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姐さんと呼ばないで!

姐さんと呼ばないで!⑥

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「待って!!お願い、行かないで・・。」

振り向きもしない後ろ姿目掛けて、私は必死に叫んでいた。

「嫌・・。私、貴方がいなくなるなんて耐えられない・・。嫌よ!!」

涙が頬を伝う感触を感じた。

震えながら、ただ黙って見つめるしかない・・。

背を向ける誰かに、縋るような心の声で叫び続ける夢を見た。

 ガバッ・・!!

ボサボサに絡み合った髪と、眠気眼のままでベッドから起き上がった。


「なんだ・・。何なんだろう、この夢は、胸糞悪いな・・。」

最近よく見る悪夢に、私の寝起きは気分が最悪・・。

薄っすら涙袋に透明な液体が溜まっていた。


「お嬢様・・!?おはようございます!!
今日は、早く起こしてと言われたんですが・・。
何度起こしても、涎を垂らして休まれているので無理でした!!
今はちなみに、7時でございます・・。」

メイドが恐る恐る、不機嫌な私に声をかけた。

「うわーっつ!!大変だ・・。今日、朝から勉強会やるんだった・・!!」


私は、慌ててベッドから飛び起きたのだった。


11月も末・・。

結婚式まであと、4か月になった。

ジュリーと、クロードの間には気まずい雰囲気が流れていた。

はぁ・・。

毎日、目を腫らして登校してくるジュリーを見ているのが辛かった。

計画通りとは言え、ジュリーのあまりの落ち込み様には、胸が痛い。

でも、これもあともう少しの辛抱!!

あと4か月で、何とかあの2人を再びドラマチックに盛り上げるわよ・・!!

黒板に、問題をスラスラと書き殴る。

私は、シルバーグレーの瞳を輝かせて振り返ると
大きな声で質問を仰いだ。

「さぁ、この問題はどうかしら?解る人は挙手をしてくれる??」

ザッ・・!!

数人の生徒が綺麗に伸ばされた手を上げて、挙手をする。

最前列で美しい挙手をする2名に、冷たい視線を投げかける。

「カイルも、レオもこんな問題は目を瞑っても解けるでしょ?
何でここに参加してるのよ・・。」

呆れたような表情で、2人を見下ろした。

カイルは、砂漠の国ザイードの王太子であり、留学生の身。

成績も勿論優秀で、エキゾチックな美貌を持つサラブレッド男子だった。

知らない私がどうなのよと思われる訳で・・。

イケメンでハイスペックなら、そりゃモテる訳だ。

「同じ生徒会の仲間として、どんな授業を教えているのかを把握しておくのも
大事な任務だ。先を続けようか・・。」

「任務を越してるわよ・!!引退して、暇なの・・!?」

「ばっ、馬鹿な・・!?暇なものか。
これも任務の一環だからな!断じて、暇じゃないぞ。」

レオは、慇懃無礼な態度で私を見上げる。

めっちゃ動揺してるし。
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