二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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愚王。

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王宮の謁見の間。

フラスコ画の高い天井が美しく、金と色とりどりの絵筆で描かれた絵画と、凝った彫刻とが相まって豪奢な雰囲気が漂う。

婚姻の申し出に合意を得た兄は、すぐに陛下に伝えた。

陛下とアーネル様は喜び、明日の出立前の労いも兼ねてこの場所へ集うよう命じた。

サイラスとリリアのおめでたいニュースに、フェナルディ伯爵は大喜びだった。
「あのサイラスが、リリア姫に婚姻を申し込むなんて思わなかった!」

父である、ライオネル=フェナルデイでさえ驚く事態であった。

「好きな気持ちを諦めたくなかったんだ。
アルベルトや、カイザル、そしてルナ。お前たちを見て学んだんだ。皆の互いを思いやる気持ちと、思いの強さを見て、自分の気持ちと未来の選択へと向き合うことが出来たんだ。感謝している・・・。」

以前とは雰囲気が変わり、男らしさを感じる様相になったサイラスに陛下や父、友人たちも驚く。
堂々としたサイラスに嬉しそうに寄り添うリリアは、妖精度が振り切れそうなくらい可愛らしかった。

私、眼福です!!

急に父が何かの合図を確認すると姿勢を正した。

「今日は婚約のめでたいニュースの他に、もう一つ明日のお前たちの出立の前に・・・私たちから話がある。」



私だけでなく、カイザルやアルベルト、サイラスにリリアも動揺を隠せなかった。

謁見の間の雰囲気はガラリと変わり、急に緊張感が走る。

陛下の後ろのカーテンから、王妃殿下が姿を現した。
何より、その隣にアーネル様が笑顔で寄り添う姿が見て取れ、一同にざわっと揺れた。

不仲なはずのお二人はどう見ても距離感は近く、親密さが感じ取れる。
・・・何故?

サイラスの父母であるエルシュタット夫妻も横に控えている。

「さて、めでたいニュースの後で申し訳ないが、カイザルとシェンブルグ共和国の結びつき、そしてカイザルの血の宿命について旅立つそなた達に話そう。」


「私の口から言わせてください・・陛下。これは私が全て齎したこと。貴方たちを巻き込み、申しわけ在りませんでした。」

王妃が前に進み出て、美しい令をとる。
深く首部を下げ、頭を下げた。
しかし、よく見ると王妃の目からは涙が零れていた。

私たちは、一連の流れに驚きと動揺を隠せない。

「王妃殿下!頭を上げてください。一体、何があったと言うのですか?」

アルベルトも穏やかではなく、驚愕の表情で王妃に問いかけた。
陛下もそれを見ると、悲しそうな顔で告げた。

「カイザルはこの国の者ではない。隣国シェンブルグ共和国は以前は王国と呼ばれていた。
カイザルは現王よりも遥かに血と力が強く、使命を生まれながらに持って生まれてきた者なのだ。
シェンブルグは、神託と血と魔術によって王が決められる特殊な国だ。
王女の血の流れるカイザルは王族で、王位継承権がある。
王の子供だから国を預かるのではなく、王族の中で生まれた者が順番をつけられる。
その中で特に、血と力の強い者が王となる国なのだ。」

シーンと静まり返ったまま、時は過ぎていった。

誰もなにも言えなかった・・・。

静寂を打ち切ったのはカイザルだった。

前へ歩み出て、皆の表情を見ながら
静かに語りかけるように、澄んだ低い声で自分の出自の話を始めた。

「私の実の父はシェンブルグの魔法騎士だった。シェンブルグの第一王女である母と、この国との政略結婚が決まる前に恋に落ち、二人は深く愛し合っていた。
だが、それを知った現王、カディール=アル=ザルト=シェンブルグに引き離され、ルーベリアへ無理やり嫁がされたのだ・・・。しかし、嫁ぐ前に、母の腹に私が宿ったと知った時、命を狙い殺いるよう部下に命じさせ、母の命すら狙った。」


カイザルの話す話は、お伽の国の物語のように現実感を感じない・・悲惨な物だった。

自分の兄に命を狙われ、子供を守ろうとした王妃は、ルーベリア王に嘆願した。隣国に留学していた陛下とフェナルデイ伯爵、そして同じ学院で学んでいたアーネル様は彼女を守ろうと共謀した。
急いで帰国した陛下は王妃と子を守るために形だけの婚姻を結び、無事に保護。更に離宮に匿い数か月後にはカイザルを無事に出産させたのだった。

王妃の傍には彼女を愛し守るシェンブルグの最強魔法騎士であったアルベルト=エルタニアンが付き添い共に暮らしていた。
ここで驚いたのが、アルベルトだった。

「あの・・・。カイザルの父の名は、僕と同じ名だったのですか?!」

「その名は、アーネルが命名してくれたのです。
祝福の子として280年ぶりの先祖返りとして血も力も特別に生まれたカイザルを隠さねばならなくて・・・。
命を守るために2歳までは遠い村の夫婦に預けていたの。でも、そこで疫病が流行って大変な状況になってしまっていたことを私たちが知ったのは大分後になってしまってからだった・・・。」

悲痛な表情で王妃はゆっくりと私たちに語る物語は・・さらに恐ろしい結末を伝えるのだった。

「すぐに迎えに行かせ、警備も強固な宰相夫妻の元へ届けにアルベルトは走ったの。
カイザルが2歳になった日、命を狙って差し向けられた刺客に彼は殺されてしまった。
彼がいない世界、我が子であるカイザルもエレンシュタット家にいる。・・・私は一人ぼっちになった。

陛下とアーネルは、私を力の限り励まし続けてくれた。
生まれた輝く美しい王子に、私の愛するアルベルトと同じ名を付けてくれたの。強く優しい息子に育つように、と。」

カイザルは母を見た。
切なそうな顔で母の傍に寄り添い肩を抱いていた。

王妃はカイザルの顔を見て、更なる涙が頬を伝っていた。

「その後、サフィールが生まれたのだ。」

「それでは・・・まさか、サフィールの父は・・・。」

アルベルトは真っ青になりながら父に顔を向けた。

まさか・・・・・・。でも・・。似ていないと皆は言っていた。
王妃にも似ていない、陛下にも似ていない容姿の王太子候補。

父は別にいるのでは?と疑う者がいたことをアルベルトは思い出したのだ。

ルナ、リリアやサイラスも
全ての真実の前に膝ががくがく震え、真っ青な顔のアルベルトを見つめた。

陛下は静かに応えた。

「そうだ。亡くなったアルベルト=エルタニアンの息子だ。
私の子供はアルベルトとリリア、そなた達だけなのだ・・・。」

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