112 / 124
果たされた約束。
「月の光」③
しおりを挟む
まだ慣れないその海の私への普通の対応に窮してしまう。
以前のような揶揄うような様子は、影を潜めたお陰で、海とも安心して互いの目を見て喋る事が出来るようになったのだ。
「聖人の病院もここからならすぐだし、藤堂の家からも車で10分ぐらいなんです。
セキュリティーも万全で、マスコミからも守れます。
・・何よりも聖人の為にも、安心かと思いまして。」
「そんな・・。
本当に、なんとお礼を申し上げたらいいか。」
恐縮そうに、菫と倉本は頭を下げた。
「おい、二条。・・・お前、俺の家の場所を前から調べていただろう?
この近さには、他意があるだろ!?
物凄ーく、お前の用意周到さを感じる。」
「さあ・・。たまたまじゃないか?」
澄ました顔で紅茶を飲む慧に、訝し気な顔を向けていた海は呆れた表情で自分の紅茶を啜る。
以前よりも柔らかい雰囲気になった2人の様子に、私はホッとしていた。
「美桜達は、あちらで住む場所はもう決まったの?」
「はい。安全を考慮して、大学院から目と鼻の先の場所を借りました。
僕もそこから、新しい勤務先に通うので安心して下さい。」
「そうなのよ。結局また一緒に住むことになったわ。破格だし、大学の寮も考えたんだけど心配だから一緒に暮らそうって言われて・・。」
「二条先生は美桜ちゃんの事になると途端に心配性になるのよね。
・・過保護な彼氏も大変ね。」
咲が苦笑いをしながら、美桜の肩を叩いて励ましていた。
「そう言えば!僕たちも引っ越しのタイミングで目白を勧められた事もあったよな、咲?それも山科さんの家の近くだったな。
常に二条の頭は、美桜ちゃんの包囲網を形成すべく動いて来たからね。」
咲と寛貴が顔を見合わせて笑う。
ん?
・・ちょっと待て!?
私だけ真顔になる。
聞き捨てならない発言だった。
「・・ほ、包囲網ですか?」
驚いた顔で乗り出した私に、慧は目の色を変えて寛貴を睨む。
「二条記念病院のアルバイトの話だって、同じ大学の・・仲川さんだっけ・・。」
「あああっ!!守田先輩・・。
それはまだ彼女も知らないので、止め・・もう、ちょっと落ちつきましょう。」
一番落ちついてない慧は、慌てて椅子から立ち上がり、守田の口を塞いだ。
それを見た私は慧を睨み付ける。
「もう!裏で暗躍ばかりじゃない。
・・慧の変態。不信感の塊なんですけど!」
青ざめながら項垂れた美桜の言葉に、紅茶を噴き出した慧は捨てられた子犬のような目で美桜を見た。
「あははは可愛らしい!!病院での様子や雑誌とのギャップが凄いわ。」
「いつも澄ましている二条が、山科さん絡みで揶揄うと面白いんだ。クールな天才が形無しだな。」
呆れた表情の海と、頬を膨らましながら紅茶とお菓子を口に入れた私は困り果てた慧を白い目で眺める。
「・・恐ろしい奴らだな。
人の明らかな弱点を突いて揶揄うなんて性質が悪いぞ。」
揶揄われた慧は、2人を睨み付けて恨み言を吐くとリビングは笑い声に包まれる。
以前のような揶揄うような様子は、影を潜めたお陰で、海とも安心して互いの目を見て喋る事が出来るようになったのだ。
「聖人の病院もここからならすぐだし、藤堂の家からも車で10分ぐらいなんです。
セキュリティーも万全で、マスコミからも守れます。
・・何よりも聖人の為にも、安心かと思いまして。」
「そんな・・。
本当に、なんとお礼を申し上げたらいいか。」
恐縮そうに、菫と倉本は頭を下げた。
「おい、二条。・・・お前、俺の家の場所を前から調べていただろう?
この近さには、他意があるだろ!?
物凄ーく、お前の用意周到さを感じる。」
「さあ・・。たまたまじゃないか?」
澄ました顔で紅茶を飲む慧に、訝し気な顔を向けていた海は呆れた表情で自分の紅茶を啜る。
以前よりも柔らかい雰囲気になった2人の様子に、私はホッとしていた。
「美桜達は、あちらで住む場所はもう決まったの?」
「はい。安全を考慮して、大学院から目と鼻の先の場所を借りました。
僕もそこから、新しい勤務先に通うので安心して下さい。」
「そうなのよ。結局また一緒に住むことになったわ。破格だし、大学の寮も考えたんだけど心配だから一緒に暮らそうって言われて・・。」
「二条先生は美桜ちゃんの事になると途端に心配性になるのよね。
・・過保護な彼氏も大変ね。」
咲が苦笑いをしながら、美桜の肩を叩いて励ましていた。
「そう言えば!僕たちも引っ越しのタイミングで目白を勧められた事もあったよな、咲?それも山科さんの家の近くだったな。
常に二条の頭は、美桜ちゃんの包囲網を形成すべく動いて来たからね。」
咲と寛貴が顔を見合わせて笑う。
ん?
・・ちょっと待て!?
私だけ真顔になる。
聞き捨てならない発言だった。
「・・ほ、包囲網ですか?」
驚いた顔で乗り出した私に、慧は目の色を変えて寛貴を睨む。
「二条記念病院のアルバイトの話だって、同じ大学の・・仲川さんだっけ・・。」
「あああっ!!守田先輩・・。
それはまだ彼女も知らないので、止め・・もう、ちょっと落ちつきましょう。」
一番落ちついてない慧は、慌てて椅子から立ち上がり、守田の口を塞いだ。
それを見た私は慧を睨み付ける。
「もう!裏で暗躍ばかりじゃない。
・・慧の変態。不信感の塊なんですけど!」
青ざめながら項垂れた美桜の言葉に、紅茶を噴き出した慧は捨てられた子犬のような目で美桜を見た。
「あははは可愛らしい!!病院での様子や雑誌とのギャップが凄いわ。」
「いつも澄ましている二条が、山科さん絡みで揶揄うと面白いんだ。クールな天才が形無しだな。」
呆れた表情の海と、頬を膨らましながら紅茶とお菓子を口に入れた私は困り果てた慧を白い目で眺める。
「・・恐ろしい奴らだな。
人の明らかな弱点を突いて揶揄うなんて性質が悪いぞ。」
揶揄われた慧は、2人を睨み付けて恨み言を吐くとリビングは笑い声に包まれる。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))
あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。
学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。
だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。
窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。
そんなときある夜会で騎士と出会った。
その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。
そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。
表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_)
※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。
結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)
★おまけ投稿中★
※小説家になろう様でも掲載しております。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる