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2章 王城と私
20 招待状
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あれから防犯笛が王城で鳴る事はなかった。もう4月も半ばになる。
一緒の時期に捕まった男爵が、スケープゴートとして公開裁判されそのニュースが貴族界に広まった為だ。
この春には、国中の貴族のご令嬢が侍女募集に殺到したと侍女長に泣いて喜ばれた。ただ、継承放棄したとはいえ、まだ独身の2人の王子様目当てのお嬢様方が中心だそうで、少し手こずっているらしい。と言いながら、笑顔だったので良かったのだろう。うんうん、がんばれ。
「ドーン、平和だね~。こう暖かいと眠くなるよ」
「春も半ばになりましたしね。そう言えばドレスのご用意は出来ていますか?」
「ん?」
「皇太子殿下とイバンナ様の婚約披露のパーティーです」
「え? 団長服じゃないの?」
「違います」
「なら、この前公爵様に頂いたドレスか、まだ着ていないのがもう1着あるから。大丈夫」
「… そうですか」
そんな話をしていたら、珍しいお客さんがやって来た。
「ラモン、久しぶりだな? 今いいか?」
「あ~! アレク! トリスも、久しぶり~」
会議で顔を合わす事はあったが、まともに話す機会がなかった2人。何ヶ月ぶりだろう?
「どうぞ。めっちゃ久しぶりだね。第4はどう?」
「あぁ、あの事件のおかげである令嬢の付きまといから解放された。おかげでラモンにも会えなかったしな。今は、別の令嬢達が増えたが、所詮は遠目で見てるだけだしな。すっかり第4の業務に身が入るようになった。ありがとう」
「そんなに大変だったの? ご苦労様。第4って王宮が主だからすれ違ったりしないもんね」
「そうだな。それよりこれを」
アレクが手紙を差し出してくる。後ろでドーンが『チッ』と舌打ちした。
「何これ? 今開けていい?」
「あぁ。目を通してくれ。先に言うが~」
「アレク殿! 団長は他の方と面会がありますので今日はこれでお帰り下さい!」
いきなりドーンが大きな声でアレクの話を遮った。
「ど、どうしたの? びっくりした~。今日は何にもないじゃん」
ハテナになっている私を余所に、ドーンはアレクを追い返そうとする。
「アレク殿! さぁ」
と、ドアを開けて退出を促すドーン。
「ドーン、ラモンは用はないと言っている。諦めろ」
アレクはソファーに足を組んでニヤニヤしながら動こうとしない。その様子を見ているトリスは口を押さえて声を殺して笑っている。
ドーンはあからさまに不機嫌な態度でドアを閉め、戻るついでにトリスの頭をはたいた。
「痛っ。八つ当たりじゃん」
ボソッとこぼしたトリスをギロっと無言で睨むドーン。
ん? 何? 私だけ分かってない感じ?
「さぁ、ラモン。手紙を見てくれ、招待状だ」
「招待状?」
何々? 皇太子殿下とイバンナ様の~。
「これ、さっきもドーンと話してたんだよ。婚約披露のパーティーのだね」
「あぁ、それでな、パートナーとして一緒に行ってくれないか?」
ドーンから冷気が漂う。殺気がビンビンだよ。
「あ~。ドーン? ちょっと抑えて。てか、私はダメだよ」
「なぜだ?」
「だって団長同士じゃん。無理じゃない?」
「そんなルールはない。団長同士でも問題はない」
「そうなの? でも、他にいるでしょう、アレクなら」
「いや、ラモンがいいんだ」
ニコニコとアレクは答えを変えない。トリスはニヤニヤして傍観している。
「そう… う~ん。わかった」
「な!」
「ヒュ~」
「よし」
「え? え?」
どう言う反応? 簡単にOKし過ぎた?
