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2章 王城と私
27 ダンス・ダンス・ダンス
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「お嬢様。もう少し締めますね」
ユーグさんが派遣してくれた侍女さんは笑顔でグイグイとコルセットを締めまくる。
「もう… もう… げ んか いです。痛い、痛い」
「ふ~。まぁ、いいでしょう。元々筋肉で絞まってらっしゃいますし」
「す、すみません」
ふ~。このコルセット縛り。そこまで必要ないんじゃない?
「いえいえ。少し油断されたんでしょう… ドレスに合わなくなっていましたから」
ギクッ。そりゃ~多少は太りましたよ。団長になってからデスクワークが増えたからね。そんな数ヶ月で… 太ったのか。そうか。筋トレ始めないと。ぐすん。
「こちらのドレスでよろしいですね」
侍女さんが取り出したのは、一番最初にクリスタルさんから頂いた私の目の色のドレス。淡い黄色のドレス。
「はい。でもちょっとデザインが若くないですか? 会場で浮かないでしょうか?」
「ふふふ。お嬢様はまだ10代ですから問題ありません。とてもお似合いですよ」
って事は、これを着るのは最後か… もうすぐ20だし。良かった、最後に着られて。
侍女さんが仕上げにお化粧をしてくれる。いつぶりだろう。こっちの世界に来てからはほとんどスッピンでいるからなぁ。逆に、肌の調子が良くなった。不思議だよね~。
「はい。出来上がりました。お疲れ様でした」
「はい。あなた達もお疲れ様でした。ありがとうございました」
ふ~。やっと終わった。って、これからが本番だけどね。
コンコンコン。
「どうぞ」
颯爽と入って来たのはアレクだ。約束の時間より少しだけ早い。
「早くない? もう時間?」
「い、いや… キレイだ。とても似合っている」
アレクは手を口に当て少し赤い顔で褒めてくれる。普通に、恥ずかしいな。うれしい。
「あ、ありがとう。アレクも王子様みたい! 王子様なんだけど… 何て言うか、かっこいいよ」
バカ、私! 褒め慣れてないから言葉が出てこないよ~。かっこいいとか、普通にかっこいいし。バカ。
白のタキシードに金の刺繍が映える。そして、アレクのその顔面。イケメンって何着てもイケメンだね。いや、正装したら2割り増しは行くか。
「あぁ、そう言ってもらえるとうれしいよ」
なぜか2人で褒めあって赤くなる。何だこの空気。マジで恥ずい。
「アレク、早いけどもう行く?」
「あぁ、そうだな。手を」
アレクは私の手を取り、流れるようにエスコートをしてくれる。さすが、マジモンの王子様。
「会場までは歩いて行くのよね?」
「そうだな。ここだしな」
そう。会場は王城である。当たり前か。第3の団長室を出ると、これまた当たり前なんだけど、第3の部下達が警備をしていた。みんな私を2度見する勢いでチラチラと目だけ動かしては驚いている。
はいはい、すみませんね。こんな格好、普段しないからね~。私ですよ? う~あんまり見ないでね、歩き辛いから。
「どうした?」
「いや~、部下がね。ちょっと気になって… 穴があったら入りたい」
「ん? キレイだぞ? 堂々としていればいい。今日のラモンは誰もが振り向くだろう。妖精のようだからな、早く慣れた方がいいぞ」
おいおい、またサラッとそんな事を言って。アレクのセリフにさっきからドキドキしっぱなしだ。
「あぁ、まぁ、はい。がんばります」
ポンコツな私は変な返ししか出来ない。う~。
やっとの事で会場の入り口に着くと、もうほとんどの貴族が集まっていた。
「最後の方かな? 遅刻ではないよね?」
「あぁ。私が居るから遅刻はない。では、参ろうか?」
改めて腕を組み直し、深呼吸して会場入りをする。ご婦人達やお嬢様達が私達を見ては、コソコソと内緒話をこそらかしこでしているのが見える。
『う~、緊張する~。アレクが目立つから』
『お前がキレイだからだ』
『また、そんな… 今は止めてよ、恥ずかしいじゃん』
『ふふふ、かわいらしいな』
アレクが私を覗き込んで微笑むと、『はぁ~』『わぁ~』と黄色い声が上がる。
ダメだ。これは、今日はアレクの取り合い合戦が起きそうだな。今の内にドーンを探しておこう。避難場所を確保しないと、猛獣と化した令嬢達に絡まれそうだ。
「今日はずっと私と一緒にいてくれよ? パートナーなんだから」
アレクもエスパーか! どいつもこいつも私の心を読みやがって。
「え? そんな事は… よく分かるね」
「あぁ、ラモンは顔にすぐに出るからな。分かりやすい」
「クッ」
そんな事を話していたら、王族の方々が壇上に出てくる。会場の誰もが口をつぐみ一堂に頭を垂れた。
「面を上げよ。皆の者、我が息子ミハエルとイバンナ辺境伯令嬢の為に集まってくれて感謝する。こうして無事、婚約が出来た事、父として国王としてうれしく思う。皆にもこの若き2人の門出の証人になってもらいたい。今宵は大いに楽しんでこの2人を祝ってくれ!」
パチパチパチと盛大な拍手の中、ミハエル様のエスコートでイバンナ様は会場の中央へ移動した。
ファーストダンス。
2人は幸せの絶頂なのだろう。溢れんばかりの笑顔で向き合い見つめ合っている。2人の世界だね、背景がハートとお花畑だよ。
チョンチョン。
ん? 誰かが肩を叩くので振り返るとドーンだった。
ドーン! 助かった! 探してたんだよ~。避難所早くも発見。よっしゃー!
