転生騎士団長の歩き方

Akila

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2章 王城と私

31 ドーンの記憶

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その場にいた総団長、スナッチ副団長、スバルさん、クルス、私はお互いを見合い硬直した。

「おい! お前… ラモンだぞ?」

総団長が語りかけるも、ドーンは冷たい目線を私に送って視線を逸らす。

「総団長、ここは人の目もあります。別室に移動しましょう。ドーン殿も、少し気分が優れないのでは?」

「あぁ… そうだな。少し頭の中をまとめたい」

スナッチ副団長は近くにいた騎士に指示を出し別室を用意させる。

私は…

指先が凍るように冷たい。先程払われた手首もジンジンする。

オーフェリン様… あんなにウキウキして、こんな事をするなんて…

「ラモン? 大丈夫か?」

「あっ。う、うん…」

クルスはそう呼びかけてからスバルさんに私を託した。

「すみません、スバル様。アレク様の所に戻りたいのでラモン団長をお願い出来ますか?」

「あぁ、私がドーンと一緒に別室へ連れて行こう」

スバルさんが下を向いている私を覗き込みながら、背に手を置いて支えてくれた。



別室の応接室で皆でソファーに座りとりあえず一息つく。お互い誰が話すか様子を見ていたが、総団長が口を開いた。

「はぁ… ドーン、どうしたんだ? その様子じゃラモンを覚えていないのか?」

「ラモン? 知らんな。それより、ここはどこだ? 今は何時なんだ?」

「何時だと? 今日は第一王子のミハエル様の婚約披露パーティーだ。王暦915年4月だ」

「婚約披露? 王暦915年…」

ドーンは驚いた後黙って考え出した。

「スナッチ、第6のユーキを呼んで来い。至急だ。あと、スバル、ドアの前に立て。ユーキが来るまででいい」

スナッチ副団長は一礼してサッと退場する、スバルさんは言われた通りにドアへ移動した。今、ソファーには私とドーン、総団長が座っている。

「ドーン、確認だが今のお前の現状を分かる範囲で教えて欲しい」

「あぁ。私の記憶と言うべきか… ハッと意識がはっきりした時に、私は先程のパーティー会場に居た。しかしなぜそこに居るのか、何のパーティーなのかがわからなかった。あと、さっきハドラーが王暦915年と言ったが… 私の記憶では今は王暦914年8月のはずだ」

「っ!」

去年の8月… 私と出会う直前じゃん。私は思わず口を抑えてしまう。

オーフェリン様、あなたと言う人は…

ドーンの『今一番大事なもの』って私との時間? 思い出? 記憶? 私自身の存在?

今の私はドーンの中では全くの他人になってしまっている。何てこった!!!

これが代償なの?

「そうか… パーティ会場で意識がはっきりする前後で何か変わった事はなかったか? 誰かにぶつかったり、魔法を探知したりしなかったか?」

「ない… と思う」

「そうか… ラモン?」

「え? はい」

「お前にはドーンの記憶はあるのか? 俺にはラモンの記憶がある」

「はい。私にもドーンの記憶と言うか出会ってからの思い出も全て残っています」

「そうなると、記憶が抜けているのはドーンだけか。誰の陰謀で目的がはっきりせんな…」

総団長が考えいているとユーキさんが到着した。その後に続いて、アレクとトリス、クルスもやって来た。

「総団長、お呼びとの事で… ん? ラモン? お前また何かやらかしたのか?」

ユーキさんは私を見てニヤッとする。が、アレクは私の顔色を見て駆け寄って来てくれた。

「ラモン。クルスから聞いた。大丈夫か? 顔色が悪い」

アレクは私の手を握り寄り添うように横に座る。

いつもなら… ここでドーンが割って入ってくるんだけど… 私達のやりとりに一切興味を示さず、ドーンも青い顔で考察を続けている。

「ユーキ、部屋全体に結界を。防音もな。それで座ってとりあえず私の話を聞け」

ユーキさんはハテナな顔になっているが、総団長の真剣な顔に負けて黙って従った。

「では、ドーン、これから話す事は真実だ。最後まで聞いて欲しい」

総団長はそう前置きをして、戦後から今日までの話を話し出した。

ドーンは時折、私を見ては総団長に向き直り、真剣に話を聞く。

「~と言う事だ。一切、思い出さないか?」

「… あぁ。ラモン嬢、先程は失礼した。知らないとは言え… いや知り合いなのか。とにかく申し訳ない」

ドーンは他人行儀な感じで礼をしてくる。分かってはいても冷たい態度はズキっと心臓が痛い。

「… いえ」

ドーンの記憶がないのもショックだけど、ちょっと気まずいな。だって私は、なぜドーンの記憶が抜けているのか分かっているしねぇ。

沈黙が続く中、私はまるっと忘れていた事を思い出した! しまった!