「団長、きちんと考えて下さい」
ドーンが低~い声で注意してくる。
「いや、だって、私も行く人いないし… ドーンと行った方がいいのかな? ん?」
ちょっと怖いんですけど。ドーンの目力が怖い。
「ドーン、横入りは紳士としてどうなのだ? いつも近くに居るくせに出遅れたお前が悪い」
「クッ。クソガキが」
ケンカか? おい。
「ドーン落ち着いて。たかがパーティーの連れじゃない。お互いいないから行こうって事でしょ? 深く考えない方がいいよ。アレクはね、モテ過ぎてちょっと女性が苦手なんだよ。協力してあげなきゃ」
「ぷっ。アレク不憫」
またまたボソッとトリスが口走る。ドーンも冷気が治まったようだ。
「ははははは、そうですな。不憫な王子の友人として協力してあげないと、ですな。ははははは。私は団長とファーストダンスの約束もありますし、ここは譲って差し上げましょう」
「ダンス! クソッ、老いぼれが」
「老いぼれだと? クソガキ、表に出ろ」
2人はガンをつけ合い、今にも殴りかかりそうになっている。
「ちょっ。何でそうなるのよ。アレク座って。ドーンも。仲良くしてよ」
「団長ちゃん、鈍すぎでしょ。それともワザと? まぁ、オモロいから俺はどっちでもいいけど、ぷぷぷ」
は~。薄々はわかっていますよ。はいはい。逃げてますよ。だってね~。選べないじゃん。どっちも大切だし、どっちも友人の域を超えていない。
「トリス、ややこしくしないで。今はそう言うのはいいから」
「「!!!」」
2人は私の囁きを拾ってバッとこっちを見てくる。圧が、だから怖いって。
「あはは。この話あんまりしたくないんだけど?」
「ごほん。まぁ、今はいい。俺も不本意な形で聞きたくない」
「ん」
アレクはすんなり引いてくれて、ドーンはスッといつもの様に後ろに戻る。
「団長ちゃん… 実は魔性なの? 焦らすの上手いね~」
「トリス! 無駄口しか叩かないなら外に出すわよ?」
「は~い。すみませ~ん」
…。
気不味い。
間が。
…。
「まぁ、何だ。当日迎えに行く。ここに居てくれ」
「りょ、了解」
アレクは照れているのか、目を逸らしてそれだけ言って帰って行った。
…。
残された私とドーン。と、実は団長室の隅で話を聞いていたゲインとキリス。ごめん。
変な空気の中でその日は業務に勤しんだ。じっと、ずっと耐えたよ。この重い空気に。
は~。
前世でもモテた事のない私。こう言う場合はどうしたらいいのか。
一緒の時期に捕まった男爵が、スケープゴートとして公開裁判されそのニュースが貴族界に広まった為だ。
この春には、国中の貴族のご令嬢が侍女募集に殺到したと侍女長に泣いて喜ばれた。ただ、継承放棄したとはいえ、まだ独身の2人の王子様目当てのお嬢様方が中心だそうで、少し手こずっているらしい。と言いながら、笑顔だったので良かったのだろう。うんうん、がんばれ。
「ドーン、平和だね~。こう暖かいと眠くなるよ」
「春も半ばになりましたしね。そう言えばドレスのご用意は出来ていますか?」
「ん?」
「皇太子殿下とイバンナ様の婚約披露のパーティーです」
「え? 団長服じゃないの?」
「違います」
「なら、この前公爵様に頂いたドレスか、まだ着ていないのがもう1着あるから。大丈夫」
「… そうですか」
そんな話をしていたら、珍しいお客さんがやって来た。
「ラモン、久しぶりだな? 今いいか?」
「あ~! アレク! トリスも、久しぶり~」
会議で顔を合わす事はあったが、まともに話す機会がなかった2人。何ヶ月ぶりだろう?
「どうぞ。めっちゃ久しぶりだね。第4はどう?」
「あぁ、あの事件のおかげである令嬢の付きまといから解放された。おかげでラモンにも会えなかったしな。今は、別の令嬢達が増えたが、所詮は遠目で見てるだけだしな。すっかり第4の業務に身が入るようになった。ありがとう」
「そんなに大変だったの? ご苦労様。第4って王宮が主だからすれ違ったりしないもんね」
「そうだな。それよりこれを」
アレクが手紙を差し出してくる。後ろでドーンが『チッ』と舌打ちした。
「何これ? 今開けていい?」
「あぁ。目を通してくれ。先に言うが~」
「アレク殿! 団長は他の方と面会がありますので今日はこれでお帰り下さい!」
いきなりドーンが大きな声でアレクの話を遮った。
「ど、どうしたの? びっくりした~。今日は何にもないじゃん」
ハテナになっている私を余所に、ドーンはアレクを追い返そうとする。
「アレク殿! さぁ」
と、ドアを開けて退出を促すドーン。
「ドーン、ラモンは用はないと言っている。諦めろ」
アレクはソファーに足を組んでニヤニヤしながら動こうとしない。その様子を見ているトリスは口を押さえて声を殺して笑っている。
ドーンはあからさまに不機嫌な態度でドアを閉め、戻るついでにトリスの頭をはたいた。
「痛っ。八つ当たりじゃん」
ボソッとこぼしたトリスをギロっと無言で睨むドーン。
ん? 何? 私だけ分かってない感じ?
