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2章 王城と私
05 ミレニア嬢の罰
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私達はパーティー会場へ戻る前に、別室へ向かう。急がないと。
コンコンコン。
「お待たせして申し訳ございません」
一礼して部屋へ入ると、部屋の中央のソファーに、陛下、アレク、総団長、ユーグさんが座っていた。その他、副団長等のお付きの人は後ろで待機だ。
「ラモン、ここへ」
私は陛下に指定された末席に座る。
ご、豪華なメンバーだな。相手が公爵様だから? それとも王族主催だから?
「ラモン、こちらの令嬢だな?」
陛下は私達とは反対の広いスペースで礼をしているミレニア様を指す。横にはミレニア様のお父様かな? 男性が立っていた。
「はい」
「では、これより非公式の審議を始める。夜会中であるので時間が限られている。結論より申し述べる」
静かな部屋に陛下の声を響く。
「サックス公爵家ミレニア。この度、王家主催の夜会にて、そこのラモン・バーンへ飲み物を頭からかけると言う騒動を起こした事間違いないな?」
「はい」
蚊の鳴くような小さな声だ。すでに涙声になっている。
「何か申し開きは?」
ここで、男性が口を開く。
「陛下よろしいでしょうか? ミレニアが起こした失態、大変申し訳ございません。父親として、また公爵家当主としてお詫びいたします。さて、対するご令嬢ですが、私共のミレニア付きの侍女に聞いた所によると、本来居るはずのない下位貴族のご令嬢とか。更にはアレクサンダー王子に無礼を働いたと伺っております。我が娘は、公爵家の一員として少々過激ではありますが制裁を加えたものかと。いかがでしょうか?」
ふ~。一面的な物言いだな。娘の報告をちゃんと精査したのかな?
「そうか… その話を聞いたのは事件の後か? 前か?」
「前です」
「では、後の言葉は公爵の想像だな?」
「まぁ、そうですね。しかし、間違ってはいないかと」
こちらの陣営はお互いに顔を見合わせて、ため息をついている。そりゃそうだろ。は~。
「では、真実を伝えるゆえ、その上で判断せよ」
「真実ですか?」
「あぁ。ラモン、当事者だ。発言を許す」
陛下は私に丸投げしたよ。え~、ここで丸投げですか? へーへー、よっこいしょっと。
「はっ。御前を失礼致します。私、ラモン・バーン第7騎士団団長はそちらのミレニア嬢にいきなり冷水をかけられ、夜会の退出を促されました。理由を尋ねると、至極私怨な理由でございましたので、私の役職と夜会に参加している理由をお伝えしました。アレクサンダー様に関しても、私は上官であるとお伝えしました。するとミレニア様は『団長なのだから許せ。私は公爵家である』と仰いました。野次馬が少し騒がしくなって来たので私の一存で別室へ移動して頂いた次第です。役職をお伝えした際は、驚かれていたので、あまり確認せずに私に近寄ったと推察されます。以上です」
最後に敬礼して、再度座り直す。
「だ、団長?」
公爵様は私とミレニア様を交互に見て、驚愕の顔だ。
「これを聞いてどうだ? サックス公爵よ」
「だ、団長など… まさか… 腕章が見えなかったのか?」
「も、申し訳ございません、お父様。でも、まさかあんな若い女性が…」
サックス公爵は両手を頭に抱えて目がキョロキョロと挙動不審だ。
焦ってるな~。
「は~。サックス公爵、娘への教育不足だ。もし、ラモンが団長でなかったら、下位貴族にならその様な言動を許して良いのか? しかも王族主催の夜会であるぞ? それとも、その言動やマナーは公爵家では当たり前なのか?」
「い、いえ。そんな事は決して…」
「どの様な状況でも、下位貴族を辱めていいとは思わない。上位貴族であるなら尚更だ。矜持はないのか?」
「返す言葉がございません。申し訳ございません、陛下」
陛下は羽虫を見る様な目で公爵様を見ている。怖~。
「ラモンよ」
「はっ」
「そなたならこの始末どうつける?」
え~、また私? 陛下、丸投げしすぎでしょ。ほら、目が笑ってるじゃん。横の総団長も、ユーグさんも。