「そ、総団長! 大変です! ドーンの衝撃で忘れていました! 実は報告があります」

「ん? ドーンより大事な事か?」

「う~ん。比べる事じゃないと思いますが… 先程、『トイレに続く廊下で不審者に声をかけられ私を連れ出すように』と言われたと、ある男爵令嬢より報告がありました。ですので、総団長の所に行ったのです。そうだ、行かなければ! 賊かも知れません! 応援を少し寄越して下さい!」

「何だと! 早く言え! ドーンをこんな事にしたやつかも知れんだろう! バカ者!!!」

と、総団長にゲンコツを喰らう私。痛い。

「しかし… 敵かどうかは…」

って、私は敵の正体もドーンの記憶の秘密も知ってるんだよね。どう誤魔化そう。でも、あいつらは今の段階で捕まえておきたいしな。

「スバルとユーキ、キャスを探して一緒に行って捕縛せよ」

「「はっ」」

「私が行かなければ意味がないのでは? 私が呼ばれてるんですよ?」

「あぁ? ダメだ。キャスは簡単な変装が出来るからやつに変わりをさせる。戦闘能力もキャスの方が上だしな」

「え~、はい了解です。あっ、スバルさんとユーキさん! 敵なんですけど、多分、廊下は人気ひとけがあるので奥の庭園に潜んでいるかと。男性と女性の2人組です」

「あ? 何でそんな事分かるんだ? 他に情報を隠してないだろうな? さっきの… 睨んでいた王女も関係が?」

ユーキさんが訝しながら質問してくる。

「ないですよ~。その男爵令嬢に言われたんですよ、不審者は男女の2人組だって。それに、王女との関係はわかりません」

… 誤魔化せた? いや、誤魔化せてない。クルスが目を見開いて無言の圧をかけてくる。そうだよね~、クルスは男爵令嬢の会話を聞いてるもんね。でも、今は黙ってて。お願い。

「王女? まぁ、いい。捕縛すれば分かる事だ」

総団長は私を見ながらさっさと行くように指示を出す。

「で? ラモン、お前他に何か隠していないか?」

「… ないですよ?」

「ほぉ~。… 今はいいだろう… ドーン、気分はどうだ? まだ顔色が悪いな」

「あぁ。問題ない。少し整理がついた。私は、私だけが誰かのせいで記憶がないのだな」

「今の所はそうと言えるだろう。とりあえず、今日は王城に泊まって行け。明日、改めて話をしよう」

「そうだな」

「して、アレク、お前は何で居るんだ? 俺は呼んでないぞ?」

「クルスより報告を受けてラモンが心配で来た。総団長、ラモンもこのまま王城へ留まらせたい」

「ん~、まぁ。そうだな。しかし、ラモンは捕縛が完了するまではこの部屋で待機だ」

「はい。アレク、ありがとう。もう大丈夫よ。ちょっと混乱したけど落ち着いたし」

「そうか? 少し手が冷たい。私も終わるまで共に付き添おう」

「ダメだ。アレクは出て行け。まだ、パーティーの途中だ。それにお前は今日はホスト側だろうが。王族が抜けるのは良くない。お前の兄だろう?」

「し、しかし! ラモンは私のこのパーティーのパートーナーだ」

「ダメだ。否はない」

「クッ」

拳をグッと握り総団長を睨みつけるアレクの前にドーンが立ち塞がる。

「王子と言えど総団長に失礼だ。一介の騎士が弁えろ」

あっ、そうか! ドーンの中ではまだアレクは平騎士のままなんだ。やばいじゃん。

「ドーン、いい。アレクも下がれ、そして早く退室しろ」

アレクは総団長を睨んでから私に振り返る。

「辛くなったらいつでも来てくれ。私も今日は王城に留まるから。ラモンの部屋の前にクルスをつけるから安心しろ」

「そこまでしてくれなくても… 私よりドーンの方が…」

「いや、私にとってはお前の方が心配だ」

「… 分かった。ありがとう」

指名されたクルスは、さっきの話の内容の事もあってかすんなり了承している。

これは、あとで話し合いだな。ふ~。

「よし。ではそれぞれ取り掛かれ」

「「「はっ」」」
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