「ドーン! めっちゃ人が多いから、探してたんだよ?」
「ふふふ、そうですか。私はあなたが入場した時から気づいていましたよ。今宵はラモン嬢、とてもキレイだ」
と、私の手を取り手の甲にキスを落とす。こ、こいつも、手慣れている。
「もう、私、慣れてないんだからからかわないで。それより最終確認は大丈夫だった?」
「ははは、あなたらしいですが仕事の話は止しましょうよ。せっかくの夜会です。まぁ、付け加えれば、ご心配事は問題ありません」
「は~、良かった。最終確認だけ気になってて、安心したわ」
ニコニコと話しているとアレクが私の手をドーンから奪った。
「ドーン、今宵は私がパートナーだ。気安く触るな」
「おや? 余裕が無いのですね。ふ~、器が小さいと嫌われますよ?」
私の頭の上でビリビリとガンのつけあいが始まる。またしょうもない事で、この人達は、はぁ~。
「アレクもドーンも。今日はケンカはなしでお願いします。せっかくのパーティーじゃないの」
「ふっ。そうですね、では、ラモン嬢、お手を。この私と一曲いかがでしょう?」
皇太子殿下達のファーストダンスが終わった会場では、各々前に出てダンスを始めている。
「アレク、ごめんね。約束だから。ドーン、よろしく」
私はドーンの手を取り中央へ進む。お互い礼をして、さぁ、ダンスだよ!
「ドーン、足を踏んだらごめん。学校の授業でもあんまりいい点じゃなかったんだ」
「そんな事気にしないで。今は楽んで下さい」
私の腰をグイッと寄せ、耳元でドーンが囁く。
うっ。ジブい低いイケボイス。耳がぁ~耳がぁ~!
ドーンは安定した感じで身を任せられる。体幹がしっかりしているから上手い。踊りやすいからだんだん楽しくなってきた。
「ドーン、ダンスって楽しいのね。こんなに上手に踊れる自分がうれしいわ」
「今までの相手がヘボだったんですよ。あなたはお上手です。それに笑顔が眩しいです。美しい」
「ちょっ。不意打ち止めて~足が絡まるじゃん~」
「ははは」
「ふふふ」
と、ドーンと楽しいダンスが終わる。
ふ~、って、いつの間にか私の後ろにアレクが立っていた。
「ラモン嬢、次は私と踊って頂けませんか?」
王子様のアレクが片膝ついてダンスを申し込んでくる。おいおい、いくら何でも目立ってるって。やり過ぎだって!
「ア、アレク? 踊るから、踊るからさぁ。ちょっと立って。早く立ってよ」
「では、お手を」
居たたまれない私はキョロキョロしながらアレクの手を取る。
「チッ」
と、ドーンが舌打ちしてダンスの輪から離れて行った。
「邪魔がいなくなったな。さぁ、俺とも楽しもう」
「アレク? ドーンにも言ったんだけど、私下手だから、簡単なステップでお願いね」
アレクはうんと頷き、笑顔でずっと私を見ながらダンスを始めた。
… 何の拷問だ? アレクの眼差しが眩しい。これは、心臓が、保たん。
「ア、アレク? 今日はお兄様、よかったね」
「兄? あぁ、皇太子殿下か? ははは、兄と言われるのは新鮮だな。ありがとう」
「いえいえ。あれから王女様も大人しいみたいだし、陛下も今日はうれしいでしょうね」
「そうだな。王女の件はまた報告があるが… 今日は影が何人も着いているし他国からの要人も来ている。滅多な事はしないだろう」
「そうね」
「それより、ラモン、俺を見てくれ。ダンスの相手の目を合わせるのはマナーじゃないか?」
はぁ? そんなマナーあったっけ?
