ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

館花陽月

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飛び出した檻。

もう1人の天才。

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街を行きかう人々の服装は、流行の最先端を取り入れたファッションを着こなす人々が闊歩する街。

お洒落なストライプの屋根がかかったカフェテラスの下で男女が2人、カフェテーブルを境に
向かい合わせで座っていた。

まだ暑さの残る中、心地よい風が吹き込んでいた。

「あの・・。何で私、休日の土曜の昼下がりにこんなお洒落なカフェテリアで貴方と会っているんでしょうか?」

目の前のアイスカフェラテを眺めながら、背筋を伸ばした私は向かいの席に座る男性の方を極力見ないように話しを切り出した。

「だからさっきも説明した通り、今週の木曜日にオペが長引いて美桜と帰れなかったから?」

「何で、大切な休日も貴方と過ごさなきゃならないんですか?・・私達、付き合ってもいないのに。」

サングラスを外して、驚いた表情を見せた二条慧は身を乗り出して私を覗き込んだ。
その驚きに、こっちの方が驚きたいんですけど・・・。

「まだそんな事言ってるの?僕たちが付き合ってるのはもはや、公然の事実だろ。」

「何処の公ですか・・。そもそも、私の方は一度も承諾した覚えはないですけど?
もし、二条先生がそう思っているなら想像妊娠ならぬ、想像交際の域なのでもはや病ですよ・・。」

「あははは。面白い事を言うね。
いっそ病でいいから、そう思い込ませようかな・・自分にも、君にも。」

「は?私はそんな都合の良い脳ではないので、勘弁して下さい。気持悪いです。」

「そう?君はいつもハッキリ言ってくれるから、こちらは気持ちいいよ。」

メンタルがダイヤモンド並みの二条 慧には私の本音が通じない・・。

どうして日本語が通じないんだろう・・。

「先生、外科医なんで視力は問題ないでしょうが・・。聴力とか問題ないですか?」

「聴力に問題あったら、難しいオペを視線を逸らさずに的確な指示を出してこなせないと
思うが、違うか?」

「じゃあ、私の言葉だけ聞き取れないか、曲解解釈して届くんでしょうね・・・。」

ガクリと項垂れて、メニューから美味しそうなシフォンケーキを注文して
やけ食いを始めた私を見ながら嬉しそうに微笑む。

「それより、食べ終えたら、一緒に買い物に行かないか?」

私は意味も分からず、いつも送ってくれている二条慧への恩返おんがえししのつもりでコクリと深く頷いたのだった。



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