分かれて腕相撲大会が開始される。
「D組の人集まって~。このテーブルでするよ!」
トーナメントの紙を外して持って来た。え~っと、1回戦は~っと。
「ウラジールとロキ出て来て。1回戦始めるよ」
オヤジ騎士のウラジールと新人騎士のロキ。双方目の輝きが違う。キラキラだ。いや、ギラギラか? 多分お目当ては賞金なんだろうけど。気合い入りまくりだな~おい。
「では、双方手を組んで。用意、始め!」
ウラジールは日に焼けたデカい腕に青筋が立っている。一方、線の細い感じなのに譲らないロキ。結構、力は強いのかもね。
「ウラジール、やっちまえ~!」
「ロキ! がんばれ!」
双方、ブルブルと組み合っていたがウラジールが勝った。
「勝者、ウラジール」
「クソっ。もう少しだったのに~」
「まぁ、訓練すればお前にも筋肉がつくさ」
「う~、はい」
勝っても負けてもいい感じになってるな~。よしよし。
「じゃぁ、2回戦、ヨハンナとミッチェル」
あっ。さっきの小さい女性騎士じゃん。がんばれ~。
「参加してくれたんだね。ありがとう、がんばって」
「は、はい」
「では双方いい? 用意、始め!」
ガン。
一瞬で勝負はついたが、ヨハンナは笑っていた。よかった~。
「あはは、手が! ガンって。一瞬です! すごいです! すごいですミッチェルさん!」
「いや~。ごめんよ、力加減が出来なくて。痛くない?」
ポリポリと頭をかきながらヨハンナを気遣うミッチェル。おやおや? いい感じ?
「ヒューヒュー」
「他所でやれ、他所で」
「団長! 次だ」
「はいはい。じゃぁ、次ね… ん? どうしたの?」
「急ぎの用だそうです」
誰かが肩を叩く。食堂の入り口を指さされて見てみると、今日代理でやってくれているお爺ちゃん先生の騎士が来ていた。
「了解。誰か代わって?」
「おう俺が代ろう。さぁ、野朗共! 続きだ!」
さっき勝ったウラジールが代わってくれた。
私は人混みをすり抜けて、お爺ちゃん先生の所に行く。
「どうしたの?」
ドーンに促されて、私は厨房のカウンター前に椅子を置きその上に立つ。
「本日はみんな集まってくれてありがとう。団長に就任し、こんな短い時間でみんなと仲良くなれたのが正直一番嬉しいです。今日は、1年の労を労ってもらおうと『第7騎士団第1回腕相撲大会』を企画しました。優勝者には3万Kを用意しています。がんばって下さい。しかし、ルールもありますよ? まず1、汚ない罵りのヤジをかけない事。2、負けた者に嫌味を言わない事。3、仲良くする事。ケンカはダメよ? ではトーナメントを組みたいので、トリスとテッセンが持っている箱から番号を引いて下さい。そして、右横に設置した番号に自分の名前を書いて下さい! あと、少しですが飲み物も用意しています。お酒があるけど飲みすぎないように!」
パチパチパチ~。大きな拍手と共にザワザワとくじ引きが開始される。
「だ、団長。いいですか?」
私と同じぐらい背の低い女性騎士とガッチリした筋肉女性騎士が話しかけてくる。
「ん? どうしたの?」
「私は男性に勝てる自信がないので参加しなくてもいいですか?」
「う~ん。いいけど… でもどうせ負けてもいいなら参加してみたら? 腕を組み合うだけでも楽しいよ? 後々、話のネタにもなるし。他の隊員と仲良くなれるチャンスじゃない?」
「そうですか?」
「そうだね~どうしても嫌なら棄権でもいいわよ? でも番号は引いてね? 数を合わせてトーナメントの紙を作ってしまったから。名前の横に棄権って書いてくれればいいし。でもよく考えてね。勝つ事だけがこの会の目的じゃないし。私はみんなに楽しんで欲しいんだ?」
「わかりました… そう仰るなら挑戦してみます!」
「うんうん。無理はしないでね。応援するよ、がんばって」
ちょっと気が弱いのかな? 納得してくれたみたいで、その女性騎士はハニカミながらお友達の女性騎士と番号を引きに向かって行った。
「ドーンは? 参加してよ? 私もするし」
「ええ。我々側近は最後に番号を引きましょう」
「了解。私も最後にしよっと。って、速攻で負けてそうだけど。ふふふ」
「私も途中で負けるでしょうね。若い奴が多いですから」
「そうなの? ドーンって結構隠れマッチョじゃないの?」
「そこそこですよ。もういい歳ですから」
「ふ~ん」
大方、番号を引き終わったようなので私も引きに行く。さてさて、誰が相手かな~。
「D組17番」
「お~!」
「誰と対戦だ?」
「おい、見えねぇ」
私のお相手はベテラン男性騎士だった。終わった。あはは、あの腕のヒトコブラクダ。見た目で既に負けたよ。ふえ~ん。1回戦は通過したかったな~。
「アレクは?」
「俺はB組だ」
「クルスは?」
「俺もBだ」
「お~、じゃぁ、追々当たるね~。トリスは?」
「俺はAだよ」
「ドーンは?」
「私もDです」
「え~。じゃぁ、仇取ってね。まだしてないけど、負けそうな相手なんだ~」
