二者択一で転生した令嬢は将来も選択したい

館花陽月

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任命式前夜。

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奇跡で沸く町に、私たちは多めに持ってきた水と食料を少しだけ置いて旅路を急いだ。

黒い駿馬が私たちの馬車を止めた。
柔らかな黒髪にアメジストの王子が優雅に馬上から降りる。

「久しいな。・・・と言っても数週間ぶりだな。」

明日の式を前の登場に戸惑う。

「エミリアン王子?!なんでこんな所に?!」アルベルトが慌てて聞く。

「明日任命式でしょう?準備とか大丈夫?!・・・以外と、お暇なんですか?」

図星ではないだろうに・・・。

「・・・・相変わらず、本心と言葉の一致が素晴らしいな。忙しい中、お前たちを途中まで迎えに来たという王子に対して! ルナ姫は私への態度があまりに失礼すぎるぞ・・。」眉間に皺を寄せ、不貞腐れた顔で笑う。

慌てて前に出てきたアルベルトが礼を取る。
「申訳ありません、王太子になられるエミリアン殿下が自らお迎えに来てくださるとは、、感謝致します。
不敬はもう周知の事実なので敢えて罰しても、キリがありませんけれど。
ルナが。ルナ、だから・・ルナだし・・。」

アルベルトが頭を下げながら残念そうな眼で私を見る。

いやいやスミマセン。
私だし確かに私ですよ!

「それよりも・・。驚かれたのではないか?
国境周辺の町のこの有様・・。近隣諸国は何も知らぬ故。驚かれるとは思っていた。
この事も含めて、そなた達と話しをせねばならない。
しかし王都はあまりに危険だ。先の街である、ラバトに信頼出来る宿を取ってある。そこで一晩休み、明日の任命式へ向かわれた方が良いと思う。」真面目な顔に戻ったエミリアンが提案する。

「そうですね。昨日から、見張られている感じしかしないので場所を移す前に・・・・。
・・・ここで少々失礼して始末しても宜しいでしょうか?」
カイザルが低い声で告げた。

「・・・頼む。」エミリアンの返答を聞く前にカイザルはその場から一瞬で姿を消す。

ぐあっ。
うわああぁあああ。

ドシャ。

パンパン。

膝を手で汚れを払って戻るカイザルの姿にポカンとする。

「・・・さあ、行きましょうか。」


えー!!

汗一つかかず、何もなかったような顔で皆の元に戻ったカイザルに私は唖然。
いつもこんな事をやっているのだろうか・・。

「ルナ、荷物を持つね。」慣れたようなアルベルトと、横で水を飲み干しているサイラスにも
驚く。

一体あなた達、どんな人生だ!
と抗議したい。

・・・こんな日常、慣れたくないんだけど。

出立する馬車の中で、「あっ、ルナ!俺の分も食べちゃ駄目だぞ!リリアのお手製をバクバクと・・お前はー。。」サイラスが大人げなくお菓子の権利を主張する。
「お兄様、うるさいですわ!お菓子ぐらい食べさせてください!」
「ルナ、僕の分を食べていいよ。」「私も甘いものは好かないから食べてくれ。」
そう、ありがとう。と有り難く受け取り口に運ぶのであった。
私は、今日の一連の疲れのストレスでリリアのお菓子をやけ食いし、到着する頃には気持が悪くなってしまっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

星が天に輝き、美しい満月の姿が現れる。

エミリアンの選んでくれた宿は、ラバトの入り口から王都へ続く道の丁度真ん中ぐらいの所にあった。
夕刻に到着し、各々買い物を楽しんだ。
ルーベリア王国から移住して来た民が開いた宿らしく、所々にルーベリアの産物であるマラカイトや、エメラルドなどの石が飾られていた。

