転生騎士団長の歩き方

Akila

文字の大きさ
69 / 100
2章 王城と私

19 断罪

しおりを挟む
「いやはや、賭けは私の勝ちですな」

ドーンはホクホク顔で上機嫌だ。

「でもなんで息子が捕まるって分かったの?」

「簡単ですよ。通達は家に送ります。あのトロイ・タッカーは遊び歩いているので有名ですからね。団にも家にも通達が送られても、本人の耳に届くのは随分後、遅くなると予想しました」

「でもでもあの日に限って親子で不貞を働く? 同じ日なんて偶然過ぎない?」

「それはあの日、王城内の食堂でやつを見かけたからですよ。王城に来ていると知っていたのです」

「せ~こ~い~!」

「ふふふ、まぁ私も賭けでしたが… まさか本当に不貞を働くとは。バカで助かりました。いえ、失言です。相手の侍女に失礼でした」

「まぁ約束だしぃ、今度の夜会でダンスをしますぅ」

『稲妻ブレーン』健在なり。ちぇ~。でもま~、アホが捕まったし。良しとしよう。

「はい。それでは今日は審議会です。第6に参りましょう」

「へいへい」



「これより非公式にて審議会を始める。イグナーツ・タッカー、トロイ・タッカー前へ」

審議の場には、陛下と第1の総団長、総副団長、皇太子殿下、私、ドーン、そして第6の騎士が数人。そうそうたるメンバーが集まった。

「タッカー伯爵家両2名、先日、王城にて侍女とメイドに無体を働いた事、相違ないな?」

「陛下、直々にですか?」

「あぁ。罪状に意はあるか?」

「はい。私はメイドの粗相に手をあげただけです。牢に入れられるいわれはありません」

「そうか。トロイ・タッカーはどうだ?」

「… 私は第2の団長です。こんな屈辱。団長として風紀を正しておりました。それをあの侍女が騒ぎ立てて~」

「もうよい。聞くに耐えんな」

後ろに手を組んで膝を付いているこの親子。全く反省の色が見えない。はぁ~。

陛下はあからさまに苛立っている。皇太子殿下は… めっちゃ目が怖い。細~い目で睨んでいる。

「陛下。行き違いがあった事は水に流しましょう。私は心が広いですからね、そこの小娘、団長だと声高に私を早とちりでこうして縄にかけた過去は目を瞑って差し上げます。我々は未来の親族ではございませんか、陛下? あなた様のお心一つでどうにでもなるでしょう? 早く縄を解いて頂きたい」

こいつ、空気が読めない君だったとは… 恐るべしイグナーツ。よくこんな怖~い場所で訳わかんない持論を展開できるなぁ。まっ、だから捕まったんだけど。ぷぷ。

「黙れ! 恥を知れ。イバンナへの迷惑を1度でも考えなかったのか?」

皇太子殿下の怒りが爆発してしまった。わぉ!

「ははは、何をそんなに怒ってらっしゃるのです、ミハエル様。イバンナは貴方様が見初めた通り完璧な淑女ですよ? 男の、当主の願いにはいつだって従順です。あなたも分かってらっしゃるでしょうに、へへへ。あいつは私のした事には従います。ですので、今回も~」