「で、でも。ちょっと、その顔面が…」
「顔?」
「笑顔が… 近いし… もうお腹いっぱい」
「次は腹? さっきから何を言っている?」
「いえ、何でもないです。ちょっとアレクがかっこいいから直視出来ないの!」
思い切って言ってみる。そんなゆでダコ状態の私を見て、アレクは更にからかってきた。く~!
「ははは、かっこいいか、悪くない。ラモン? うなじまで赤いぞ? ん?」
と、ここでさらに笑顔がキラキラするアレク。ダンスを見学しているお嬢様達が後ろでバッタバッタと倒れた。
「アレク、笑顔は止めよう。死人が出るよ?」
と、アレクに目線でお嬢様方の方見て知らせるが無視された。てか、全く周りを見ていない。私をロックオンして目を外さないでいる。
「放っておけ。今は俺とのダンスに集中して」
「う、うん」
いいのかな~と思いつつ。私はちょっと落ち着いたのか周りも見え出して来た。
少し離れた所にトリスとクルス。ドーンも離れた所で私達を見ている。
あっ、ユーグさん。女性とダンスしてるし~。へ~。
あっ、ウチの家族もいる、ってみんな蒼白な顔なんだけど。どうしたんだろう?
「ラモン、よそ見をするな。俺を見ろ」
と、アレクが私の顎をクイってやった。
ん”ーー!!! 顎クイとか!
「す、すみましぇん」
「ん」
アレクは満足したのか大きく頷いて、満面の笑顔でしれっと2曲目を続けようとした。
「アレクサンダー様、次は私にお譲り下さい」
サッと手を差し伸べてくれた救世主! ナイスタイミング! 誰? 誰?
「ご遠慮願おうか? 次も私が…」
「いえ、ダメです、周りを見て下さい。かなり目立っています。この状況で王子が2曲目は… 聞き分けて下さい」
グッと、アレクは歯噛みして私の手の甲にキスをしてからようやく離してくれた。
「では、お嬢さん」
手を差し出してくれたのは、そう、意外にもユーキさんだったのだ。
「ユーキさん! 正直助かりました、ありがとうございます」
無表情なゴツいユーキさんは、グイッと強引なエスコートで私を連れ出した。
ユーグさんが派遣してくれた侍女さんは笑顔でグイグイとコルセットを締めまくる。
「もう… もう… げ んか いです。痛い、痛い」
「ふ~。まぁ、いいでしょう。元々筋肉で絞まってらっしゃいますし」
「す、すみません」
ふ~。このコルセット縛り。そこまで必要ないんじゃない?
「いえいえ。少し油断されたんでしょう… ドレスに合わなくなっていましたから」
ギクッ。そりゃ~多少は太りましたよ。団長になってからデスクワークが増えたからね。そんな数ヶ月で… 太ったのか。そうか。筋トレ始めないと。ぐすん。
「こちらのドレスでよろしいですね」
侍女さんが取り出したのは、一番最初にクリスタルさんから頂いた私の目の色のドレス。淡い黄色のドレス。
「はい。でもちょっとデザインが若くないですか? 会場で浮かないでしょうか?」
「ふふふ。お嬢様はまだ10代ですから問題ありません。とてもお似合いですよ」
って事は、これを着るのは最後か… もうすぐ20だし。良かった、最後に着られて。
侍女さんが仕上げにお化粧をしてくれる。いつぶりだろう。こっちの世界に来てからはほとんどスッピンでいるからなぁ。逆に、肌の調子が良くなった。不思議だよね~。
「はい。出来上がりました。お疲れ様でした」
「はい。あなた達もお疲れ様でした。ありがとうございました」
ふ~。やっと終わった。って、これからが本番だけどね。
コンコンコン。
「どうぞ」
颯爽と入って来たのはアレクだ。約束の時間より少しだけ早い。
「早くない? もう時間?」
「い、いや… キレイだ。とても似合っている」
アレクは手を口に当て少し赤い顔で褒めてくれる。普通に、恥ずかしいな。うれしい。
「あ、ありがとう。アレクも王子様みたい! 王子様なんだけど… 何て言うか、かっこいいよ」
バカ、私! 褒め慣れてないから言葉が出てこないよ~。かっこいいとか、普通にかっこいいし。バカ。
白のタキシードに金の刺繍が映える。そして、アレクのその顔面。イケメンって何着てもイケメンだね。いや、正装したら2割り増しは行くか。
「あぁ、そう言ってもらえるとうれしいよ」
なぜか2人で褒めあって赤くなる。何だこの空気。マジで恥ずい。