宿の一番広い部屋はリビングが付いた豪奢な部屋があった。
可愛いブルーのストライプ柄の壁紙と、セミダブルぐらいのベッドがあった。

「お前達は、ルーベリアの王と王妃から真実を知ったようだな・・。衝撃を受けたようだが、大丈夫か?
私の父がしたきた事で、お前達を沢山苦しめてしまった。本当にすまなかった・・。」

明日王太子を任ぜられる王子が深々と頭を下げ、私も皆も慌てて顔を上げるよう声をあげた。

「貴方のせいではないでしょう?むしろ、この国の現状をこの目で見て貴方の心痛はどれ程のものだったかと思います・・・。自分の父や母を否定するしかなく育って来た、貴方だって被害者だ。」

「いや・・。死んでいく民を止められぬ私は、無力だ。心が読めても癒せぬ・・・。
だが、私は明日の任命式で、もう一人の王子であるカイザル、貴方を表舞台に出し、父と違うことを宣言しようと思っている。」

「・・・そんな事をしたら、貴方だってタダでは済まないのでは?」アルベルトが焦った声を出し、立ち上がった。エミリアンは、寂しそうに笑った。

「もし、私が死に場を選べるとするなら、覚悟を持ってこの国に選択をしに来た貴方方と共に在り、命を賭して父と戦い、国を・・民を救う選択をしたいのだ!
カイザル、お前は闇の選択で消滅する必要はない。・・・父は、私が自らの手で殺す。
今まで何もしなかった私も罪人であり、それが私の民への贖罪だ。
お前は未来を創る光を選択し、この国を照らす未来を貴方の手で選択してくれ・・。そして、カイザル・・・。
どうか我らの真の王となってくれ!頼む。」

エミリアンの言葉の重さに鎮まる。

カイザルは何かを試案し、口を開かず考え込んでいる。

私も言葉の意味を理解すればするほど、息苦しくなる。

自分の父を殺す・・。
どんな思いなんだろう・・・。
彼はどんな思いで、親の愚行を見て来たのだろう。

彼の心情を思うと涙が出そうになった。
目の前で死んだ子供や、川の側に重なる死体の山・・・。
あの光景が繰り返されて来たこの国に、未来はない。

剣も使えない、魔法も癒すための歌ぐらいしかスキルがないので
攻撃力は0に等しい。が、私も何自分の出来ることをしたい!

「私にも。。何か出来ることはありませんか?」

恐る恐るエミリアンに問う。
アルベルトは「君を危ない目には合わせなれない。」そんな目で私を咎める。

「そうだな。・・・ルナ姫には重要な役割がある。貴方でないと出来ない事があるんだが・・。」

サイラスやアルベルト、カイザルが驚く。

「ルナを危険な目に合わせるなんて聞いてないぞ!!」サイラスが怒りを表した。
「ほう、ではお飾りで姫を連れて来たと言うのか?」
エミリアンは酷薄な笑みでサイラスに、睨みを効かせる。

「カイザルは聞き及んでいるな。闇と光の二者択一には鍵が必要だと。
神を降ろす為の力が必要であり、この国の神官に選ばれた「器」が必要なのだと。」

まだ動揺を隠せない様子のカイザルは

「そんな物に頼らずとも王を殺し、消滅するつもりだったのだ・・。そもそも、「器」が何なのかも
まだ分からない・・・。」

「器ってなんだ?!一体何の話?」アルベルトはカイザルを問いただす。

・・・うん、私も気になる!!

「「祝福の子」と呼ばれた私が、世界の闇か世界の光かを選択する手段を取るために必要な・・・。」

コンコン。
急に扉がノックされる。

カイザルが説明を詳しく始める前に、エミリアンは椅子から立ち上がり入口のドアの扉を静かに開けた。
その動きを驚いたように二人が見やる。

黒の髪と金色の目を持つ、白い繻子のような美しい着物を羽織った3,40代ぐらいの男性がそこに立っていた。

「それは私の口からお話し致しましょう。」

美麗で厳かな雰囲気を持ち、私の気のせいだろうか彼はその瞳から神々しい光を放っていた。

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