「今回も? 今回も何だ? いつものようにムチで打って言う事を聞かせると?」

「… ム、ムチですか? はて、何の事やら、ははははは」

イグナーツは冷や汗をかいて必死に誤魔化してるのが丸出しだ。

私は思わずドーンを見る。ムチ打ち? 娘に? 信じられない。ドーンは下を向いて目を瞑っていた。ムカついてるんだね。私もだよ。

「白々しい… 父上! この貴族の風上にも置けないクズ。どうか、どうか相応の罰をお願いします! 許されるべきではありません!」

「ミハエル、落ち着け、そして違えるな。この審議はメイドへの陵辱、強姦が焦点だ」

「し、しかし! … 申し訳ございません。グッ」

はい、ここでまた空気読めない君2号。

「陛下も殿下も、も、もしですよ、もしそんな事を我々がしたとしたら、未来の親族です。王族にも影響が出るのでは? ここはひとつ穏便にいきましょう」

と、息子のトロイも変な事を言い出した。

終わったな。この親子。

陛下はバカな物言いに何とか心を落ち着けようと目を瞑って深呼吸をした。

「ふ~。現場を押さえた第1騎士団長、第3騎士団長。何か付け加える事はあるか?」

まず第1期師団長のハドラー様が進言する。

「当時の状況は繰り返し申し上げる事ではありませんので報告書通りです。私は陛下のご判断に委ねます」

「第3は?」

「はい、私もハドラー様と同じ意見です」

「わかった」

しばらく沈黙が続き、陛下が静かに話し出す。

「まず、イグナーツ・タッカー。お前は伯爵家当主でありながら、王城にて強姦・脅迫・買収をした。上位貴族としても人としても恥じる行為である。よって、爵位剥奪の上流刑。その生が終わるまで罪をあがなえ」

「な! 私はイバンナの父親ですぞ! そんな流刑など! 貴族の恥です!」

「黙れ! お前は知らないのか? あぁ、娘から聞いてないのか。ははは、今までの行いが返って来たんだな。きちんと登城した際に、娘に会っていれば少しは未来が変わったものを。娘を虐げてきた罰がここで返って来るとは。イバンナは3日前に辺境伯へ養子に出ている。もうお前の娘ではない!」

「ま、まさか! そんな事、私は了諾していないぞ! 養子縁組など無効だ! こんな話聞いていない! イバンナを出せ!」

イグナーツにもう逃げ道はない。足掻いているが無駄だろう。伝家の宝刀の『イバンナ』様にまで見放されたんだ、いい気味。

「殿下! 嘘ですよね? 妹が、あのイバンナが我々を裏切るなど…」

「裏切る? 散々虐げておきながらよくそんな事が言えるものだ。最初からお前達など彼女の中には存在しない! その汚い口で彼女の名を呼ぶな!」

「そ、そんなぁ…」

トロイは床に頭を打ち付けて絶望している。

一方、イグナーツは下を向いて突然笑い出した。

「ふふ、ふははははは。私を罪に問えるものか! 娘の出自を知っているのか? 王族だから調べたはずだ! それこそ醜聞だろ! えぇ! 未来の王妃イバンナは、イバンナこそ、昔王城へ見習いに来ていた侍女の… うっ」

イグナーツが話し終える前に、スナッチ副団長が後ろ首にサッと手刀して失神させた。

「出過ぎた真似を。御前を失礼しました」

「よい。皆、今の話は忘れるように」

「「「「はっ」」」」

ペラペラ、ペラペラと余計な事まで。本当に… 死ねばいいのに。

「はぁ、次だ。トロイ・タッカー。お前は未遂だったが王城にて侍女に無体を働いた。しかも勤務中にだ。本来、民を守る騎士の団長である事を忘れていたのか? 胸糞悪い。よって、お前もそこの父親同様、爵位剥奪の上流刑だ」

トロイは頭を下げたままピクリともしない。だんまりだ。もう諦めたのかな?

「陛下、もう一人の娘はいかが致しましょう? 領地にはイグナーツの妻もおりますが?」

「そうだったな。もう一人の娘は父親が爵位を失ったのだ、修道院へ。妻の方は実家に帰せ。万一、実家が拒否した場合は同じく修道院へ送れ」

「御意」

陛下はひとつため息を吐いてから立ち上がった。

「皆、これは非公式だ。決して外に出してはいかん。それと、ラモン」

え? 私?

「ひゃい」

いきなりだから噛んじゃったじゃん。

「今回の『防犯笛』、よくやった」

「ありがとうございます」

「ふ~、よし。これにて閉廷」

ミハエル様はしばらくの間、拳を硬く握り締めこの親子をじっと睨んでいた。

私とドーンは無言で会場を出る。そしてそれに続く誰もが厳しい表情で会場を後にした。
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

処理中です...