「さぁ、ラモン。手紙を見てくれ、招待状だ」
「招待状?」
何々? 皇太子殿下とイバンナ様の~。
「これ、さっきもドーンと話してたんだよ。婚約披露のパーティーのだね」
「あぁ、それでな、パートナーとして一緒に行ってくれないか?」
ドーンから冷気が漂う。殺気がビンビンだよ。
「あ~。ドーン? ちょっと抑えて。てか、私はダメだよ」
「なぜだ?」
「だって団長同士じゃん。無理じゃない?」
「そんなルールはない。団長同士でも問題はない」
「そうなの? でも、他にいるでしょう、アレクなら」
「いや、ラモンがいいんだ」
ニコニコとアレクは答えを変えない。トリスはニヤニヤして傍観している。
「そう… う~ん。わかった」
「な!」
「ヒュ~」
「よし」
「え? え?」
どう言う反応? 簡単にOKし過ぎた?
「団長、きちんと考えて下さい」
ドーンが低~い声で注意してくる。
「いや、だって、私も行く人いないし… ドーンと行った方がいいのかな? ん?」
ちょっと怖いんですけど。ドーンの目力が怖い。
「ドーン、横入りは紳士としてどうなのだ? いつも近くに居るくせに出遅れたお前が悪い」
「クッ。クソガキが」
ケンカか? おい。
「ドーン落ち着いて。たかがパーティーの連れじゃない。お互いいないから行こうって事でしょ? 深く考えない方がいいよ。アレクはね、モテ過ぎてちょっと女性が苦手なんだよ。協力してあげなきゃ」
「ぷっ。アレク不憫」
またまたボソッとトリスが口走る。ドーンも冷気が治まったようだ。
「ははははは、そうですな。不憫な王子の友人として協力してあげないと、ですな。ははははは。私は団長とファーストダンスの約束もありますし、ここは譲って差し上げましょう」
「ダンス! クソッ、老いぼれが」
「老いぼれだと? クソガキ、表に出ろ」
2人はガンをつけ合い、今にも殴りかかりそうになっている。
「ちょっ。何でそうなるのよ。アレク座って。ドーンも。仲良くしてよ」
「団長ちゃん、鈍すぎでしょ。それともワザと? まぁ、オモロいから俺はどっちでもいいけど、ぷぷぷ」
は~。薄々はわかっていますよ。はいはい。逃げてますよ。だってね~。選べないじゃん。どっちも大切だし、どっちも友人の域を超えていない。
「トリス、ややこしくしないで。今はそう言うのはいいから」
「「!!!」」
2人は私の囁きを拾ってバッとこっちを見てくる。圧が、だから怖いって。
「あはは。この話あんまりしたくないんだけど?」
「ごほん。まぁ、今はいい。俺も不本意な形で聞きたくない」
「ん」
アレクはすんなり引いてくれて、ドーンはスッといつもの様に後ろに戻る。
「団長ちゃん… 実は魔性なの? 焦らすの上手いね~」
「トリス! 無駄口しか叩かないなら外に出すわよ?」
「は~い。すみませ~ん」
…。
気不味い。
間が。
…。
「まぁ、何だ。当日迎えに行く。ここに居てくれ」
「りょ、了解」
アレクは照れているのか、目を逸らしてそれだけ言って帰って行った。
…。
残された私とドーン。と、実は団長室の隅で話を聞いていたゲインとキリス。ごめん。
変な空気の中でその日は業務に勤しんだ。じっと、ずっと耐えたよ。この重い空気に。
は~。
前世でもモテた事のない私。こう言う場合はどうしたらいいのか。
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