「ははは、開始前からそんな事ではいけませんぞ?」
「だって~。って、リックマイヤーは?」
「俺とコリーナはCだ。俺もこんな若い連中に勝てる気がしねぇ。副団長、あっちで飲もうや。コリーナ、あとは頼まぁ~」
「え~、リックマイヤーさん! ずるい!」
ドーンとリックマイヤーは連れ立って、食堂の隅の席へ移動して若い連中を肴に飲み始める。
「あ~いいな~。私も飲みたい」
「ダメだ。俺らはジャッジ役だろうが。じゃぁ、各組に側近が散らばったからよろしく~。早めに進行してくれ」
クルスの号令でグループに分かれて腕相撲大会が開始される。
「D組の人集まって~。このテーブルでするよ!」
トーナメントの紙を外して持って来た。え~っと、1回戦は~っと。
「ウラジールとロキ出て来て。1回戦始めるよ」
オヤジ騎士のウラジールと新人騎士のロキ。双方目の輝きが違う。キラキラだ。いや、ギラギラか? 多分お目当ては賞金なんだろうけど。気合い入りまくりだな~おい。
「では、双方手を組んで。用意、始め!」
ウラジールは日に焼けたデカい腕に青筋が立っている。一方、線の細い感じなのに譲らないロキ。結構、力は強いのかもね。
「ウラジール、やっちまえ~!」
「ロキ! がんばれ!」
双方、ブルブルと組み合っていたがウラジールが勝った。
「勝者、ウラジール」
「クソっ。もう少しだったのに~」
「まぁ、訓練すればお前にも筋肉がつくさ」
「う~、はい」
勝っても負けてもいい感じになってるな~。よしよし。
「じゃぁ、2回戦、ヨハンナとミッチェル」
あっ。さっきの小さい女性騎士じゃん。がんばれ~。
「参加してくれたんだね。ありがとう、がんばって」
「は、はい」
「では双方いい? 用意、始め!」
ガン。
一瞬で勝負はついたが、ヨハンナは笑っていた。よかった~。
「あはは、手が! ガンって。一瞬です! すごいです! すごいですミッチェルさん!」
「いや~。ごめんよ、力加減が出来なくて。痛くない?」
ポリポリと頭をかきながらヨハンナを気遣うミッチェル。おやおや? いい感じ?
「ヒューヒュー」
「他所でやれ、他所で」
「団長! 次だ」
「はいはい。じゃぁ、次ね… ん? どうしたの?」
「急ぎの用だそうです」
誰かが肩を叩く。食堂の入り口を指さされて見てみると、今日代理でやってくれているお爺ちゃん先生の騎士が来ていた。
「了解。誰か代わって?」
「おう俺が代ろう。さぁ、野朗共! 続きだ!」
さっき勝ったウラジールが代わってくれた。
私は人混みをすり抜けて、お爺ちゃん先生の所に行く。
「どうしたの?」
79
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
偽りの婚姻
迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。
終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。
夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。
パーシヴァルは妻を探す。
妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。
だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。
婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……
目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした
エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ
女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。
過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。
公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。
けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。
これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。
イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん)
※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。
※他サイトにも投稿しています。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる