二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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大輪の青い薔薇(8歳・アルベルト視点)

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「こんにちわ。お招きに預かりまして光栄に存じます。母、プリシラ=フェナルデイの名代として馳せ参じましたルナ=フェナルデイと申します。どうぞお見知りおきくださいませ。」

綺麗な鈴を転がしたような声の中にも、凛とした筋の通ったような美しく響く可愛らしい声だった。


本来なら幼少より幼なじみとしてカイザルや、サイラスらと一緒に行動を供にする許可を持っていた
選ばれし令嬢。

幻姫と呼ばれた、ルナ=フェナルデイ 7才との
初めての出会いだった。


青いサテンのドレスにピンク色のリボンが腰に結ばれていた。
サラサラに頬を滑り、腰までしなやかに流れ落ちる金色の髪に、大きくパッチリと開いたエメラルドのような瞳がきらきらと僕たちのほうを見上げていた。

眼が合って、彼女ルナ=フェナルデイはくしゃりと笑った。

カイザルも僕も息を止めて、彼女を見やった。

「アーネル様、アルベルト様、この度はお招き有り難うございました。」

笑顔で笑いかけられると、胸が急に苦しくなった。

発作のような動悸と、近づいてくる彼女の一挙一動足に眼が離せなくて自分の意思がコントロール不可になる。

「ルナちゃん、初めまして。
お噂に違わず美しいわ。アルベルトが固まったのなんて初めてよ。
これはフェナルデイ伯爵も邸に隠してしまうわね。」

クスクス、横目で息子を流し見ては満足そうに母が妖艶に笑った。

悔しいが、まだ動けない僕は同様に捕らえらた瞳を
讃えたままのカイザルを横目で見やり、言葉を発した。

「ルナ姫、不躾な視線を浴びせてしまい申し訳ありません。
初めまして、第一王子のアルベルト=エルフラン=ザッハ=ルーべリアと申します。」
     
宜しくと、小さな少女の前で膝を折った騎士の礼を取る。
カイザルも慌てて腰を折って礼を取る。

母のにやけ顔と、周囲の令嬢の唖然とした顔、令息たちが見惚れ、ゴクリと唾を飲む表情が情報として僕の視界に入ってきた。


恐ろしい破壊力をもったルナは、コロコロと笑顔で抗議をしている兄に少し困ってように眉毛を下げて笑いながら頷いている。

小さな声で、ごめんなさい。でも母の調子も今朝から悪くて、、、。と沈みがちな声音で兄に上目使いで返答する。

カイザルも僕もボーッと彼女を見やると、令嬢たちがなにか焦って話かけてきた。

「アルベルト様!次のお茶会はいつですか?」

「好きな食べ物をご用意したいので、教えてくださいな!」

「カイザル様はああゆうご令嬢がお好みなんですか?」

次々にまくし立てられ、現実対応に戻り笑顔であしらう。
カイザルは無視の一辺倒だった。
勿論、私も視線は彼女を何度も目で追っていた。

合わさることはなかったが。

「父上も城には来てはダメだと言っていただろう。
魑魅魍魎しかいない!早く帰ろう。馬車を急いで用意するから。さあ!!」

「兄さま、ちょっと過保護ですわ。
いつも話してくださるアーネル様やアルベルト様、カイザル様に一度お会いしたかったの。
勿論、お兄さまがこっそり憧れているリリア様も見てみたく・・。」


ガシッ。

サイラスにホールドされたルナは真っ赤になった兄に驚き、周囲も僕も驚きながらアーネルの側にいたリリアを見た。

注目されているリリアはぽかんと口を開けている。

リリアとは、僕の二つ下の妹でまだ6歳の姫だった。
9歳のサイラスが6歳の妹姫を気に入っているなんて初耳だった。

「まあ!!面白いわね。ねぇ、ルナちゃん帰ってはダメよ。
なんなら西の塔に監禁したいくらいなのに!サイラス、余りに騒ぐとルナちゃんは帰さない。
王城から出さないことになっちゃうわよ?あ、あんまりうるさいと・・・サイラスも捕まえちゃうからね。」


母が楽しそうに、ルナのそばによってサイラスを引き剥がす。

扇でサイラスをしっしっと打ち払うと
リリアを投げつけて

「さあ、リリアを大好きなガセボまで連れて行って遊んであげなさい。ルナちゃんは私とお茶をするの。文句ないわね?」

一睨みを効かせた母に逆らえず、渋い顔をしたサイラスは、頬を染めながらピンクブロンド髪を揺らし歩く
まだ小さいリリアを連れ、言われた通りにガセボに向けて遊びに行った。

