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2章 王城と私
26 秘めた想い
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「ラモンちゃん、ドレス決めた?」
いつものように、就業時間の終了間際にユーグさんが第3に来てお茶をしている。
「婚約パーティーのやつですか? それなら以前クリスタルさんに頂いた、袖を通していないドレスがあるので。キリス、それ取って」
私はまだ残っている書類と葛藤中だ。カキカキ。
「あぁ! そうだったわ~、私ったら。いつも自分のは夜会毎にあつらえてるから忘れちゃってたわ。じゃぁ、今度の婚約披露パーティーは万全ね? エスコートは決まったの?」
「え? はぁ、まぁ」
「え~誰よ? それとも当日のお楽しみなの?」
「アレクですよ」
「あら、やけにあっさりね?」
「だって友人枠ですから」
「ふ~ん。ドーンは?」
「私は一人で。息子に付き添います」
「確か、上の息子さんが3年前に結婚して爵位を継いだのよね?」
「えぇお陰様で。孫も生まれましたよ? ウチは後継者問題がないので楽なもんです」
「ま、孫!!! 見えない… その若さの秘密を教えて欲しいわ~。て、ラモン終わった?」
「まだです。あと少し… ちょっとこれ直接渡してきます。その方が早い気がする。キリスついて来て? ドーン、第2まで行って来る~」
「了解です。いてらっしゃいませ」
「早くしてね~、私はドーンとお話ししてるわ。それで? 下の息子さんは独身なの?」
「あはは、まだ成人したばかりの小僧です。今年から第6でお世話になっております」
「第6なの! すごいわね~。そっか~、今から青春かぁ。懐かしいような、青臭くて… ちょっと昔の自分を思い出したらサブイボが出ちゃった~。やだ~」
「ユーグ殿もまだまだこれからでしょう? 今回のお相手もまた例のご令嬢でしょうか?」
「そうよ。まだまだ婚約続行中のカレンよ。彼女元気かしら? この前の夜会以来ね~ちょうど半年ぶりぐらいかな?」
「カレン嬢といいユーグ殿も。いい加減ご結婚されないと痺れを切らして勘当されますぞ? もう5年になるんじゃないですか? 公爵家筆頭でしょうに、全く」
「いいのよ。私とカレンはお互い合意の上で婚約期間を延長し続けているんだから。それに、ちゃんと夜会には必ずカレンと同伴するし、遊びも浮気もしてないしね」
「遊びもなしとなると… ご両親としては言い辛いですね、結婚しろとは。念の為ですが、愛し合ってるんですよね? こんなに長く続くと言う事は?」
「あはははは。ドーン、あなたも上位貴族じゃない! 愛? 私達の間には親愛みたいな情はあるけど、情熱的な愛はないわ。ドーン、どうしたの? 珍しい。あなたも奥様とは政略結婚でしょうに」
「まぁ、そうですね。アレとは義務が勝っていた結婚でした」
「そうよ、変な人。ん? あぁ~、あの子ね? ふ~ん。その顔は… で? どうなの、本当の所は?」
「え? 彼女は… 先ほどユーグ殿が仰ったような親愛でしょうか? 正直それに似た感情は抱いています」
「うそ! 本当に! じゃぁ…」
「ダメですぞ。それ以上は言ってはいけません。私の歳をご存じでしょう? 親子ほど離れています。まだまだ瑞々しい彼女には不釣り合いです。私は副団長として毎日側に居るだけで十分幸せなのです」
「で、でも… この先彼女だっていい人と~ってなるわよ? そんな近くじゃ我慢出来るの?」
「… その時はその時です、ね。それこそ、今度こそ引退して領地の隅で農夫をやります。いや、違うなぁ。今ならこのまま部下として、そうだ。このまま居られる時まで側にい続けるでしょうね」
「そこまでなの… 分かった。今のは私だけの心に留めておくわ。でもアレクもあなたも… あの鈍感変人。不憫だわ~。他にキレイで聡明なご令嬢なんて星の数多居るでしょうにね」
「えぇ不思議なもので、今まで気が付かなかった自分が恥ずかしい。この歳になって、恋も愛も… 人に堕ちる瞬間を体験出来た事は一生の宝物ですな。上位貴族としてこのまま淡々と仕事をしていたら起こり得なかった事です。出逢えた事に感謝です」
「そうねぇ。私もちょっと分かるわ。彼女の人柄に惹かれると言うか、堕ちるか。うん、何となく分かる」
「ははははは」
「ふふふ」
「すみません! お待たせしました! で? 何の話してたんですか?」
「世間話よ。それより、あなた、当日は私の侍女を派遣するから朝からちゃんと起きてるのよ?」
「はぁ? 朝って。パーティーは夜ですよ? それに警備の最終確認が昼に残ってます」
「おバカ! そう言うのは部下に割り振りなさい。何の為に側近がいるのよ!」
「だって…」
「団長? 私が最終確認までやっておきますので。心置きなく準備をして下さい。私はその後のダンスを楽しみにしていますので!」
「う~、じゃぁお願いね、ドーン」
「了解です」
ユーグさんは多分、ドレスと侍女の件を言いに来てくれたんだろう。思い通りに行ってスッキリしたのか、優雅にお茶を飲んでいる。私もお菓子をつまんで一息ついた。
