二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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陛下の想い。

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朝の王宮の庭園は静寂に包まれていた。

朝露が滴る花々に、可愛らしい鳥の囀り。
しかし、芳醇な薔薇の匂いと冷やっとした朝の庭園の肌寒さに現実感覚に戻される。

今、陛下は何とおっしゃった?

カイザルの’力’と’血’って・・何?

宰相一家に特別な力や血を持ってお生まれになるなんて、、そんなデータは無いわ。
でも、私が知らない

彼は宰相の息子で、アーネル様のお兄様と、母君であるテレーゼ様の元にお生まれになった
長子で・・・。

ズキン。

頭に痛みが走った。
こめかみ近くを押さえながらカイザルを見やると、彼はそこらじゅうの薔薇も驚くほどの美しい笑みを浮かべた。

「アルベルトは・・・助かったようですね。」

はっとして「は、はい!!まだ目は覚ましませんが処置は終わりました。」

「ルナ姫は、・・奇跡の姫だからと。貴方なら助けられると信じておりました。貴方は人を癒す才能があります。
大切な親友を私が自らの手で殺してしまうところでした・・・。本当に、ありがとう。」

凪いだ美しい海のような、ラピスの青い目で静かに笑んだ。

この方は、笑うと本当に・・・。
私は鼓動が早くなり、顔が火照った。

この世界は高スペックだらけでどこを見ても鼻血を吹き出しそうになる。
美の化身だらけで平均心拍数が現世と比べたら2倍は速くなっている自信しかない!

私の心臓、老後まで持ちそうにありません!!!
短命決定!!


「ルナ姫、アルベルトは・・・アルベルトはもう大丈夫なのか?」

あ!!違う世界へ飛び立つところだった。

いけないいけない。

渋いイケメンの陛下も素敵ですよ。
と、心の中で何故か必死のフォローをいれてしまった。


「はい!もう体温も脈拍も正常です。呼吸も落ち着いておりますわ。
後は数日間看病させて頂きたく思っておりました・・が、陛下からお部屋を賜ることが
出来ましたので、そちらで数日間お世話になりたいと思います。
女である私に、アルベルト様の治療をさせて頂く機会を下さいまして有難うございました!!」

心からのお礼を伝える。

「そう・・そうか。知らない言葉の数々だな。ルナ姫は本当に医術の勉強をして参ったのだな。
昨日愚息の顔色を見て、手を触れた時の冷たさに・・・。正直、もう持たぬだろうと思っていた。
有難う、こちらこそ感謝しかない!」

少し目に涙を浮かべた陛下は、その様子を隠すこともなく少し皺の刻まれた頬に可愛らしいえくぼが刻まれた
微笑みを浮かべた。

「いえ、たまたま助ける知識と技術がありました。当たり前のことをしただけです。
二人の信頼に感謝致します。」


と静かに頭を下げ、その場所を辞した。
去り際にカイザルは私に切なそうな目を向けたが・・・私は視線を返すことが出来なかった。

陛下はアルベルトと同じ空色の瞳・・・。
優しそうで、色々な物が見えている慧眼の瞳。
・・・アルベルトが助かって良かった。
ルナにとっても、カイザルやサイラス、この国の人々にとっても宝物のような
人・・・。
きっと彼も父のような素晴らしい大人に成長してくれるのだと思う。

「・・はぁっ。」

歩きながら大きなため息が出た。

あの場では、先ほどの会話を問いただせる雰囲気でもなく、私は頭に更なる大きな疑問とルナの不安定な
気持が溢れている心情の混乱による不快感との応酬が頭の中で繰り広げられていた。
疲れ切った身体にも、眠気がどっと襲ってくる。
次から次へと混乱の事態を重ね、情報量が膨大になった私の小さなキャパシティは崩壊寸前だった。

「取りあえず、患者が優先よね。夜勤の時なんて2日ほぼ寝れない時もあったもの。
寝るなら寝室じゃなくて、アルベルトの傍で力尽くぐらいの患者ファーストで・・まだまだ私は大丈夫。頑張るぞーー!!」

両頬をパンパンと叩き気合を入れた。

色々な不安の到来に、負けそうになる気持ちを再度奮い立たせる。
女官へ声をかければ案内してもらえるだろうなぁとは思ったが、落ち着いたとはいえ、心配な患者を残して
眠れない!と思った絵里香は与えられた自分の部屋ではなく、アルベルトの眠る部屋へと戻ったのだった。



その30分後、アルベルトの部屋からは彼の物ではない女性の大きな鼾が聞こえたのだった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ルナの姿が小さくなり、二人はそれを確認して安堵する。


「・・・今の話は姫に聞かれてしまったかのう。
カイザル、重ねてすまぬ。お前が一番聞かれたくない者にを知られてしまっては・・・。申訳ないことをした。」

謝る陛下の肩が揺れていたので、カイザルは焦りを覚えていた。
自分のことで一番に迷惑をかけてしまっている陛下には、これ以上心労をかけたくなかった。

「陛下、私の生まれについては・・・。陛下とアーネル様とフエナルデイ伯爵夫妻と、私の父と母。
そして、だけの暗黙の話でした。ですが、いつかは日の目を見てしまうかもしれないと危惧して来ました。勿論いつか姫にも知られることになるかと思います。
ルナ姫は口の固いお方ですし・・。詮索をするような方でもありませんが。もし、彼女が私に直接聞いて来た時は全てを話す覚悟があります。例え・・それで彼女の側にいられなくなっても。」

カイザルよりも痛みを称えた表情の陛下は静かに頷く。

「もし、お主や儂の口からではない所でこの秘密を姫に知られるとしたら・・・最悪の形で知られるだけだからな。・・・そんな事には絶対させぬゆえ・・。カイザル、どうか自身を大切に。」


「陛下、常より愛情を深くかけて下さる皆さまのご迷惑にならぬよう、今後も精進いたします。
アルベルトの側に伺っても宜しいでしょうか?」

「勿論だ!!変わらず、愚息のことを宜しく頼む。・・・だが、ルナ姫のことでは。。お主には拷問以外の何ものでもないのではないか?」

「・・・先ほど、サイラスから聞きました。
婚約の継続の話も。私は大丈夫です。アルベルトが目を覚ましたら、またちゃんと彼とは話しをさせて頂きます。
そのような機会をまたくれたルナ姫に感謝します。」

憂いはすべて吹き飛んだような爽やかな笑顔だった。
頭を深く下げて、振り返ったカイザルは潔い表情を浮かべていた。

アルベルトの元へ。
弟のような大切な存在であるアルベルトの顔が今すぐ見たいと思った。
自分が傷つけたことも詫びよう。
いつも前を向き、優しいあの空のような青い瞳を思い出した。

カイザルは颯爽とした歩みで朝のバラ園から姿を消したのであった。

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