転生伯爵令嬢は、裏切り者からの寵愛に戸惑う。

館花陽月

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騎士団との旅立ち。

神力ファーマシスト⑫

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「ヒック・・。ヒック・・・。」

真っ暗な部屋の中に雑多に置かれた椅子や机・・。

それに、木箱が積み置きされていた。

その暗がりの中で冷たい床に、体育座りのように身体を小さくした
少年が、身体を震わせていた。


ドンドンドン・・!!

「そこにいるのは解っているのよ・・!?早く、出てきなさいよ!!」


激しくドアを叩かれる音と、荒っぽい怒声が聞こえた瞬間
その少年はびくりと身体を震わせた。

暗がりの中をふらりと立ち上がり、ドアの反対側へと吸い込まれるように
歩き出した。

「お前のせいで・・・。私は、こんな人生・・・。本当なら私が・・・。」

ブツブツと、ドアの前から聞こえる女性の声を
耳を塞ぎながら少年は前を向いて歩く。

少年が立ち止まった先には、大きな白い布がかけられた壁があった。

手の甲で涙を拭いた少年は、無気力な瞳のまま
ゆっくりとその白い布を引いた・・・。


ふわりと、大きな布が暗い部屋の冷えた床にファサッと落ちた。

その少年は、瞳を大きく見開いて何かを・・・。




「・・ア!・・・・大丈夫か??」


身体が揺さぶられる感覚がして、重く沈んだ意識が浮上する。


「・・・・シア。・・アレクシア??!」


パチッと目を覚ますと、心配そうに私を覗き込むレオの姿があった。


「魘されていたようだったら、心配で・・・。怖い夢でも見たのか?」


「あ、あれ??!私・・・。えっと・・。今の夢なの??」


あまりにも鮮明な先ほどまでの光景に、まだ現実に戻った感がなかった。

泣いていた少年は、あの後どうなったのだろう??

汗を額に滲ませたまま、ゆっくりと身体を起こした。

そこに水差しから汲んだ水を一杯差し出され、飲み干した。

「ああ、ごめんなさい・・。でも、・・・魘されていたようだって、何で分かったの?」

一瞬だけ、レオの瞳が宙を泳いだ。

「・・・ああ!!盗聴、透視ね。また、勝手に他人の様子を見ていた訳ね?」

「盗聴と言うな、・・これは日課だ。
安心して眠る為には、シアの寝顔を胸に焼き付けてだな・・。
今夜も、いつもの日課を完遂しようとシアを見たら、激しく魘されていたので心配で飛んできてしまったじゃないか。」

正当化ですか・・。

「まず、透視、盗聴に人の寝顔を盗撮と来たわね・・。
更に、不法侵入と罪状が増えるだけね。喋れば喋る程、墓穴彫ってるわよ!!」


「これは日課であって、シアの安否を確認する行為でもある。単に罪とするのではなく、俺の重要な任務だ。」

えーと、覗きが任務と??

馬鹿だ・・。レオってば真顔で犯罪者になるタイプね?


「・・はぁぁ・・。頭が痛いけど。まぁ、いいわ。
明日も朝が早いのに、私を心配して来てくれたのよね・・。有難う、レオ。」


私の言葉に、驚いた表情のレオは口をポカンと開けていた。

・・・言わなきゃいけないことがあった。


ちゃんと、レオに伝えなきゃ。


「私、明日の朝・・。みんなと一緒に行くことになったわ。」


「ああ、知ってる。・・シアの作る薬はよく効く。
きっと大勢のアルトハルトの国民を救うことになるだろうな。」

私の頭を優しく撫でるレオの瞳から、吹っ切れたような何かを感じさせた。

レオの言葉に、私の水色の瞳は激しく揺れた。

「・・・頑張るわ!!貴方の国の、大切な民を救う手助けをさせて欲しいの。
絶対に大丈夫なんて保証はなくても、私は何かされても意地でも助かるから!!
だからお願い、レオ。私を信じて。」

気が付くと、初めて私は自分からレオに抱き着いていた。

「ごめん・・。さっきは、シアの気持ちを理解していると言いながらも自分の感情を
優先した物言いをしてしまって。
自分の危険を顧みず、他の人間を心から助けたいと思っている・・。
そんなシアだから・・。諦めようとしても、君と言う人間を知れば知る程・・。余計に好きになっていく。」

レオのシルクの寝間着からは、柔らかい石鹸の香りがした。

大きな腕の中で、更にわたしは強く抱きしめられた。

「・・馬鹿ね!!レオも覚えているでしょう??
私が誘拐された後、無傷で敵を撃退させたこと。ただ黙って、殺られる女じゃないわよ?」

報告では、誘拐されたシアよりも誘拐した者たちの惨状が
面白おかしく書かれていた。

「・・ああ。それはそれは悲惨な目にあったと、取り調べの際に聞いた。
シアの反撃を思い出す度に、身体が震え、恐怖で萎縮すると言っていたな。
・・・シアの行動は軽く、誘拐犯達に心的外傷を作ったようだったな。」

落ち着いた声で、私を一旦腕から離すと見つめ合った私達はお互いに目を合わせた。
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