も~!!! 公爵様なんてすがる感じで私を見てくるし。止めて~。
「私は… 謝って頂ければそれで。幸い怪我もありませんし、誤解から生じた出来事ですから。ただ、団長とは言え仰る通り私は子爵位です。ドレスを弁償して頂ければ助かります。あとは、王族主催の夜会である事、『公爵家だから許される』発言に関しては、陛下にお任せいたします。私が判断する次元ではございません」
「ほぉ~。思慮深いのか危機回避能力が鋭いのか… わかった。では、私が判決を下す」
「は、はい」
サックス公爵とミレニア様がビクッとなって頭を下げる。
「サックス公爵家ミレニア嬢、ラモンに謝罪した後、領地にて3年間の蟄居、貴族としての再教育を受けなさい。並びに監督責任として当主は、ラモンにドレスの損害賠償金の支払いを。王族に対しての不敬でサックス領に対し1年間の増税。最後に、上位貴族として、爵位の意味と重みを再度胸に刻み直せ。恥を知れ、次はない」
「ぐっ。かしこまりました」
公爵様は深々と頭を下げる。が、ミレニア様はギャンギャン泣き出した。
「お、お父様~。あんまりですわ。3年も、3年も領地に篭っていたら行き遅れになります… ひどいわ~」
「ミレニア! 黙れ。まだ事の重みがわからないのか?」
「しかし… 」
え~んえ~んと泣くミレニア様。涙に濡れた美しいご令嬢。絵になるねぇ。でも、それだけ。
一同はこの親子を完全無視して、陛下が席を立ったと同時にそれぞれが動き出す。
「ラモンちゃん! そのドレスやっぱりステキね! この刺繍。薔薇に蔦! は~美しいわ~」
「ありがとうございます! 服に着られてる感は否めませんが、はは」
「そんな事ないわよ。髪もアップにしたのね? うん、似合ってる」
「も~、ユーグさん。そんなに褒めないで下さい。褒められ慣れてないんですから!」
「何それ~。あぁ、そうだ、サックス?」
そそくさと帰ろうとしたサックス公爵にユーグさんが声をかける。
「このドレス、それとあなたの娘が汚したドレスなんだけど、私がデザインした物なの。意味分かるわね? ちなみになんだけど、ドレスや宝石はクリス商会の会頭自らの贈答品よ?」
「は? そ、そんな豪華なドレス… た、確かに。かしこまりました」
サックス公爵はミレニア様をきっと睨み、腕を掴んで引きずりながら退出して行った。
「いいんですか? 相手は公爵様ですよ?」
「あら~、私も公爵様よ? 知らなかったの? 公爵家も5つあるんだけど序列があるのよ」
「へぇ~、色々あるんですね」
「ふふふ。私の家は公爵家筆頭なの。だから大丈夫」
「ははは、筆頭とか… 私、とんでもない人と… 明日暗殺されてるとかないですよね? お願いしますよ」
「ばかね~。今更よ。それより身分を聞いて余所余所しくしないでよ~」
「う~ん、努力します。って、私がそんな器用な真似は出来ませんよ! 逆に、ユーグさんが私を許して下さいよ。牢屋行きは勘弁」
「許すも何も、友人じゃない」
「ユーグさん! 大好き!」
と、ハグしようとしたらドーンに止められた。あれ?
「団長、それ以上は必要ないかと」
「ドーンったら。相変わらずね~。じゃぁ、私達もそろそろ行きましょうか?」
お忙しい陛下はもう居ないし、私達とアレク達以外も夜会へ向かってしまっていた。
ユーグさんが手を差し出したので、エスコートかなっと私も手を出した所で、アレクが入ってくる。
「ユーグナー。譲ってもらおうか?」
「え~、このタイミングで? ずるくない?」
「今程、王子に生まれてよかったと思った事はない。ははは。ドーンも承知せよ」
ドーンは細っい目で睨んで無言だ。ユーグさんは苦笑いで、ちょっと面白がっている。
「は~。しょうもないケンカしないで。会場へ向かうだけじゃん。行こう!」
「あぁ」
アレクと私。その後ろからドーンとユーグさん、トリス、クルスが続く。
まっ、入場前で手を離せばいいか。
コンコンコン。
「お待たせして申し訳ございません」
一礼して部屋へ入ると、部屋の中央のソファーに、陛下、アレク、総団長、ユーグさんが座っていた。その他、副団長等のお付きの人は後ろで待機だ。
「ラモン、ここへ」
私は陛下に指定された末席に座る。
ご、豪華なメンバーだな。相手が公爵様だから? それとも王族主催だから?