「アレク、早いけどもう行く?」
「あぁ、そうだな。手を」
アレクは私の手を取り、流れるようにエスコートをしてくれる。さすが、マジモンの王子様。
「会場までは歩いて行くのよね?」
「そうだな。ここだしな」
そう。会場は王城である。当たり前か。第3の団長室を出ると、これまた当たり前なんだけど、第3の部下達が警備をしていた。みんな私を2度見する勢いでチラチラと目だけ動かしては驚いている。
はいはい、すみませんね。こんな格好、普段しないからね~。私ですよ? う~あんまり見ないでね、歩き辛いから。
「どうした?」
「いや~、部下がね。ちょっと気になって… 穴があったら入りたい」
「ん? キレイだぞ? 堂々としていればいい。今日のラモンは誰もが振り向くだろう。妖精のようだからな、早く慣れた方がいいぞ」
おいおい、またサラッとそんな事を言って。アレクのセリフにさっきからドキドキしっぱなしだ。
「あぁ、まぁ、はい。がんばります」
ポンコツな私は変な返ししか出来ない。う~。
やっとの事で会場の入り口に着くと、もうほとんどの貴族が集まっていた。
「最後の方かな? 遅刻ではないよね?」
「あぁ。私が居るから遅刻はない。では、参ろうか?」
改めて腕を組み直し、深呼吸して会場入りをする。ご婦人達やお嬢様達が私達を見ては、コソコソと内緒話をこそらかしこでしているのが見える。
『う~、緊張する~。アレクが目立つから』
『お前がキレイだからだ』
『また、そんな… 今は止めてよ、恥ずかしいじゃん』
『ふふふ、かわいらしいな』
アレクが私を覗き込んで微笑むと、『はぁ~』『わぁ~』と黄色い声が上がる。
ダメだ。これは、今日はアレクの取り合い合戦が起きそうだな。今の内にドーンを探しておこう。避難場所を確保しないと、猛獣と化した令嬢達に絡まれそうだ。
「今日はずっと私と一緒にいてくれよ? パートナーなんだから」
アレクもエスパーか! どいつもこいつも私の心を読みやがって。
「え? そんな事は… よく分かるね」
「あぁ、ラモンは顔にすぐに出るからな。分かりやすい」
「クッ」
そんな事を話していたら、王族の方々が壇上に出てくる。会場の誰もが口をつぐみ一堂に頭を垂れた。
「面を上げよ。皆の者、我が息子ミハエルとイバンナ辺境伯令嬢の為に集まってくれて感謝する。こうして無事、婚約が出来た事、父として国王としてうれしく思う。皆にもこの若き2人の門出の証人になってもらいたい。今宵は大いに楽しんでこの2人を祝ってくれ!」
パチパチパチと盛大な拍手の中、ミハエル様のエスコートでイバンナ様は会場の中央へ移動した。
ファーストダンス。
2人は幸せの絶頂なのだろう。溢れんばかりの笑顔で向き合い見つめ合っている。2人の世界だね、背景がハートとお花畑だよ。
チョンチョン。
ん? 誰かが肩を叩くので振り返るとドーンだった。
ドーン! 助かった! 探してたんだよ~。避難所早くも発見。よっしゃー!
「ドーン! めっちゃ人が多いから、探してたんだよ?」
「ふふふ、そうですか。私はあなたが入場した時から気づいていましたよ。今宵はラモン嬢、とてもキレイだ」
と、私の手を取り手の甲にキスを落とす。こ、こいつも、手慣れている。
「もう、私、慣れてないんだからからかわないで。それより最終確認は大丈夫だった?」
「ははは、あなたらしいですが仕事の話は止しましょうよ。せっかくの夜会です。まぁ、付け加えれば、ご心配事は問題ありません」
「は~、良かった。最終確認だけ気になってて、安心したわ」
ニコニコと話しているとアレクが私の手をドーンから奪った。
「ドーン、今宵は私がパートナーだ。気安く触るな」
「おや? 余裕が無いのですね。ふ~、器が小さいと嫌われますよ?」
私の頭の上でビリビリとガンのつけあいが始まる。またしょうもない事で、この人達は、はぁ~。
「アレクもドーンも。今日はケンカはなしでお願いします。せっかくのパーティーじゃないの」
「ふっ。そうですね、では、ラモン嬢、お手を。この私と一曲いかがでしょう?」
皇太子殿下達のファーストダンスが終わった会場では、各々前に出てダンスを始めている。
「アレク、ごめんね。約束だから。ドーン、よろしく」
私はドーンの手を取り中央へ進む。お互い礼をして、さぁ、ダンスだよ!
