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騎士団との旅立ち。

神力ファーマシスト⑤

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「でかしたぞ、シアちゃん!!
素晴らしい子を、本当に有難う!!!この国の将来は明るいぞぉっ!!」


満足気なリオルグが、興奮気味のコレットと何やら大喜びで抱擁をしていた。



「・・・言い方、可笑しくないですか?私、別に懐妊したわけじゃ・・。」


サラマンダーは、今度は天帝の金色に輝く椅子をかじっていた。(無礼の極み。)


「「ガシャン、ガシャガシャン・・・・。カラーーーン。」」


謁見室の入り口付近から、激しい破壊音がして振り向いた。


割れた水差しと、全身を震わせる人影が数個か確認出来た。


うわっ!
嫌だ、この展開・・。

・・めっちゃ悪寒がする。


「・・・!!!アレクシア様ぁぁぁあ」


出た・・。


バッドタイミング侍女。


「おおお、おめでとうございます!!
仲直りベイビーですね!?
ああ、でも昔から子は楔て言いますもんね!!良かったですわぁ。
あ・・。あら、でも。・・大変だわ!!
すぐに、結婚式の日取りを決めなければいけませんわ!!」

・・子は楔??

始めて聞いたし。

侍女のミリアが瞬間移動ばりの速さで現れ、力強く私の手を握った・・。
その後ろから、非常に残念そうな表情のエーテルがハンカチで涙を拭った。

「・・・ご愁傷様です。」

「・・・はい?」

私の腹部をジッと見ながら、紅い瞳を揺らして顔を上げた。

「お可哀そうでなりません・・。
レオの卑怯な手に沈められてしまいましたわね。
確かに逃げ道が絶たれてしまいましたが、如何なる時でも諦めてはいけませんわ。
必ず、私が別の人生を選択出来るように、着々と影で準備させていただきます!!
・・誰が何と言おうと、私はシア様の味方ですわ。」


エーテル・・。

ああ、良かった(?)
いつもの冷淡で辛辣な侍女仕様のエーテルだわ。

ちょっと意味が解らないけれど・・。


「えーと、うん。
多分、私の為に考えてくれてるのよね?有難う、エーテル・・・。」


「でも、二人とも。何か感違いしているようだけど・・。
その言い方だと、また話の断片だけを聞いた人物の誤解が
増えるからっ・・て!!?・・・えええっ!??何で、レオがいるの!?」


エーテルとミリアの後ろに、今一番会いたくない。

金色のスラリとした長い黒服を着た見覚えのある人物が立っていた。


「シア、ただいま・・・。思ったより早く帰れたんだが・・。」

ふらっと足をよろめかせながら、私に近づいてきたレオはガシッといつもの
馬鹿力で私の肩を掴んだ。


「今の話は本当なのか・・??」

レオの濃いサファイアブルーの瞳が喜びと歓喜に大きく揺れていた。

「う、嘘よ!!・・・ちょっと、距離が近いってば。鼻がぶつかる距離よ?」

「シア、いいんだ・・。全部解っている!!
出来たのか??俺たちの子・・・ぐはぁぁっ!!!!」

「ビュキュキュッ!!!キュウウウ!!!」

さっきまで帝座を歯が痒かったのか、歯がためをしていたサラマンダーが、
レオの顔目掛けて突っ込んでいった。

「・・ちょっと顔面に飛びついちゃ駄目よ!!
レオ、大丈夫??こらっ、サラマンダー。少しは落ち着きなさいよ!!」

「・・い、痛いな。今のは何なんだ・・。一体、何事だ??」

「キュブィ・・キュキュウ!!」

顔に当たったまま、ぽふんっと真下のレオの腕の中に落ちたサラマンダーだったが・・。

嬉しそうにレオの甲に頬ずりをした。

「シア、何なんだ・・・。この愛らしい生体は・・。」

大きな水色の瞳はレオの青い瞳を見上げながら凛々と輝いていた。

「ああ、ごめんね・・。その子、私の召喚した聖獣なんだけど。
あー・・、神聖獣だったかな?ちょっと多動気味で。」


「これが、シアの・・!?神聖獣を召喚したのか・・??!
なるほど。道理で、愛らしくて可愛らしい生体だと思ったんだ。
シアそっくりの水色の大きな瞳が澄んだ湖のように美しい。これは、・・何時間でも見ていれるな。」

「瞳の色だけは認めるけど。
不特定多数を困らせる多動っぷりと、主を丸焦げにする気性の激しさと、
奇天烈な色味は全然似てないと思う・・。・・っていうか、似てないから!!」

「あははは。何だそれ!!お前は、そんな事をするのか??
悪戯っ子だな・・。」

「キュウブ?キュキュイィィ・・。」

甘い声を出して、嬉しそうにレオの周りを羽をパタパタ羽ばたかせていた。


・・・誰やねん。


悪戯っ子レベルじゃなくて、犯罪者レベル・・。

さっきまで帝座かじってたんですけど。

椅子のクッションから綿出てまっせ。


「もう・・。何なのよ・・!!?
他人によって態度変えるとか、性格がひん曲がってるわ・・!!」

「・・・アレクシア様、良かったですね。心から安堵しました!
最悪ルートは回避ですわね・・。神聖獣の召喚おめでとうございます。」

エーテルが、コソッと耳打ちをした。

私は、ため息交じりに眉を下げて頷くと
いつもと同じ様子で、瞳を細めたエーテルが笑った。

「可愛いな。サラマンダー、こっちにおいで。ああ、よしよし。」

「キュウウゥ。ウキュ。」

なんじゃあれ!!

まるでレオの子じゃない・・。

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