「ラモン、こちらの令嬢だな?」
陛下は私達とは反対の広いスペースで礼をしているミレニア様を指す。横にはミレニア様のお父様かな? 男性が立っていた。
「はい」
「では、これより非公式の審議を始める。夜会中であるので時間が限られている。結論より申し述べる」
静かな部屋に陛下の声を響く。
「サックス公爵家ミレニア。この度、王家主催の夜会にて、そこのラモン・バーンへ飲み物を頭からかけると言う騒動を起こした事間違いないな?」
「はい」
蚊の鳴くような小さな声だ。すでに涙声になっている。
「何か申し開きは?」
ここで、男性が口を開く。
「陛下よろしいでしょうか? ミレニアが起こした失態、大変申し訳ございません。父親として、また公爵家当主としてお詫びいたします。さて、対するご令嬢ですが、私共のミレニア付きの侍女に聞いた所によると、本来居るはずのない下位貴族のご令嬢とか。更にはアレクサンダー王子に無礼を働いたと伺っております。我が娘は、公爵家の一員として少々過激ではありますが制裁を加えたものかと。いかがでしょうか?」
ふ~。一面的な物言いだな。娘の報告をちゃんと精査したのかな?
「そうか… その話を聞いたのは事件の後か? 前か?」
「前です」
「では、後の言葉は公爵の想像だな?」
「まぁ、そうですね。しかし、間違ってはいないかと」
こちらの陣営はお互いに顔を見合わせて、ため息をついている。そりゃそうだろ。は~。
「では、真実を伝えるゆえ、その上で判断せよ」
「真実ですか?」
「あぁ。ラモン、当事者だ。発言を許す」
陛下は私に丸投げしたよ。え~、ここで丸投げですか? へーへー、よっこいしょっと。
「はっ。御前を失礼致します。私、ラモン・バーン第7騎士団団長はそちらのミレニア嬢にいきなり冷水をかけられ、夜会の退出を促されました。理由を尋ねると、至極私怨な理由でございましたので、私の役職と夜会に参加している理由をお伝えしました。アレクサンダー様に関しても、私は上官であるとお伝えしました。するとミレニア様は『団長なのだから許せ。私は公爵家である』と仰いました。野次馬が少し騒がしくなって来たので私の一存で別室へ移動して頂いた次第です。役職をお伝えした際は、驚かれていたので、あまり確認せずに私に近寄ったと推察されます。以上です」
最後に敬礼して、再度座り直す。
「だ、団長?」
公爵様は私とミレニア様を交互に見て、驚愕の顔だ。
「これを聞いてどうだ? サックス公爵よ」
「だ、団長など… まさか… 腕章が見えなかったのか?」
「も、申し訳ございません、お父様。でも、まさかあんな若い女性が…」
サックス公爵は両手を頭に抱えて目がキョロキョロと挙動不審だ。
焦ってるな~。
「は~。サックス公爵、娘への教育不足だ。もし、ラモンが団長でなかったら、下位貴族にならその様な言動を許して良いのか? しかも王族主催の夜会であるぞ? それとも、その言動やマナーは公爵家では当たり前なのか?」
「い、いえ。そんな事は決して…」
「どの様な状況でも、下位貴族を辱めていいとは思わない。上位貴族であるなら尚更だ。矜持はないのか?」
「返す言葉がございません。申し訳ございません、陛下」
陛下は羽虫を見る様な目で公爵様を見ている。怖~。
「ラモンよ」
「はっ」
「そなたならこの始末どうつける?」
え~、また私? 陛下、丸投げしすぎでしょ。ほら、目が笑ってるじゃん。横の総団長も、ユーグさんも。
も~!!! 公爵様なんてすがる感じで私を見てくるし。止めて~。
「私は… 謝って頂ければそれで。幸い怪我もありませんし、誤解から生じた出来事ですから。ただ、団長とは言え仰る通り私は子爵位です。ドレスを弁償して頂ければ助かります。あとは、王族主催の夜会である事、『公爵家だから許される』発言に関しては、陛下にお任せいたします。私が判断する次元ではございません」