「ドーン、足を踏んだらごめん。学校の授業でもあんまりいい点じゃなかったんだ」
「そんな事気にしないで。今は楽んで下さい」
私の腰をグイッと寄せ、耳元でドーンが囁く。
うっ。ジブい低いイケボイス。耳がぁ~耳がぁ~!
ドーンは安定した感じで身を任せられる。体幹がしっかりしているから上手い。踊りやすいからだんだん楽しくなってきた。
「ドーン、ダンスって楽しいのね。こんなに上手に踊れる自分がうれしいわ」
「今までの相手がヘボだったんですよ。あなたはお上手です。それに笑顔が眩しいです。美しい」
「ちょっ。不意打ち止めて~足が絡まるじゃん~」
「ははは」
「ふふふ」
と、ドーンと楽しいダンスが終わる。
ふ~、って、いつの間にか私の後ろにアレクが立っていた。
「ラモン嬢、次は私と踊って頂けませんか?」
王子様のアレクが片膝ついてダンスを申し込んでくる。おいおい、いくら何でも目立ってるって。やり過ぎだって!
「ア、アレク? 踊るから、踊るからさぁ。ちょっと立って。早く立ってよ」
「では、お手を」
居たたまれない私はキョロキョロしながらアレクの手を取る。
「チッ」
と、ドーンが舌打ちしてダンスの輪から離れて行った。
「邪魔がいなくなったな。さぁ、俺とも楽しもう」
「アレク? ドーンにも言ったんだけど、私下手だから、簡単なステップでお願いね」
アレクはうんと頷き、笑顔でずっと私を見ながらダンスを始めた。
… 何の拷問だ? アレクの眼差しが眩しい。これは、心臓が、保たん。
「ア、アレク? 今日はお兄様、よかったね」
「兄? あぁ、皇太子殿下か? ははは、兄と言われるのは新鮮だな。ありがとう」
「いえいえ。あれから王女様も大人しいみたいだし、陛下も今日はうれしいでしょうね」
「そうだな。王女の件はまた報告があるが… 今日は影が何人も着いているし他国からの要人も来ている。滅多な事はしないだろう」
「そうね」
「それより、ラモン、俺を見てくれ。ダンスの相手の目を合わせるのはマナーじゃないか?」
はぁ? そんなマナーあったっけ?
「で、でも。ちょっと、その顔面が…」
「顔?」
「笑顔が… 近いし… もうお腹いっぱい」
「次は腹? さっきから何を言っている?」
「いえ、何でもないです。ちょっとアレクがかっこいいから直視出来ないの!」
思い切って言ってみる。そんなゆでダコ状態の私を見て、アレクは更にからかってきた。く~!
「ははは、かっこいいか、悪くない。ラモン? うなじまで赤いぞ? ん?」
と、ここでさらに笑顔がキラキラするアレク。ダンスを見学しているお嬢様達が後ろでバッタバッタと倒れた。
「アレク、笑顔は止めよう。死人が出るよ?」
と、アレクに目線でお嬢様方の方見て知らせるが無視された。てか、全く周りを見ていない。私をロックオンして目を外さないでいる。
「放っておけ。今は俺とのダンスに集中して」
「う、うん」
いいのかな~と思いつつ。私はちょっと落ち着いたのか周りも見え出して来た。
少し離れた所にトリスとクルス。ドーンも離れた所で私達を見ている。
あっ、ユーグさん。女性とダンスしてるし~。へ~。
あっ、ウチの家族もいる、ってみんな蒼白な顔なんだけど。どうしたんだろう?
「ラモン、よそ見をするな。俺を見ろ」
と、アレクが私の顎をクイってやった。
ん”ーー!!! 顎クイとか!
「す、すみましぇん」
「ん」
アレクは満足したのか大きく頷いて、満面の笑顔でしれっと2曲目を続けようとした。
「アレクサンダー様、次は私にお譲り下さい」
サッと手を差し伸べてくれた救世主! ナイスタイミング! 誰? 誰?
「ご遠慮願おうか? 次も私が…」
「いえ、ダメです、周りを見て下さい。かなり目立っています。この状況で王子が2曲目は… 聞き分けて下さい」
グッと、アレクは歯噛みして私の手の甲にキスをしてからようやく離してくれた。
「では、お嬢さん」
手を差し出してくれたのは、そう、意外にもユーキさんだったのだ。
「ユーキさん! 正直助かりました、ありがとうございます」
無表情なゴツいユーキさんは、グイッと強引なエスコートで私を連れ出した。
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