ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

恋は混戦模様。

天才同士のライバル宣言②

「美桜、秋元さん朝食作ったけど、食べる？」

あの後、夜中までガールズ（？）トークに花を咲かせた私達は寝ぼけ眼で支度をしてフラフラとリビングへと向かった。

10人は座れるであろうダイニングテーブルの上に、4人分の朝食の支度とあつあつのコーヒーが置かれていた。

「二条先生・・このオムレツ、シェフ並みに美味しいんですけど・・。まさかお料理もされるんですか？」

「ああ、手が商売道具だから出来るだけ包丁は使わないようにはしてるが、サラダや朝食は作るし、夜も肉や魚を焼いたりはする。」

「女子力高いですね・・。私、貴方を知れば知るほど分からなくなります。」

「そうか、ミステリアスな男に女性は魅かれるんじゃないか？」

「いえ、出来すぎてて逆に退きます。」

プッと、咲と寛貴は朝食を食べながら吹き出して笑っていた。

慧も、複雑そうな顔で笑っていた。

みんな、私に気を使って心配してくれているんだと感じた。

美味しい朝食を頂いた私は、咲と一緒に慧の部屋を出る準備をしていた。

荷物を纏めていると、有るものがない事に気が付いて固まる。

ガサッとポーチの中身を出して、ポケットの隅々まで確認したが、それは見当たらない。

「どうした？探し物か・・？」

部屋のドアの前で慧が私のただならぬ様子を見て、心配そうに見下ろしていた。

「ないんです・・。あの、二条先生が下さった銀色のリング。」

「そんなの、また新しい物を買ってあげるから気にしなくていい。」

「いえ！あのリングも、昨日お返しするつもりで持って来たものなんです。指輪なんて簡単に受け取れませんよ！！」

「俺も受け取れないよ。女性のリングなんて返されても迷惑だ。昨日、病院まではあったなら・・あいつの家か。」

チッと舌うちをしながら険しい表情の慧は、何かを思案したように部屋を出て行った。

取り残された私は、時計を見上げるともう7時を回っている事を確認して驚いた。

「あーー。どうしよう・・。もう、最悪だ！！」