転生騎士団長の歩き方

Akila

文字の大きさ
91 / 100
2章 王城と私

41 やっぱりね

しおりを挟む
団に戻った後、みんなで話し合った結果を報告書にまとめ、今私は第1に来ている。

「そうか… このスラム街の件だがなぜ今まで報告が上がってなかった?」

「それは、業務報告書を見た所、前団長が『スラム街など見回りしなくて良い』と巡回経路を勝手に変更していました。その他、教会周辺も巡回経路から外していましたね」

「意図的か… あとで本人に直接聞くか。それよりよく報告してくれた。これで確証を得たな」

「確証ですか?」

「あぁ。王女につけた第5の影の報告だと、王女の従者のほら、元リューゲン公爵家の3男が居ただろう? そいつが王女に代わり色々と動いていたそうだ。その行動範囲に平民街のこの西の教会が入っている。それに王女は闇魔法が出来るみたいでな、侍女と入れ替わって王女自身も何やら動いていた」

「侍女と入れ替わる? ん? 闇魔法は関係あるんでしょうか? 王族だし普通に影武者じゃないんですか?」

「いや、影武者がつくのは陛下と皇太子様だけだ。闇魔法の目眩し系の魔法だと思う。第5の目を掻い潜り、何度か侍女と入れ替わっていたのだ。第5の話じゃ本人そっくりに見えるんだと。見抜くのに時間がかかったと言っていた。王女は、その隙に城の図書館や王宮の過去の書物を読み漁っていたらしい」

「書物… 具体的にどんな物を?」

「初代国王の日記だ」

当たりか。

「了解です。なんとなく話が繋がりました。やはり王女は諦めてなかったんですね?」

「恐らくな。しかしこれでこっちも具体的に動ける。でかしたラモン。西の教会の不穏な動きと消えた人達。連動して捜査に入るぞ」

「はい」

「近々、団長会議を招集するからそのつもりで」

「了解です」

「時に、ラモン。その後ドーンと話したか?」

「いえ、あれ以来会っていません」

「そうか… ドーンだが、明後日から復帰する。大丈夫か?」

ドキッ。

先週、総団長と3人で会って以来だな。てか明後日からまた会えるのか… でも微妙な関係だし。

「大丈夫ですよ。ははは。また1から関係を築きます」

「ならいい。あの頭痛の事もあるし、しばらくはそっとしておいてくれ」

「了解です。私も無理にあれやこれやと話しかけません」

… 正直寂しい。でも無理に思い出してもらおうとして痛みを与えるのは私としても嫌だし。

「すまん」

「いえ、総団長が謝る事でもないですし。それより今は王女ですよ、次の会議までに追加で調査できる事があればやっておきます」

「うむ」

私は総団長に敬礼して団に戻る。後ろでミロとグローはちゃんと直立でいい子にしていた。

「グロー、言った通りちゃんとしてくれてうれしいわ」

「うっす。俺はやれば出来るんです」

へへ~っとドヤ顔している横でミロが涼しい顔でグサッと一言。

「今までロクな上官がいなかっただけでしょう? てか今のは普通・・の事では?」

「んだと? 気取りやがって。団長は褒めて下さったんだ。素直に喜べばいいだろうがよ。それとも何か? 俺が褒められた事に嫉妬してんのか?」

「アホか。あんな事で褒められて何がうれしいんだ? これだから作法を知らない平民は」

「おい!」

ダメだこれは。本当にもう、ヒマを見つけてはミロはグローにケンカ売るのやめてくんないかな。は~。

「てか、ミロ。さっきのはアウト。作法を知らないのはそうかもだけど、平民は関係ない。グローに謝って」

「… すまなかった」

お~! 素直じゃん。

「グローもいちいち突っかからないの。ミロはちょっとだけ人に辛口なだけよ。慣れなさい」

「… うっす」

は~。大丈夫かこの2人。

「てか団長。やっぱり西の教会が怪しいんすね?」

「そうみたいね。あと、さっき聞いた王女様の事は内密にね」

「了解です」

ミロは王女が絡んでいるのは知っていたのか、特に驚いた様子はなかった。

「涼しい顔しちゃって。ミロは王女様の事知ってたの?」

「それとなく。元第5ですから風の噂で」

「ふ~ん。私が知らない情報ってある?」

「先程、総団長がほとんど話していましたよ。そうですね~あとは入れ替わっていた侍女の件でしょうか。先頃、断罪された男爵がいたでしょう? 侍女はその娘ですね。王女は意図して罪人の身内を味方にしているようですよ」

男爵? あ~、下半身が緩い男爵か。そう言えばそんな人いたな。

「恨みを持つ者を集めるって… その先って、もしかして私じゃない? トロイ達が私を目の仇にしてたし。え~何でよ~」

「ははは。それはお分かりでしょうに。私は団長の護衛を兼ねていますよ?」

そう言えば監視と護衛と言ってたな。そう言う事か。

「あなたの主がわかった気がするわ」

「そうですか~? ちなみに陛下ではないですよ?」

「え? じゃぁ誰?」

「さぁ、誰でしょうね~」

ミロはニコニコといつものように表情が読めない。教えないつもりだね。

「そう。まぁ、心強いからいいや。いつもありがとう」

「いえ、仕事ですので」

「って事で、再度聞き込みと巡回経路を戻して会議に備えるわよ」

「うっす」
「了解です」
しおりを挟む
感想 251

あなたにおすすめの小説

偽りの婚姻

迷い人
ファンタジー
ルーペンス国とその南国に位置する国々との長きに渡る戦争が終わりをつげ、終戦協定が結ばれた祝いの席。 終戦の祝賀会の場で『パーシヴァル・フォン・ヘルムート伯爵』は、10年前に結婚して以来1度も会話をしていない妻『シヴィル』を、祝賀会の会場で探していた。 夫が多大な功績をたてた場で、祝わぬ妻などいるはずがない。 パーシヴァルは妻を探す。 妻の実家から受けた援助を返済し、離婚を申し立てるために。 だが、妻と思っていた相手との間に、婚姻の事実はなかった。 婚姻の事実がないのなら、借金を返す相手がいないのなら、自由になればいいという者もいるが、パーシヴァルは妻と思っていた女性シヴィルを探しそして思いを伝えようとしたのだが……

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】

リコピン
ファンタジー
前世の兄と共に異世界転生したセリナ。子どもの頃に親を失い、兄のシオンと二人で生きていくため、セリナは男装し「セリ」と名乗るように。それから十年、セリとシオンは、仲間を集め冒険者パーティを組んでいた。 これは、異世界転生した女の子がお仕事頑張ったり、恋をして性別カミングアウトのタイミングにモダモダしたりしながら過ごす、ありふれた毎日のお話。 ※日常ほのぼの?系のお話を目指しています。 ※同性愛表現があります。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...