「ほぉ~。思慮深いのか危機回避能力が鋭いのか… わかった。では、私が判決を下す」
「は、はい」
サックス公爵とミレニア様がビクッとなって頭を下げる。
「サックス公爵家ミレニア嬢、ラモンに謝罪した後、領地にて3年間の蟄居、貴族としての再教育を受けなさい。並びに監督責任として当主は、ラモンにドレスの損害賠償金の支払いを。王族に対しての不敬でサックス領に対し1年間の増税。最後に、上位貴族として、爵位の意味と重みを再度胸に刻み直せ。恥を知れ、次はない」
「ぐっ。かしこまりました」
公爵様は深々と頭を下げる。が、ミレニア様はギャンギャン泣き出した。
「お、お父様~。あんまりですわ。3年も、3年も領地に篭っていたら行き遅れになります… ひどいわ~」
「ミレニア! 黙れ。まだ事の重みがわからないのか?」
「しかし… 」
え~んえ~んと泣くミレニア様。涙に濡れた美しいご令嬢。絵になるねぇ。でも、それだけ。
一同はこの親子を完全無視して、陛下が席を立ったと同時にそれぞれが動き出す。
「ラモンちゃん! そのドレスやっぱりステキね! この刺繍。薔薇に蔦! は~美しいわ~」
「ありがとうございます! 服に着られてる感は否めませんが、はは」
「そんな事ないわよ。髪もアップにしたのね? うん、似合ってる」
「も~、ユーグさん。そんなに褒めないで下さい。褒められ慣れてないんですから!」
「何それ~。あぁ、そうだ、サックス?」
そそくさと帰ろうとしたサックス公爵にユーグさんが声をかける。
「このドレス、それとあなたの娘が汚したドレスなんだけど、私がデザインした物なの。意味分かるわね? ちなみになんだけど、ドレスや宝石はクリス商会の会頭自らの贈答品よ?」
「は? そ、そんな豪華なドレス… た、確かに。かしこまりました」
サックス公爵はミレニア様をきっと睨み、腕を掴んで引きずりながら退出して行った。
「いいんですか? 相手は公爵様ですよ?」
「あら~、私も公爵様よ? 知らなかったの? 公爵家も5つあるんだけど序列があるのよ」
「へぇ~、色々あるんですね」
「ふふふ。私の家は公爵家筆頭なの。だから大丈夫」
「ははは、筆頭とか… 私、とんでもない人と… 明日暗殺されてるとかないですよね? お願いしますよ」
「ばかね~。今更よ。それより身分を聞いて余所余所しくしないでよ~」
「う~ん、努力します。って、私がそんな器用な真似は出来ませんよ! 逆に、ユーグさんが私を許して下さいよ。牢屋行きは勘弁」
「許すも何も、友人じゃない」
「ユーグさん! 大好き!」
と、ハグしようとしたらドーンに止められた。あれ?
「団長、それ以上は必要ないかと」
「ドーンったら。相変わらずね~。じゃぁ、私達もそろそろ行きましょうか?」
お忙しい陛下はもう居ないし、私達とアレク達以外も夜会へ向かってしまっていた。
ユーグさんが手を差し出したので、エスコートかなっと私も手を出した所で、アレクが入ってくる。
「ユーグナー。譲ってもらおうか?」
「え~、このタイミングで? ずるくない?」
「今程、王子に生まれてよかったと思った事はない。ははは。ドーンも承知せよ」
ドーンは細っい目で睨んで無言だ。ユーグさんは苦笑いで、ちょっと面白がっている。
「は~。しょうもないケンカしないで。会場へ向かうだけじゃん。行こう!」
「あぁ」
アレクと私。その後ろからドーンとユーグさん、トリス、クルスが続く。
まっ、入場前で手を離せばいいか。
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