いつものように、就業時間の終了間際にユーグさんが第3に来てお茶をしている。
「婚約パーティーのやつですか? それなら以前クリスタルさんに頂いた、袖を通していないドレスがあるので。キリス、それ取って」
私はまだ残っている書類と葛藤中だ。カキカキ。
「あぁ! そうだったわ~、私ったら。いつも自分のは夜会毎にあつらえてるから忘れちゃってたわ。じゃぁ、今度の婚約披露パーティーは万全ね? エスコートは決まったの?」
「え? はぁ、まぁ」
「え~誰よ? それとも当日のお楽しみなの?」
「アレクですよ」
「あら、やけにあっさりね?」
「だって友人枠ですから」
「ふ~ん。ドーンは?」
「私は一人で。息子に付き添います」
「確か、上の息子さんが3年前に結婚して爵位を継いだのよね?」
「えぇお陰様で。孫も生まれましたよ? ウチは後継者問題がないので楽なもんです」
「ま、孫!!! 見えない… その若さの秘密を教えて欲しいわ~。て、ラモン終わった?」
「まだです。あと少し… ちょっとこれ直接渡してきます。その方が早い気がする。キリスついて来て? ドーン、第2まで行って来る~」
「了解です。いてらっしゃいませ」
「早くしてね~、私はドーンとお話ししてるわ。それで? 下の息子さんは独身なの?」
「あはは、まだ成人したばかりの小僧です。今年から第6でお世話になっております」
「第6なの! すごいわね~。そっか~、今から青春かぁ。懐かしいような、青臭くて… ちょっと昔の自分を思い出したらサブイボが出ちゃった~。やだ~」
「ユーグ殿もまだまだこれからでしょう? 今回のお相手もまた例のご令嬢でしょうか?」
「そうよ。まだまだ婚約続行中のカレンよ。彼女元気かしら? この前の夜会以来ね~ちょうど半年ぶりぐらいかな?」
「カレン嬢といいユーグ殿も。いい加減ご結婚されないと痺れを切らして勘当されますぞ? もう5年になるんじゃないですか? 公爵家筆頭でしょうに、全く」
「いいのよ。私とカレンはお互い合意の上で婚約期間を延長し続けているんだから。それに、ちゃんと夜会には必ずカレンと同伴するし、遊びも浮気もしてないしね」
「遊びもなしとなると… ご両親としては言い辛いですね、結婚しろとは。念の為ですが、愛し合ってるんですよね? こんなに長く続くと言う事は?」
「あはははは。ドーン、あなたも上位貴族じゃない! 愛? 私達の間には親愛みたいな情はあるけど、情熱的な愛はないわ。ドーン、どうしたの? 珍しい。あなたも奥様とは政略結婚でしょうに」
「まぁ、そうですね。アレとは義務が勝っていた結婚でした」
「そうよ、変な人。ん? あぁ~、あの子ね? ふ~ん。その顔は… で? どうなの、本当の所は?」
「え? 彼女は… 先ほどユーグ殿が仰ったような親愛でしょうか? 正直それに似た感情は抱いています」
「うそ! 本当に! じゃぁ…」
「ダメですぞ。それ以上は言ってはいけません。私の歳をご存じでしょう? 親子ほど離れています。まだまだ瑞々しい彼女には不釣り合いです。私は副団長として毎日側に居るだけで十分幸せなのです」
「で、でも… この先彼女だっていい人と~ってなるわよ? そんな近くじゃ我慢出来るの?」
「… その時はその時です、ね。それこそ、今度こそ引退して領地の隅で農夫をやります。いや、違うなぁ。今ならこのまま部下として、そうだ。このまま居られる時まで側にい続けるでしょうね」
「そこまでなの… 分かった。今のは私だけの心に留めておくわ。でもアレクもあなたも… あの鈍感変人。不憫だわ~。他にキレイで聡明なご令嬢なんて星の数多居るでしょうにね」
「えぇ不思議なもので、今まで気が付かなかった自分が恥ずかしい。この歳になって、恋も愛も… 人に堕ちる瞬間を体験出来た事は一生の宝物ですな。上位貴族としてこのまま淡々と仕事をしていたら起こり得なかった事です。出逢えた事に感謝です」
「そうねぇ。私もちょっと分かるわ。彼女の人柄に惹かれると言うか、堕ちるか。うん、何となく分かる」
「ははははは」
「ふふふ」
「すみません! お待たせしました! で? 何の話してたんですか?」
「世間話よ。それより、あなた、当日は私の侍女を派遣するから朝からちゃんと起きてるのよ?」
「はぁ? 朝って。パーティーは夜ですよ? それに警備の最終確認が昼に残ってます」
「おバカ! そう言うのは部下に割り振りなさい。何の為に側近がいるのよ!」
「だって…」
「団長? 私が最終確認までやっておきますので。心置きなく準備をして下さい。私はその後のダンスを楽しみにしていますので!」
「う~、じゃぁお願いね、ドーン」
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ユーグさんは多分、ドレスと侍女の件を言いに来てくれたんだろう。思い通りに行ってスッキリしたのか、優雅にお茶を飲んでいる。私もお菓子をつまんで一息ついた。
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