母は、「さあ。気を取り直してお茶を楽しみましょう。」と、高らかに宣言をした。

近くのメイドに命じて、一人は父を呼びに遣わせ、もう一人はサイラスとリリアの見張りに派遣した。

その様子を見やり、母はやり手だなといつも以上に感心した。
ルナへの逸る気持ちは絶対にバレないように行動しなければと強く思ってしまった。

「じゃあ、ルナちゃん。陛下がくるまで時間があるから・・・。」

リリアがいた席を促され、恐縮そうに「失礼いたします。」と、緊張気味に座ったルナに
我が母は満面の笑みで問うた。


「ルナちゃんはー、アルベルトとカイザルとどちらが好みかしらー?」

ブーッ。と紅茶を噴いて咳き込んだ我らを背に
母は楽しそうに回答を促すのだった。

「な。何をおっしゃるんですか!!初対面の姫も困惑されておりますよ。」

いつも落ち着いているカイザルが乗り出して行った。
ちょっと僕も深呼吸してから向かおうかな。

カップを置いて、三回深呼吸。
大丈夫、僕は王子。

落ち着こう、自分。
母のペースに填まると蟻地獄。

と、念じる。

「恐れながらアーネル様、、。」
ルナが顔をあげ

「まだ分かりかねますわ。まだまだ人となりを知りませぬゆえ。
お二方も、私なぞに選定されるなんて恐れ多く不名誉と思われるでしょう。」


7才にしては素晴らしく思慮深い回答で、僕はびっくりした。

美人なだけじゃないのだ。
教養も、思慮深さもある令嬢なのだと気づかされた。

少しの沈黙と、申し訳なさそうに視線を下に下げたルナに母が静かに声をかける。

「そう、ルナちゃんさすがプリシラの娘ね。
気に入ったわ!!
アルベルトの妃にしたいくらいよ!!娘に欲しいわー。」

横から似たような声で

「あら、奇遇ね、うちのカイザルのお嫁さんになって欲しいと思ったのよ。」

不適に笑う義姉妹が一組。

情況についていけず固まるルナ。

頬を染めうつ向くカイザル。

不敵に笑い、競い合う母方の怖さ半端ない。


やっと情況を飲み込めた僕が
驚きと、幸せな喜びが溢れた。

「え?ルナが僕のお嫁さんに?!」

「そうよ?名案でしょう。アルベルトには勿体無いかもしれないけれどね。
更に鍛練が必要になるわね。」

母はにやりと笑う。

「まだあの8才、、だし。ルナ姫の気持ちだって。
ぼ、僕は嬉しいけど。。」

キャー!!と声を張り上げる令嬢たちと、悶える令息たち。
困惑した顔のカイザル。

正直、僕も数えきれない人と対面していたけれど
初めて会ってからこんなに僕が興味感心を持った人間は初めてだった。

「ルナ姫は、、、。あの、また僕と会ってくれますか?」

勢い余って椅子から立ち上がると、後ろから首をがしりと
ホールドされた。

「私は許しませんぞ。」

地を這うような低い声が耳元に聞こえた。
フェナルデイ伯爵。

我が師匠の恐ろしい怒りの込もった台詞にカイザルも僕も氷ついた。

ルナが驚いて「お父様、暴力はいけません。」
と必死で止めてくれた。

「フェナルデイ。良いではないか。
アルベルトは優秀で真面目な王子をやっておるだろう。」
「陛下は黙っててください!!大切なプリシラとのたった一人の娘です。
世界一可愛らしい娘なのです。誰にもあげません!!」


父上はちらりとルナを見やるとほぉ~と感嘆の声を上げた。

ルナが礼を取り自己紹介を始めようとした矢先。
サイラスもバラ園へ帰ってきていたようで情況を瞬時に察した。
父フェナルデイ伯爵とルナを抱え逃げるように担ぎ上げ、、走り去った。

「忘れてくだされ!」


フェナルデイ伯爵は叫んで逃げていく。

何を。と思いながらも、浮かぶのは可憐なルナの
姿だった

嵐のお茶会はこれにて閉幕。

ルナ様親衛隊が翌日、良家の子女子息によって発足したと風の噂で耳に入ることになる。


初めて会った日から、僕はルナが欲しくて堪らなくなった。

多分、カイザルも同じ気持ちだろうなと胸が少し痛かった。




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